第76話 ラブラブな夜にならず
「ね、そろそろ、寝ない?」
「ごめんなさい。もうちょっといいですか」
最近、ミントがなんか忙しそうにしている。
ふたりの新居を作ったから、そこの家事もある。
だけど、家事だけなら、そんなに時間かからない。
今やっているのは、聖女さんと一緒にするバザーの準備みたい。
恵まれない子供達のためのバザー。
その看板づくりとかしている。
「そんなの土魔法でちょちょいと作ってあげようか」
「ううん。自分で作りたいの」
たしかに手作りっていいよね。
私が作るとついつい本格的な看板になっちゃう。
街で見る有名店のお金がかかった看板を参考にしちゃうから。
ミントが作ると、ドライフラワーを飾ったりしてかわいくなる。
だけど、ミントとのラブラブ時間がなくなっちゃう。
「ねぇねぇ。ちょっと休憩しない?」
すりすり、と頬を寄せていくけど、ミントの意識は作っている看板にいってる。
「いいかげんにしなさい。あなたには別のお勤めがあるでしょ」
なんて、命令できたらいいんだけど。
最初から、ミントには甘く接しちゃったからなぁ。
ミントにお願いされると、ついつい、いいよ、いいよ、って言っちゃうし。
その上、聖女さんまで加わってお願いダブル攻撃。
とても、優柔不断な私には太刀打ちできそうもない。
つまらないから、ミントの背中を指ですすーっとなぞってみる。
あ、くすぐったいのか、肩が揺れた。
面白い・・・じゃ、横腹はどうかな。すすすーーっと。
完全にくすぐったいらしいぞ。身体が横にねじれた。
「もうっ。集中できないじゃない」
「あ、怒った顔もかわいいよ」
「邪魔しないでね。これ、あげるから」
ミントお手製のお守り。
聖女さんが作っているのを見て、真似して作っていた。
もちろん、聖女さんと違ってお祈りでパワーを注入できないから、バザーで売ることはできない。
自分様にと作って首から下げていたもの。
「あ、ミントの匂いがする」
「やん」
ちょっと恥ずかしがっている。
ミントは何していてもかわいいな。
一緒にいるだけで、すごく幸せ。
だけど。
もっと、かまってほしいな。
もうちょっとでいいから。
ふたりきりの時間は、最近はこんな感じで過ぎていくのだった。




