第72話 新しい24街区の創設
「このほど、街議会で正式に24街区が作られました」
街の役人がうちを訪ねてきて、ちょっと大きな1枚のプレートを示した。
そこには、24区と書かれている。
「このプレートをここに貼っていただきたいんですが」
「いいですよ」
この街は街区に分かれていて街の中心から順番に番号が付けられている。
いままでは全部で23の街区があった。
スラムだったときは、どこの街区にも含まれていなかったが、再開発が終わった今は新しい街区が必要になったらしい。
新しくできた24街区がこの場所の住所になる。
「街区になると何かいいことありますか?」
「はい。街区長が住民たちで選べます」
街区の長は、中央から派遣されるのではなく、住民たちで選ぶのか。
民主的な部分もあるんだなぁ。
「誰が街区長になるんだろうか」
「あなた、ではないんですか?」
「えっ」
なんと。
既に他の住民、と言ってもまだ分譲が始まっていないから、区画整備したところに住民はいない。
今いるのは、私達と団地に住む元スラム住人だ。
「すでに他の人たちには聞いてみています。誰もが街区長はあなたがいいと言います」
「ええー」
なんか、面倒くさいことになってきた。
街区長なんてやりたくないぞ。
絶対面倒くさいことになるに決まっている。
「あの団地のやつら、品がなくて困るんですが」
「新しい奴らがうるさいことを言って困るんだが」
元スラム住人と新しく住み始めた上級市民たち。
その間で、いざこざが起きる。
それをまとめるのが街区長の役割。
やだやだ。
そんな面倒くさいこと、絶対やらないぞ。
「ごめんなさい。私はそんなことやりません」
「えっと、住民の意見は・・・」
「本人の意見も大切にしてくださいね」
どうも、私におしつけようとする意図がありありと見える役人さん。
たぶん役人としては私が一番都合いいのだろう。
「一度、街長に会って話をしてみませんか?」
「街長って、偉い人ですよね」
「はい。この街を含めた領地を治める公爵様の息子さんでご自身も子爵の位をお持ちです」
貴族きた。
これまた面倒くさいことになりそう。
だけど、今のうちに関わりを持って、ややこしいことになるのを防いでおかないと。
面倒なことを先延ばしにすると、もっと面倒になるってことはいやと言うほど経験済みだ。
街長に会うことを了承したら、嬉しそうに役人さんは帰っていった。




