17 深い空
彼女が最後に言いかけた言葉。
『私、ホントはね……』
にっこり笑う顔が今でも脳裏に焼き付いている。
そこで彼女は眠りについたので、その後の言葉は結局聞けずじまいだった。
俺は静かに泣いた。息を殺すように。
だけどそんなのは長くは続かない。
目の前の状況を信じたくない。信じたくない。信じられない!
3ヶ月前から解っていたこととはいえ、どこか別の世界の出来事なんじゃないかと思うぐらいに、俺はそのことに向き合いたくなかった。
頭の中では充分に理解していたはずだけど、心ではずっと抵抗していた。
こんな日がくるなんて、考えたくなかった。
じわじわと押し寄せる現実に、気がつけば声を上げて泣いていた。
男は人前で泣くもんじゃないという父の教えで育ってきたが、そんなことはもうどうでもよかった。
何度も何度も名前を呼んだ。そう。声がかれるまで。
もしかしたら、いつものように「うるさいなぁ」って、目を覚ますかもしれないなんておかしな感情も湧いてきたりして。
『深空』
『深空』
しかしどれほど呼んでも彼女が目を覚ますことはなかった。
解りきっていたことだけど。どうしようもなく苦しかった。
俺は大人たちに促されて、ようやく部屋の外に出たが、それでも涙が涸れることはなかった。
泣き疲れたその日の夜、俺はふと空を見上げた。
なんだかそうしなくちゃいけない気がして。
深い空一杯に星が輝いて、『泣かないで』って彼女が、空の上から俺に話しかけているように感じた。
すると不思議と心が落ちついたんだ。
お読み下さりありがとうございました。
次話「18 ずっと親友であることに意味があった」で完結します。
本日更新します。
ラストまでよろしくお願いします!




