18 ずっと親友であることに意味があった
今話で完結です。
アイツと過ごした日々。忘れられない時間。忘れられないあの日。忘れちゃいけないあの時。忘れたくないアイツ。
だけど時間の流れは残酷で、鮮明な出来事さえも朧気になっていくのか。
いや、違う。
きっと育っていっているのだと思う。
全て乗り越えて受け止める準備期間なのだろう。
辛いことも楽しいこともその一瞬を過ぎれば、全て過去となる。
『忘れないこと』
でもそれはずっと考えているということではなく、自分たちの日々の生活を大切に過ごし、その中でたまに『想い出す』ということだ。
それが残された者にできる全てだと思う。
だから俺は今でもこうして深い空を見上げては、あの頃に想いを馳せる。
『私、ホントはね……』
その後に続くはずだった言葉。
今となってはもう聞くことができぬその願い。
俺は今でも星を見上げる度、思い出す。そして聞いてみる。
なあ。
あの時お前はあの一番星に何を願った?
俺?
俺の願い事。
『ずっと彼女と一緒にいられますように』
それだけ。
たったそれだけの、ほんの小さな願いも叶うことなく。
子供の頃からのありふれた日常は、大切な時間は、俺たちの意志に反して音もなく崩れ落ちていった。
普通で、平凡でいることの難しさよ。
今も世界は回っている。
俺たちの心を置き去りにしたまま。
俺はずっとお前を……。だけど。
ずっと親友でいることに意味があった。
俺は星を見上げる度、思い出す。今でもみんなを見守ってくれているか?
「そこに……いるのか?」
深い空に聞いてみる。
「そこに……いるのか?」
心に聞いてみる。
屈託のない笑みで人の心を和ませる。
そんな彼女の返事があった気がした。
ずっと親友でいることに意味があった。
ずっと親友であることに意味があった。
完
『ずっと親友であることに意味があった』は今話で完結です。
ラストまでお付き合い下さいましてありがとうございました。
『親友でいることに』ではなく『親友であることに』意味があったのです。
ここまで読んで下さった方々は、何か感じて下さったでしょうか。
人はいつかはこの世を去らなくてはなりません。
本人の胸中は計り知れませんが、残された者の痛みは解るつもりです。
そして残された者が送り出した相手にできる最後のことは、『忘れないこと』だと思います。
親戚・友人・知人・恩師……。
身近な方、大切な方を見送られた方もいらっしゃるかと思います。
その時にできること。
たまにはその方を思い出して下さい。
その方がこの世に存在した証となることでしょう。
忘れないと言っても、四六時中考えているということではありません。
日々を大切に生き、『たまに思い出す』ということです。
そして、いつ壊れてしまうかもしれない『何気ない日々』を、『普通の日常』を大切に過ごして下さい。
そんな想いを込めて今作を認めました。
また次回作で皆さまにお目にかかれることを期待しつつ、あとがきとさせていただきます。
この度は拙作をお読み下さり、本当にありがとうございました!
藤乃 澄乃




