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第289話 レンガを大量に作ってみた

「いやぁ、土魔法使いさんか。レンガが作れると? それは助かるな」


翌朝、隣街のレンガ工房にお邪魔した。

魔物に襲われて窯が壊されていてレンガが作れない状態だ。


「いくつくらいレンガがあればいいんです?」

「今、20軒ほど待ってもらっているんや。できれば15万個くらい作ってくれると嬉しいが」

「いいですよ」

「いいですよって。いくら魔法だからといってそんなに簡単にできやしないだろう」

「できたら、どうします?」


こういうの、やっぱり楽しい。

できっこないって人を驚かすのってすごくいい。


材料は十分あるし、一気に作ってしまいましょう。



「できました」

「う、そうだろう。なんだ、それは」

「ただの土魔法ですよ」


レンガ工房では考えられないスピードだろう。


約2時間で15万個のレンガを完成した。

最近、土魔法のパワーまた、上がってきているかも。


「だけど、おかしいぞ。材料は12万個分しか使っていないじゃないか」

「実は、こっちのレンガは特別でして」


4万個のレンガは軽量レンガと超軽量レンガだ。


軽量レンガは大きさと強度はほぼ普通のレンガと一緒。

だけど重さは1/3で作ってある。


さらに超軽量レンガは大きさは一緒で強度はちょっと落ちる。

重さは1/6だ。


「2階以上の建物を作るときは、上の階を軽量レンガや超軽量レンガで作ると便利ですよ」

「どうなっているんだ、これ」

「半分に切ってもらえばわかりますが、中が軽石みたいになっています」

「それだと強度が落ちるだろう」

「その分、表面の硬度を上げていますから、大丈夫です」


できあがった1万個の普通レンガと6千個の軽量レンガ、そして4千個の超軽量レンガをもらっていくことに。


残ったレンガの代金をもらったら、金貨で200枚にもなった。

なかなか、いい仕事だな、レンガ作りも。


 ☆   ☆   ☆


「さぁて。材料が手に入りました」

「ええっ。どうやって?」


大量に積んであるレンガを見てバル姉さんびっくりしている。


「レンガ工房に材料はあったので、土魔法で作りました」

「そんなに一杯つくれるの?」

「いや、作ったのはこの7倍くらいです。残りはレンガ工房さんに売ってしまいました」


バル姉さん、驚くを通り越して、呆れている。


「それじゃ、いきましょう」

「いきましょう、って何?」

「お店の改修ですよ。ついでに2階建てを4階建てにしてみましょう」


まずはレンガに魔法をかけて積み上げていく。

もちろん、間にモルタルを入れて。


一番上の4階になる部分が超軽量レンガで出来上がった。

次は3階になる今の住居部分。基本は今の間取りどおりで、上に向かう階段だけ追加する。

さらにボロボロになってしまっているレンガを新しい軽量レンガで置き換えていく。


その後は2階の店舗部分を追加して、1階の店舗部分を改修する。


さすがに一瞬で完成するというほどのスピードにならなかった。

3時間ほどかけて複雑なレンガの動きで完成した。


「どうです? 新しいお店とおうちです」

「どうって。ありえないわ」

「気に入ってもらえないですか?」

「そりゃ、もうすごーく気に入っているわ。私達にはもったいないくらい」

「それはよかったです」


お金は改修費くらいしかないというので、それだけもらって、後はある時払いでいいと安心させておいた。

店が繁盛してお金が溜まったら、隣街にいる土魔法使いに送ってもらうことに。


「もしかして、あなた。噂になっているS級土魔法使いさんなの?」

「あー、そうかもしれません」


本当はS級ではなくて、SSS級なんだけどと思うけどね。


「また、こっちの街に来たりするの? こっちの街でも家を作ったりしてくれるの?」

「まだ未定です」

「そうなんだ。ぜひ、こっちの街にも、時々は来て欲しいかなと」

「あー。未定だけど、できたらってことで」

「それでもいいわ。次に来るときのために、家を改修とかしたがっている人、探しておくわね」

「それもいいかもしれませんね」


正式な契約じゃないけど、またこの街に来た日は土魔法建築するのもいいかもね。


ひさしぶりのレンガでした。

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