第239話 隠れ里の神秘的な祭り
僕は役人さんとふたりで山の中にある村に向かっている。
「ここから先は険しい道が続きます。大丈夫ですか?」
確かに岩がごろごろして、その岩の間を山道が通っている。
「大丈夫ですよ。こう見えてもスタミナあるんです」
そんなにヤワに見えるのかな。あ、見た目だけだとそうか。
実際には、土魔素の身体強化が行われるから、身体に負担がかかると自動的に土魔法の身体強化がかかる。普通の人の5倍くらい速く山道を走ることができるんだ。
「もう少しで、目的の村です」
「どんな村なんですか?」
「山里ですね。高山性の作物を作っています」
「高山性の作物ってどんなのが多いんですか?」
「今の季節だと高山レタスが収穫期でしょう」
レタスか。確かに他の農村ではあまり作られていない野菜だな。
気温が低い方が育つ作物だ。
「でも、気をつけてくださいね。閉鎖的な村ですから」
私の農村支援も、たいていのところはまわってしまった。
まだ一度も行っていないとこは、数えるくらいしかない。
今、向かっているのは山の上の方にある村。
人はそれほど多くないけど、特徴的な作物を作る村。
ここも初めて行くところだ。
しばらく歩いていると、急に視界が開ける。
少し下がったところにある広い場所に点々と草で葺いた小屋がある集落が見えてくる。
「ほら、あそこです。あれ?何かやっているみたいですね」
人が全部300人くらい集まって、大きな輪を作って、その中心に木が積み上げられていて大きな火が燃えている。
「なにをしているんでしょう」
「さぁ、何かのお祭りかなんかでしょうか」
邪魔しないように静かに近づいていく。
見張りをしている男がいるので、その男に役人が挨拶をする。
「こんにちは」
「こんにちは。あれ?お役人さん。まだ、納税の時期じゃないですよ」
「あ、今日は納税の話で来たんじゃないんです」
「それじゃ、なにか?」
「有名な土魔法の先生をお連れしました。土魔法農法を教えてくれるんです」
「あー。今日はちょっと無理ですね。大蛇神祭りの日ですから」
あ、やっぱりお祭りなんだ。
大きな焚火の近くで、なにやらシャーマンぽい人が踊って神様と交信しているらしい。
「3年に一度の大祭ですので、お祭りが終わるまでお待ちください」
どうも今日はお祭りの2日目で、明日が3日目で最終日らしい。
「じゃあ、僕らもお祭りに参加していいですか」
「ええ。邪魔しなければいいですよ」
ここんとこ、ショッピングモールのことで人と折衝することがおおくてちょっと疲れていたんだ。
そういう素朴な村で数日過ごすのもいいかな。
僕らも人々の話の中に入ってみた。
皆、座って、隣の人と手をつないでいる。
僕らもその間に入れてもらって座って手を握った。
「!」
なんか、すごいエネルギーが流れてきたぞ。
なんだ、このエネルギーは。
土魔素が身体を駆け巡っている時と似た感じがする。
だけど、もっとしなやかな感じがするエネルギー。
「これ、なんか、すごそうですね」
「本当に。感じますよね」
あ、お役人さんも感じるんだ。
本当にエネルギーを感じるお祭り。
なんか、すごいとこに来てしまった気がするぞ。
不思議な村にやってきたよ。




