白い悪魔の憂鬱 ⑦
このシリーズ、ルー編もようやく是れで終わりです。
長かった~。
イラスト投稿しました。
アニ http://6591.mitemin.net/i55730/
ナミ http://6591.mitemin.net/i55732/
マリアhttp://6591.mitemin.net/i55738/
ルーside
再三に渡る挑発やからかいに真祖もとうとうアキラ一人に狙いを絞ったのだろう。
彼女の目にはもうアキラしか写っていない。
「こ ここまで私を怒らせたのは貴方が初めてです。 覚悟しなさい、私が伴侶になった暁には、二度と生意気な口が聞けないよう、ど、奴隷の様に、い、いやいいい犬の様に調教し、してあげます。」
「あ これサシでやり合う流れ? う~んじゃあ戦う前に自己紹介でもしようか? オッス俺、アキラ!アキラ・渡辺 君の素敵な名前を聞かせてくれるかな?」
だから何故口説く!
いや、そういえばまだ名前を知らなかったな。
「・・・・・・テレサ・シンクレア、貴方を屈服させ、主人となる者の名前です。」
「ああ 語尾にそういうセリフ付けるのアリなんだ。 俺も【お前を倒すものの名だ!】って・・・まぁ無理だ中二病が再発しそうになるな。」
アキラは口調は今はおちゃらけているが、目は少し真剣になっている。
アキラは七英雄や魔物が相手なら女子供も容赦しない。
だが、相手は臨界者や大精霊より格が違うどころか、次元が違う怪物。
真祖に許された力を完全に超えた化物だ。
対してアキラはナミの加護を受けているとはいえ、臨界者になった期間も短く、そう高くないセンス、身体能力を奇策、戦術でカバーして戦うスタイル。
単独で戦うなら狙撃、暗殺など奇襲か「概念崩壊の法則」(長いなこの名称、他の名称を探せばいいのに)を用いたトリックやハッタリで戦うのだ。
魔術師や弓兵が白兵戦に挑むようなものだが・・・・・・
「大丈夫ですよ義姉さん。 ああなったアキラは無敵です。」
すると、ナミが不安になっている私に安心するよう声をかける。
彼女の顔に不安の色は見えない。
アキラを信頼しきっているからだろうか?
・・・・・・羨ましいな。
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戦いは合図もなく唐突に始まった。
テレサはアキラに目にも止まらぬどころか映らない速度で両手でアキラを捕まえようとラッシュをかけるが、アキラは尽く、其れを躱し、反撃に光属性、火属性の黒魔法を拳に纏わせてカウンターを放つ
【名古屋撃ち】で迎撃する。
そして攻撃は心臓、肺を的確に打ち抜き、呼吸が止まり、怯んだ隙に拳闘術の【ラッシュ】で顎、心臓、肺を穿ち、脳を揺らし、血液を止め、呼吸器官を止める。
接近戦に置いて、アキラと戦うにはノエルやカグヤが行ったように面による攻撃でなければ通用しない。
其れを理解し、たまらず距離を取ろうとした瞬間、アキラがテレサの制服の襟を掴み、【投擲】で投げ飛ばし、地面に叩きつけられる。
・・・・・・即死級のダメージは与えて居らず、与えたダメージは直ぐに再生されていく。
「な・・・なんで?私が人間にここまでいいようにされるなんて・・・・・・私!真祖なんですよ!それも限界を超えて鍛え上げた!大精霊すら凌駕しているのに、どうなってるんですか!? アキラァァァ!」
勢いよく手刀を突き出したが、かわされ逆に膝蹴りを鳩尾に入れられる。
「ふぐ・・・・・・ふぅううん・・・きゅう・・・」
息が出来ず、声にならない声を出しながら崩れ落ち、腹を抑えて蹲るテレサ・・・
其れを見下ろすアキラ・・・
なんかアキラがものすごい極悪人に見えるから不思議だ。
「概念崩壊の法則・・・・・・長いなこれ、吸血鬼の弱点を突き、優位性を封じるから【銀の弾丸】とでも改名するか・・・・・・このスタイル【銀の弾丸】は相手の短所を突き、相手の長所を封じるのを要とする。俺を捕獲したい君は素手での戦闘か、捕縛系のスキルを使うと予想がついたし、接近戦なら君は自身の圧倒できる身体能力にものを言わして捕まえに来るように思考を誘導した。 【挑発】で怒り心頭の君の動きを読むのはこの魔改造された【眼力】をもってすれば容易だし、君の速度と力をそのまま利用してカウンターを叩き込めば・・・こうなる。」
つまり、アキラは自分を餌にして、テレサに捕獲という選択肢を選ばせ、武器を装備しないことで接近戦に持ち込ませ、戦術の幅を限定させたのか。
更に、拳闘術は格闘系スキルの中でも手数の多さ、攻撃速度の早さが上だ。
動きが限定されればカウンターを入れるのは造作もないということか!
