第35話 迷宮の王になる
「それではいくぞ」
4人が森に突入していく。
ただ、あまり深くは入らずにすぐに出れるあたりをうろうろする。
テリトリーを守っている見張りの魔狼を引き付ける作戦だ。
「がるるるっ」
「いたぞっ」
魔狼は一匹だけだから、当然ながらこっちの方が有利だ。
一匹の魔狼を4人でいたぶる。
「わおおおーん」
遠吠えをすると、森の奥から魔狼の声がしてくる。
群れてやってきた証拠だ。
「来るぞ、逃げろ」
いたぶっていた魔狼を置いて森の外に逃げてくる。
私は10mの高さの塔の上に作った見張り台にいる。
作戦を実行するタイミングを計るためだ。
4人が森を出てきた。
後ろから魔狼が10頭程度追いかけてくる。
4人がそれぞれ所定の位置に移動して、応戦している。
あ、さらに6頭出てきた。
そろそろ、いいだろう。
《迷宮創造》
いきなり、土が盛りあがり迷路が完成する。
魔狼が飛び越えられない高さになるまで迷路の壁が高くなる。
それまで、一対多の戦いを強いられていた4人は壁で狼が分断されたから、一対一の戦いに変わる。
これだと冒険者達の方が有利だ。
一頭、一頭と、魔狼を無力化していく。
最後に出てきた魔狼たちに向かって、4人が移動する。
移動方向は、塔の上でぞれぞれの色のついた旗でサインを送る。
ここで戦いを見ている私。
なんだか、迷宮の王になった気分。
実際、迷宮を創造するのも消滅されるのも、私が簡単に行える。
迷宮の王だね。
最後の魔狼が無力化されると、戦いは終わりだ。
そう思っていたら、間違いだった。
「ぎゃおーーーん」
ひときわ大きな吠え声が響き渡る。
森から巨大な狼が現る。
魔狼の体長の3倍。
5mはありそうな巨体。
それなのに重そうな感じは全くなく俊敏に動いて、迷宮の壁を簡単に乗り越えてくる。
「やばい。なんだあいつ。あんな奴がいるなんて聞いてないぞ」
どう見てもA級魔物だ。
B級冒険者では歯が立たない奴だろう。
「どうしたものか」
唯一対抗できるSSS級土魔法使いは考えを巡らしていた。
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