白い悪魔の憂鬱 ⑤
昨日は旅行帰りで更新遅れました。
長いので分けます。
ルーside
真祖 最初に血を啜った吸血鬼の大元、人間が魔術により後天的に変化したものを指す。
最強の魔物、不死身の怪物の代名詞だが人間以上に知恵の回る真祖が臨界者が死都にいるというのは少しおかしくないか? そんな噂が流れていたらとっくの昔に討伐隊が編成されて・・・・・・ってそういえばずっと放置されていた廃都だったなここは。
「このまま放置していても例のあの娘がいるから生徒に被害は出ないが後で厄介なことになりかねん。この場で討伐・・・・・・可能なら話し合いを臨もうと思う・・・・・・。」
あの娘が悪魔使いというのは言うまでもない。
真祖を仲間に引き入れられると確かに戦力差が覆りかねない。
最強の魔物の一角を誇る真祖が更に手の付けられない存在へと昇華してしまう。
「討伐を断念して放置するのは危険では?」
「死を覚悟して死都の攻略に挑んだ冒険者、ハンターを使い魔であるゾンビ、屍喰いを使って間接的に血を啜っていただけだろうし、一般人の被害を出していないことから、無用な争いを起こさないタイプだろう。 考えなしの吸血鬼なら快楽のまま、欲望の限り吸血行為に走るが死都の真祖にはそれが無い・・・話を聞くぐらいの分別はあるだろう。」
「なべヤン?美女を紹介してくれるって呼び出し受けてんけど話が違うで?」
「吸血鬼の真祖が絶世の美女かもしれんだろ?」
「そんなんショタかもしれんし、ロリかもしれんやろ! 男や子供は論外や!確率4分の1ヤン!美形でない確率も入れたら八分の一以下に下がるねんけど!?」
「吸血鬼化の感染に抗体が有るのは精霊化の出来る俺、ナミと少なからず精霊因子を身体に持っているリン、人形を操るヨッシー、あとルーもだな。」
「・・・・・・クラリス王女、アリシア、エレイシアでは真祖相手に経験不足、マグドレア神父も対魔術師、対不死の魔物戦に優れるも、引退した身では心伴い・・・・・・白羽の矢が、たったのが私ということですか。」
馬鹿を無視して、リンとアキラが人選の確認を取る。
確かに大精霊の加護を受けた者に魔物化や呪いの類は効かない。
吸血鬼化、魅了の魔眼に耐性があるもので、戦闘能力を問われる人選か・・・
リンも臨界者では無いが実力はAランクの戦闘能力を誇り、駐屯兵団の総司令官に相応しい実力を誇っている。
問題無い人選だがカグヤや黄泉の入口の時の様にアキラが単独で挑まない理由は何だ?
「・・・自制や自重が効かなくなるかも知れんからな。・・・・・・性的に」
!? 今、小声で聞き捨てならんセリフが!
「まぁ大勢で行くのもアレだし・・・・・・魔の森みたいに荒野に帰る訳にもいかんしな・・・?」
くぅ 詳しく知りたいが今は目の前の案件を片付けなけれな・・・・・・
しかし、態々真祖が力を発揮する夜中に訪問とは危険すぎないか?
「ま 女神様達の加護もあるし大丈夫だろ?」
と私、ナミ、リンを見回すアキラ。
よろしい、今日はアキラの為ならいくらでも加護を振りまいてやる。
「フン 女の敵になりつつある貴様に加護などあるものか。」
何を言ってるんだ私はぁぁぁぁぁ!
「私はアキラにいつも全力で加護を与えています!」
対してナミはシュタッと挙手して名乗り上げる。
「ううッ ナミは優しいね~」
そう言って、アキラは涙目にナミの頭を撫で回し、ナミは嬉しそうに目を細める。
うう、私も撫でて欲しい。
「ルーちゃん? どうかしたん?」
「やかましい! 私に寄るな!!」
「アダ!?」
そしてその様子を見てニヤつくリン。
ぐぅ! 腹立たしい!
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第3層にもなると強力な眷属、吸血鬼や首無し騎士のレベルも高くなったが、私たちの前には雑魚でしかない。
アキラは概念崩壊の法則で・・・
リンもアキラに教わった聖水、治療薬を塗った剣で戦い・・・
人形師は斬鋼線で細切れにするか、自由を奪って、人形のギミックで仕留めていく。
おかげ私とナミは出番なしである。
そして・・・・・・とうとうアキラが当たりをつけた真祖の根城にたどり着く。
真祖が根城にしていたのはこの街の教会・・・それも私を祀っている教会を根城にしていた。
ナミでは無く、私を祀る教会を根城にするとは・・・・・・感心な者と言うべきか、私を軽く見ているのか判断に困るな・・・
「し~んそちゃん! あ~そ~ぼ~♪」
「何だか覚えのある光景だな。」
初めて私の所に訪問した時のアキラを思い出すな。
「ちゃん!? なんや! なべヤン 真祖って女か!?」
ちゃん付に異様な反応を見せる馬鹿。
「【千里眼・改】と【透視眼・改】で見た限り、絶世の・・・」
「待っててくださいお姉様~!!!!」
突入する馬鹿、あっけに取られた後、数秒して馬鹿の雄叫びが鳴り響く。
「オッシャアアアアアアアアアアアアア!!! ストライィィィィィィィィク!!!!」
続いて突入すると、黒の学生服にネクタイ、チェックのミニスカート・・・つまりウチの学校の制服に身を包んだ金髪セミロングの美少女が教会の台座に腰掛けて私たちを待ち構えていた。
「来てよかった!ガリアに来てよかったァァァ!!!」
人形が涙をながしている・・・はっきり言って気味が悪いがその気持ちも分かる。
「俺は掛けに勝った! 長く苦しい戦いに勝ったんやぁぁぁぁ!!!」
美少女だ・・・それもとんでもないレベルの美少女だ・・・・・・だが何故ウチの制服?