コレがテレサが武器を持ち、冷静にスキルや魔法を使っていればこうはならなかっただろう。
「さて、このまま転移魔法で君を火山の中に放り込むこともできるし、封じ込めて窒息させる事も、海に沈める事も出来るが・・・・・・どうするね?」
「う ああ・・・・・・」
「ん? なんだって?」
蹲って声が出せないテレサにアキラがかがみこんで耳を傾けた瞬間、急にテレサが起き上がり、アキラに噛み付いた!
しまった!アキラの18番の死んだふりか!
「アキラ!!」
視界にはアキラの首筋から血を恍惚な表情で吸い取るテレサ、力尽き、両手を下に垂らしたアキラの後ろ姿が映る。
アキラに抱きついたまま全身に駆け巡る快感に身を震わせるテレサ。
「ああ なんて芳醇な魔力、なんて美味しい血液なの コレが臨界者の男の血。最高です。こんな味を覚えてしまっては他の血なんて口に出来ません。 私の伴侶に相応しい魔力です。さあ、愛しい人。残りの彼女達を貴方の下僕に仕立ててあげなさい。」
そう言ってアキラに命令するテレサ・・・
リンと私は絶望に打ち震えるがナミにいったては俯いて震えている。
最悪な展開だ・・・
「アキラ? 主人の命令です。 早く彼女達を!」
「背中が痒いから嫌でーす。」
「「「な!?」」」
「フン!」
そう言って吸血鬼化した?アキラが抱きしめられた状態でテレサを抱きつき返し動きを封じる。
「捕まえた・・・と。さあどうしてくれようか?」
「な! なんで血の誓約が・・・主人の命令に逆らえるんですか!? おかしいですよ!」
「俺の固有スキル【魔改造】はスキルや武器だけでなく、人体をも改造することも出来る。魔力抵抗を極限以上にあげたり、吸血鬼化の抗体を瞬時に作り上げたりすることも出来るし、吸血鬼化を防ぐスキルを作り出すことも出来る。」
そう言って完全に動きを封じるアキラ。
哀れテレサは自分の理解の範疇を超えたアキラに恐怖し、涙を流して震えだす。
「それに君もいっただろう?格上に位置すればレジストを無視出来るって。
俺は一時的にだが君を上回る戦闘力を発揮することが出来る。
【隠行】【源呼吸】【精霊化】の合わせ技でな。精霊化状態で源呼吸を行い、性別をそのままに、普段以上の魔力を体の内と外を循環させ、隠行でその魔力を隠して油断を誘うんだ。」
今度こそ絶望に沈むテレサ・・・・・・
力なく崩れ落ち、アキラも彼女を開放する。
抵抗の意思が完全に砕けたのだろう。
コレがカグヤを押さえ込んだ圧倒的な魔力か・・・・・・精霊化した状態で更にブースト、強化をかけた状態か・・・個人の魔力と周囲の魔力を吸い取り循環する源呼吸を精霊化状態で行うため、その規模は大きく、魔改造によって身体的能力も強化するとなれば、その力の大きさも頷ける。
「ま 参りました。 ど どうか命だけは・・・」
両手を上げ、涙を流しながら降伏するテレサ。
確かに彼女の言を信じれば、格上の攻撃には真祖の再生能力も通じないだろうし、先程のアキラがいった方法を取られれば真祖もひとたまりもないだろうが。
・・・・・・今更それが通用するとでも?
