第133話 レンガ積み再び
「明日から、壁づくり再開してほしいんですが」
「えっ、もうですか?」
街長が家に来るなり、そんなことを言う。
穀物の値段が上昇して中断していた工事だ。
「それが穀物の値段が一気に普通に戻ったんですよ」
「でも、3つの村の畑増産の手伝いはしたけど、まだ収穫なんてできていないですよね」
「そうなんですよ。だけど、街では土魔法導師が畑を改良しているという噂がながれていて『秋の収穫は今までない豊作だろう』と言われてます」
「そうか。穀物の値段が上がったのも街の人口が増えるらしいの噂だから、下がるのも噂か」
「はい。だから、今度は壁作っても穀物の値段は上がらないはずなんです」
穀物は保存がきく食物だから、人々の思惑で値段が上下するものなんだ。
実際に物事が起きるより先に値段。
面白いものだなぁ。
「だから、すいません。村の畑のことと一緒に壁もお願いします」
「えーー。両方なんですか」
「両方って訳にはいきませんか?」
「半分半分ですね」
「そうなりますね」
がっかりした様子の街長。
あわよくば両方を平行で進めてもらえるんじゃないか。
そんな甘いことを考えていたんだろう。
「村での活動があるから、壁は10日に一回ですね」
「しかたないですね」
仕方がないって感じで了承してもらった。
その後、現場に戻って作業を始めた。
ところが驚いたことがある。
「あれ?」
やっている作業は同じなんだけど、土魔法をかけるときの負担がなんか少ない。
もしかして、覚醒したから普通の土魔法もパワーが上がってしまったのか?。
一気に前回の2倍のレンガを作ってみる。
余裕で、できてしまう。
それならばと、4倍のレンガを作ってみる。
余裕があるというほどではないけど、無理なくできてしまう。
「街長、ちょっと困ったことがあるんですけど」
「えっ、なんですか?」
まさか、急にできないとか言い出したりしないだろうか、と、びくびくしている。
「このレンガの山みて、どう思います?」
「相変わらず、素晴らしい魔法です」
「いやいや、相変わらずではないんです」
「というと?」
「一度に4倍作れてしまったんですが・・・どうしましょう」
街長さん、すっごくびっくりして、そして、すっごくうれしそうな顔をする。
「すると、1日にできる壁の長さも4倍になるとか?」
「そうなりますね。きっと」
「すると、完成予定が・・・あと2か月!」
その通り。
5日に一度を10日に一度に変えても、工期が半分になる。
あと4か月くらいの予定だったから、2カ月で完成することになる。
「やった!それでお願いします」
「早すぎませんか?」
「そんなことはありません。ちょうどいいです」
壁つくりと止めていたのがずっと気になっていた様な街長さん。
すっきりした顔になる。
「でも、早くできてしまうとなると、あちこち、問題起きたりしません?」
「問題なんて全然ありません。あったとしても、私がなんとかします」
街を広げるのは、この街長さんのずっと持っていた夢らしい。
街長になったなら、少しでも大きな街にする、というの使命なんだろう。
そして10年も街長をしている彼からしたら、特に強い使命だろう。
「でも、値引きはしませんよ」
「わかっていますって」
街長さんとの連携が確認できたから、この日は壁づくりに専念した。
レンガを積んでいます。ただ、レンガを積んでいます。
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