第45話 不正の報告
「あの人を信じすぎては駄目ですよ」
いきなり、そんな話をしてきた女がいる。
歳の頃は20代半ば。
なかなかの美人だ。
「あなたは?」
「冒険者をしています。女剣士です」
「ほう。それで話というの?」
身体的には20歳なので年上だけど、精神的にはずっと下の女。
剣士をしているというのに、あまり筋肉質ではなく、すらっとして綺麗なスタイルだ。
女から声を掛けられたのは初めてだから、ついついお茶についていった。
おまけで狼娘もついてくる。
「我はジュースとケーキだ」
勝手に狼娘が店員さんにオーダーする。
「えっと、ミルクティーお願いします」
「私も同じで」
飲み物とケーキが来るまで、女性は口を開かない。
何を言いたいんだろう。
オーダーした物が届いて一口飲んでから話しはじめる。
「B級パーティのリーダーと仲良いんですよね」
「ええ。良くしてもらっています」
彼女はC級冒険者らしい。
B級になると、収入も名声も格段に上がる。
A級だと街にひとりいるかいないかレベルになる。
ただ、C級だと一人前ではあるが、いくらでもいるって感じ。
収入も装備を重視していると足りないくらいだ。
「あのリーダー、気をつけた方がいいですよ」
「それは、なぜ?」
「裏金をもらっています」
彼女が言うには、私が受けている家づくりの依頼。
金貨70枚だけではなく、紹介料として別にもらっていると言うのだ。
「そうなんですね。安心しました」
「えっ」
仕事を紹介するんだから、紹介料をもらうのは当たり前だろう。
営業活動するには、成果報酬でお金にならなきゃやっていられない。
「彼にまかせているから、いいですよ。約束のお金をもらえたら、あとは彼がきめればいい」
「そんなこと、まずいじゃないですか」
そうか、彼女はフリーランスなんだ。
条件を決めて依頼を受けたり、パーティに参加したり。
そうやって、お金を稼いで生きている。
それも、時には命を賭けることもある。
自分の正当な報酬をもらうのは、当然の権利だと思っている。
だから、単にお客を紹介するだけで大金を得ているリーダーが気に入らないのだ。
「それなら、私が紹介したら、私ももらえるんですか?」
「それは駄目だ。彼に一任しているから」
「ずるいじゃないですか」
うーん。どうも面倒くさい女に絡まれてしまったようだ。
どうしよう。
「お前、感じ悪いぞ」
「なによ、あんた。子供のくせに口ださないでよ」
「我は子供じゃないぞ。お前より強いし」
「ふざけないでよ。それとも勝負する気?」
あ、ドツボハマっちゃった。
知らないっと。
「気絶させるくらいにしておけよ」
「分かっておるって」
こそっと言ったけど、本当に分かっているのだろうか。
まぁ、自業自得だからしかたないか。
「こいつ、強いぞ。リーダーなら知っているから」
「なによ、リーダー、リーダーって。私だってこいつくらい負けないんだから」
まぁーいいか。
勝負の立ち合いくらいしてあげましょう。
ということで、広場で勝負を始めた。
彼女は剣を使って。
狼娘は素手で。
結果はあっさり、狼娘の勝ち。
のして背中に足をのせて、勝利の宣言をした。
これで狼娘が強いことが知られ渡ってしまったな。
まぁ、いいけどね。