「じゃあ、一時的に死都から引き上げてもらうよ。 後、もう血を吸わないように! 真祖は繁殖意外に血を吸わないんだろ? どうしても飲みたくなったら我慢できなくなる前に言うこと!分かった?」
「って降参を受け入れるのか!? さっきの不意打ちを忘れたのか! コイツは何時でもアキラの寝首を掻きに来るぞ!」
「え~?でも、彼女は静かに暮らしてたのを俺たちが脅かしちゃった訳だし、あまり遺恨を残すわけにも行かないじゃん。」
コイツが分からなくなってきた。
「う ひっく、ひっく うわあああああん」
テレサが臆面もなく泣き出す。
死の恐怖から開放され、安堵感から泣き出したのだ。ソコに真祖の威厳は無く、只の少女にしか見えなかった。
「あ~あ ルーが泣かした。 流石白い悪魔! 子供泣かすなんてマジ、パないっす!」
「まて!? コレは違うだろう!」
ガコライの苦労がわかった気がする。
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其の後の事を少し語ろう。
あの後、死都は主を失ったことで、弱体化し、訓練兵団、駐屯兵団達により、死都は完全に開放された事で今はお祭り騒ぎだ。
復興作業に追われる毎日でギルドからも雑務クエストで応援を募るほどだ。
そしてあの真祖・・・・・・テレサなのだが・・・・・・
「アキラ様~♡」
「あの、テレサちゃん?今、お話中だから少し離れてくれるか?」
「うう 離れたくありません♡」
「ア~キ~ラ~(怒)」
最早アキラとの逢瀬の間と化してきた生徒指導室でアキラを呼びつけたのだが、アキラの腕に学園の制服を身にまとったテレサが抱きついてきた。
恐怖から開放されたからか、あの血の味を忘れられないからかテレサがアキラに懐いてしまい、ベッタベタに甘えだしたのだ。
彼女の自宅は死都の教会だが、現在、復興作業中の為、アキラ位しか彼女を保護観察できる人員がいないのでリンが血の涙を流しながら、断腸の思いでアキラに保護観察を命じ、アキラの自宅に居候として住み着いたのだ。
あと人形師は「もげろ!爆発しろ!」と魂の叫びを上げていた。
ナミは二人きりの愛の巣を邪魔され、私もオフィスラブを邪魔され正直立腹だ。
「あ、ちょっと手洗いに行くから外すわ。おとなしくしてるんだぞ テレサ?」
「はい♡行ってらっしゃいませ。アキラ様♡」
アキラが席を外し、私とテレサが二人きりになる。
アキラの気配が消えるとデレ顔が一点、無表情に戻り、私を見据える。
「フン、アキラ様を狙う女狐め・・・妾が目を光らせている限り思い通りには行かんぞ。」
コレである。アキラの前では乙女モード?で話すのだが、それ以外だと真祖モード?になるのだ。
「・・・・・・ハァ」
もう突っ込む気力もない・・・
こういうのはガコライの役目だと思う。
でもそのあり方を羨ましくも思う。
私もナミやこの娘の様に好意を表に出せればいいのだけど・・・・・・
はぁ 憂鬱だ・・・・・・
「只今~。」
「おかえりなさいアキラ様♡」
「早かったな?」
「あ、そうだルー? 来週から夏休みで寮の皆も帰省するだろ?休暇に海に行こうと思うんだけど予定空いてるか?」
!?
「わ 私か!?そうだな!空いているゾ!」
「じゃあ決まりだな。山もいいけど、海でエンジョイしないとな去年は満喫する前に冬になったし。楽しみだな~。」
「アキラ様! 私も行きます!」
「え? 真祖でしょ? 泳げるの?」
「泳げません! だから泳ぎ方を手とり足取り教えてください♡」
て 手とり足取り~
「わ 私も泳ぐのは久しぶりだ! もしかしたら泳げなくなってるかも知れん! だから私も頼む!」
気づいたら顔を真っ赤に染めて叫んでいた。
アキラとテレサは私の叫びに面食らっている。
本当は私は泳げる。
だけど! だけど!
「いいよ。一緒に泳げるように頑張ろう。」
この日から、私は少しだけ、アキラに対して素直になれた。
アキラと海で泳ぐ日を楽しみにしながら過ごす日々は憂鬱とは無縁の日々になりそうだ。
夏休みが待ち遠しい♪
ルーside end
つ 疲れた・・・・・・
次回、とうとう夏休み編! 海だ!山だ!青春だ!
次は誰が来るかな?




