表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/18

18 ずっと親友であることに意味があった

今話で完結です。

 アイツと過ごした日々。忘れられない時間。忘れられないあの日。忘れちゃいけないあの時。忘れたくないアイツ。


 だけど時間ときの流れは残酷で、鮮明な出来事さえも朧気おぼろげになっていくのか。

 いや、違う。


 きっと育っていっているのだと思う。

 全て乗り越えて受け止める準備期間なのだろう。

 辛いことも楽しいこともその一瞬を過ぎれば、全て過去となる。


 『忘れないこと』


 でもそれはずっと考えているということではなく、自分たちの日々の生活を大切に過ごし、その中でたまに『想い出す』ということだ。


 それが残された者にできる全てだと思う。


 だから俺は今でもこうして深い空を見上げては、あの頃に想いを馳せる。



『私、ホントはね……』


 その後に続くはずだった言葉。

 今となってはもう聞くことができぬその願い。




 俺は今でも星を見上げる度、思い出す。そして聞いてみる。


 なあ。

 あの時お前はあの一番星に何を願った?


 俺?

 俺の願い事。


『ずっと彼女と一緒にいられますように』


 それだけ。

 たったそれだけの、ほんの小さな願いも叶うことなく。


 子供の頃からのありふれた日常は、大切な時間は、俺たちの意志に反して音もなく崩れ落ちていった。

 普通で、平凡でいることの難しさよ。


 今も世界は回っている。

 俺たちの心を置き去りにしたまま。



 俺はずっとお前を……。だけど。


 ずっと親友でいることに意味があった。


 俺は星を見上げる度、思い出す。今でもみんなを見守ってくれているか?



「そこに……いるのか?」


 深い空に聞いてみる。


「そこに……いるのか?」


 心に聞いてみる。


 屈託のない笑みで人の心を和ませる。

 そんな彼女の返事があった気がした。



 ずっと親友でいることに意味があった。


 ずっと親友であることに意味があった。





 完



『ずっと親友であることに意味があった』は今話で完結です。

ラストまでお付き合い下さいましてありがとうございました。


『親友でいることに』ではなく『親友であることに』意味があったのです。


ここまで読んで下さった方々は、何か感じて下さったでしょうか。



人はいつかはこの世を去らなくてはなりません。

本人の胸中は計り知れませんが、残された者の痛みは解るつもりです。

そして残された者が送り出した相手にできる最後のことは、『忘れないこと』だと思います。


親戚・友人・知人・恩師……。

身近な方、大切な方を見送られた方もいらっしゃるかと思います。

その時にできること。

たまにはその方を思い出して下さい。

その方がこの世に存在した証となることでしょう。


忘れないと言っても、四六時中考えているということではありません。

日々を大切に生き、『たまに思い出す』ということです。


そして、いつ壊れてしまうかもしれない『何気ない日々』を、『普通の日常』を大切に過ごして下さい。


そんな想いを込めて今作を認めました。


また次回作で皆さまにお目にかかれることを期待しつつ、あとがきとさせていただきます。


この度は拙作をお読み下さり、本当にありがとうございました!


藤乃 澄乃


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
18 ずっと親友であることに意味があった 読みました。 様々な出来事を経て、少しずつ日常へ戻っていく主人公。 それでもその胸には確かに消えないものはあり。 巡りあったすべてのものに意味はあったのだと…
[一言] たまに読み直しますが、やっぱりうるっと来る(笑) このお話、好きです。
[良い点] 少年と少女、主役の2人にスポットを絞ることで お互いの仄かな想いを最低限の字数で描写できるとともに、2人の視点で追憶することを可能にした。 そして、不治の病を語らずに終幕を迎えて、お互い…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