第290話 超特急も試してみた
「そうか。隣街までは10時間もあれば着くのか」
街に戻る日の朝。
僕はちょっと考えていた。
もしかしたら、もっと早く隣街まで来る方法があるんじゃないか、と。
馬車で引くから10時間もかかってしまうんだ。
動力があれば、当然もっと早くなる。
新幹線ほどのスピードは無理でも通勤快速くらいのスピードならなんとかなるんじゃないか。
もっとも、その条件は僕が土魔法で動かすこと。
セラミックで作られた車両なら土魔法で動かすことができる。
一度試してみようか。
この日は10時間かけて街に戻る予定だったけど、
それは他の人に任せて、僕は特別車両で帰ることにした。
「スピードを出すとなると空力抵抗も考えないとな」
頭の中で設計をする。
イメージは新幹線だ。
流線形にして、車輪はスカートで隠す。
あ、最初の新幹線の形でいいか。
もっとも、何人も乗る訳でもないので、全長は5メートルにしよう。
見た目は初代新幹線の縮小版だな。
ついでだから、青い石材を使ってしまおう。
見た目も初代新幹線だ。
転生した人じゃないと分からないけど。
朝、明るくなったら、すぐに作ってみた。
幅2m半、長さ5m。
小さいけど、新幹線だな。
他のメンバーに見せると乗りたがるから、内緒だ。
馬車客列車の運行は、馬車道商会に任せた。
来るときには問題がなかったから、帰りも大丈夫だろう。
馬車客列車をひとり見送っていると、後ろから声を掛けられた。
「なにをするのか?」
「あっ、白狼娘!」
バレていたらしい。
仕方がないから、白狼娘には作った新幹線を見せる。
「おおー、早そうだ。馬はいらないのか?」
「馬じゃ無理だ。僕の土魔法で動かすタイプなんだ」
白狼娘は、当然一緒に乗って帰ると言い出した。
もちろん、僕もそのつもりだ。
「それでは出発しよう」
馬車客列車より5時間も後に出発した。
だけど、途中で抜いてしまった。
だいたい平均90キロくらいのスピードが出ている。
時にはレールのあるところに人がいたりするから、その場合は上に車両を浮かせて対応している。
それならばずっと浮かせていればいいんじゃないかと思ったが、さすがに浮かせるには魔力の消費が激しい。
車両を動かす方が魔力的には楽にできる。
「これ、お主の専用車両になるぞ」
「そうですね。僕がいないと走りませんから」
弟子の土魔法使いもそのうち使えるようになるかもしれないが、まだまだ実力不足だ。
でも、いつかは土魔法使いが運転する新幹線も定期運航させたいな。
そんな夢を白狼娘と語りあっていたら、3時間をちょっと切る時間で隣街から僕らの街についてしまった。




