第七話
衝撃が全身を貫いた。立っていられない。ロゼは両ひざをついて叫んだ。
「こんな事がッ!」
サクラとシェルはあまりの声の大きさに度肝を抜かれた。
サクラを見かけたのは偶然だ。偶然以外なにものでもない。それがこんな巡り合わせになるなど誰が思っただろうか。
少し冷静さを取り戻したロゼは立ち上がってもう一度自己紹介をする。
「私の名はロゼ。君の父であるリンドウとは士官学校の同期で友人だったんだ」
今度はサクラが驚く番だ。
「おとうさんの、お友達?」
「そうだ。今でもかけがえのない友人だよ」
あのときの記憶が鮮明に蘇ってくる。
何も出来なかったあの日。
人生で一番後悔しているあの日。
仲間をあの中心に置いてきてしまったあの日。
二度と戻れないあの日。
ロゼは深く眼を閉じて開ける。その瞳に映るのはあの日以来会っていない魔女の姿だ。
「君はあの時の出来事を両親から聞いているのか?」
「うん、聞いてるよ。だから止めるために旅をしているの」
「そうか」
それを聞いてしまったらロゼはこう言うしかないだろう。
「私も協力しよう。まだあそこに仲間が残っているんだ」
「えーっと、アルビノって人のこと?」
「そうだ。未だにあそこに取り残されている。もちろん母親もだ。出来るなら二人とも助け出してやりたい」
「うん、一緒にいこう!」
サクラは手を差し出す。仲間は多い方が心強い。それにロゼは当事者で魔女だ。きっと力になってくれる。
「お前らあの事件の関係者なのか」
黙って話を聞いていたシェルは驚きの声をあげた。あの事件はあまりにも有名だ。知らない方がおかしな世界だ。
「私は当事者だ。すべてを知っている」
「残念だけどわたしは当事者じゃないよ。わたしの両親が当事者だったの」
「詳しく話せ、魔女」
「なぜ私が君のような者に話す義理があるのだ。残念だが教会の人間は嫌いなんだ」
「俺もあの霧を止めるために各地を渡り歩いている。力づくでも聞き出すぞ」




