第121話 実験畑の結果が出た
「これを見てくだされ」
村に着くやいなや、すぐに農業爺さんに連れられて実験畑に来た。
この畑は村での最後の仕事をした所。
他の畑と違ってひとつだけ作業をプラスした。
農業爺さんの手には、小ぶりの蕪が3個ほどある。
「えっと。小さめなカブですよね」
「そうじゃないだろ。これは大きい日曜カブだぞ」
日曜カブと言うのは、月曜日に種を撒くと次の日曜日には収穫できるという成長の早いカブ。
その分、大きさは小さいらしい。
「この日曜蕪は普通の3倍の重さじゃ」
「でも、時間かけたらそのくらいになるんじゃないですか?」
「それがの、これは月曜に撒いて土曜日に収穫できたんじゃ。わしも長年、農業をしているが、こんなことは初めてじゃ」
「あれ?普通より早く収穫できたと?」
5日より1日早い4日間で3倍の大きさのカブ。
それは、思ったより収穫が多いぞ。
「実験畑のここは、他と何が違うのじゃ?」
村での最後の作業の話を説明した。
この畑は、土の魔素の濃度が違う。
土魔法を使って、少し下の土魔法を耕した土のところに集めてみた。
他の畑の5倍くらい土魔素が濃くなっている。
そんなことをしてみたのは、収穫がいい畑と悪い畑を比べてみると、水はけが違うみたいな良く分かる違いがない所がある。
ほとんど同じような畑なのに、収穫が違う。
それを比べてみて感じたのは、微妙に土魔素の濃度が違う。
もしかして、土魔法の濃度を上げると、収穫があがるんじゃないか。
そんなことを試してみたのが実験畑なのだ。
「なるほどじゃな。土の魔素か。それはわしじゃわからないはずだ」
魔法使いじゃなければ、魔素の濃度を感じることはできない。
だから、土の感じの違い等で土魔素をなんとなく感じていたにすぎない。
「では、土魔素を上げると収穫はよくなるんじゃないですか」
「それなんじゃ。ほかの畑も同じようにできないかの」
「簡単ですよ」
ただ、あまり全部、土の濃度を上げてしまうと失敗すると作物が全滅になりかねない。
だから、村長とも相談した。
「それでは、今、作物を作っていない畑を魔素濃度あげてもらうのはどうかな」
村長がいう。
「うちの畑をして欲しいな」
ちゃっかりと村長と一緒に来た村娘が言う。
一夜限りの関係を結んだこともあって、お願いされると弱い。
「彼女のとこでも、いいですか?」
「どこでもいいから、彼女のところで」
「やった」
彼女の手入れしている畑は、まだ作物が育っていない畑だけではなく、作物が育っているところも濃度を上げてみた。
もし、失敗したら村長がなんとかしてくれるという保険付き。
それ以外の畑は2割だけ高濃度にしてみた。
それも、濃度をそれぞれ変えてみて、最適な濃度を探ってみることに。
土魔素のコントロールは土魔法の基礎の基礎。
だから、全畑の2割りくらいなら20分もあれば終わってしまう。
「できました」
「あいかわらず、仕事が早いな」
「濃度を上げたところは、預かった札を立ててあります」
「ありがとう。これで村の収穫アップは確実だ」
村長が喜んでくれた。
「ありがとう」
村娘も喜んでくれた。
ほっぺにキスしてくれる。
村長によると、今度は、日曜カブだけではなく、いろんな作物を試してみるらしい。
どんな作物がどんな効果が現われるか。
これも楽しみなことだ。
土魔法の農業利用ができるかな。
楽しく書いて、楽しく読んでもらえたらうれしいです。
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