「オーソドックス!だがしかし、古き良き時代に不変の美しさが今ここに!到来やぁぁぁ!」
「な何ですか貴方は!?」
流石の真祖の彼女も突然の来訪者の狂態に困惑している。
「OH! まさかの敬語! しかも清純系!? 俺の時代が来た! 是れで勝つる! がぁ!?」
ピンポンパンポン♪
只今、バカが粛清されおります。
描写、筆舌に尽くしがたい残虐な光景が繰り広げられている為、少々お待ちください。
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お待たせしました。其れではどうぞ
ピンポンパンポン♪
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「・・・というわけでしてね?いつ戦場になるか分からないので誠に申し訳ないんですがこの街を引き払ってほしんですよ・・・それに明後日以降にこの地に臨界者の魔物使いが来ましてね?貴方の悠々自適な隠居生活を脅かしかねないんですよ?だから死都を引き払い、人間を襲わないという誓うのなら、こちらでも何とか衣食住は保証しますので・・・」
訛りが消え、土下座で事情を説明する人形。
少々、面食らう真祖。
後ろで馬鹿に睨みを聴かせる私たち。
「なんじゃ、妾を当滅しに来たのかと思うたのじゃが?」
尊大な言い回しをして取り繕ってはいるが、先程の馬鹿の奇抜な行動で地を出したので少々手遅れはあったがアキラ直伝【空気読み】と【受け流し】で何も無かったように私たちも対応する。
いちいち突っ込んでいては話も進めない。
示談で済むのなら問題は無いだろう。
彼女は積極的に人間を狩っていたわけでは無い、死都に侵入した冒険者のみ配下の魔物、ゾンビが手を下し、自分は手を出していない。
ダンジョン・コアがあるのなら生きるための吸血行為を必要としない筈だ。
考えなしの吸血鬼とは違うのだろう。
「戦争ってのは外交上、最悪の手だ。話し合う余地があるのなら話し合いで解決しようと思ってな。」
アキラが空気を読みつつ、ツッコミを耐えながら話を進める。
頑張れアキラ!
「ひとつ聞くが、その悪魔使いは男かの?」
「・・・・・・何故?」
「人の臨界者が多数現れるのは千年ぶりじゃ・・・・・・そして勇者の様な人類の守護者ではなく、悪魔使い、死神、闇の勇者のような人類の敵対者になりうる臨界者は稀での? 妾に見合う男の臨界者は少なくての? それで悪魔使いは男かの?」
「残念、女性だよ。」
「何じゃつまらん・・・・・・じゃがソナタらはここまでたどり着いた強者・・・・・・半数が女性や精霊なのは気落ちしたが、人間の男の臨界者じゃ・・・・・・一人は人形じゃがもう一人は隠しておるが強力なスキル、実力を有しておる・・・・・・下僕ではなく我が伴侶に、相応しい個体じゃ強い雄に惹かれるは雌の本能じゃ・・・・・・是れを逃す手はあるまい?」
な!あ アキラは渡s・・・
「しまったぁぁぁぁ!本体で来るべきやった! ワイのアホォォォォ!!」
両手で地面を叩き、本気で悔しがるもう一人の男の臨界者、血の涙まで流すとは本当に芸が細かい人形だ。
「ちょっと待ってくれへん!? 今ガスマスク付けてガリアへ出発するから!」
「五月蝿い男は嫌じゃ!」
「ノ~~~~~~~!!」
そんなに悔しいのか転げまわる人形。
なんでコイツ連れてきたんだろ?
「あらあらアキラさん。またですか(怒)」
「アキラ・・・・・・?」
「・・・・・・・・・またか!またなのか!」
リン、ナミ、私の怒気を浴びて震えるアキラ。
「あ~好意は、ありがたく受けとるが、人間は辞めたくないのでお断りします。」
「よし!流石アキラ!よく断った!」
嬉しさのあまり声に出たのは致し方ない。
「私たちが其れをさせるとお思いですか?」
リンがクルトの魔剣のレプリカを抜き放つ。
「ただでさえ競争率が激しんだ。全力で阻止させてもらおうか」
私も虎の子の短剣に手をかけ、戦闘態勢を取る。
「くくく!させん!させんで~真祖ちゃんの貞操はワイが守る!」
馬鹿が立ち直り、体の各所から武器を生やす。
「あ~き~ら~さ~ん♥間違っても手を抜いたら許しませんよ?」
どす黒いオーラを放ち出すナミ
「カカカ!吠えおる、吠えおる。待っていろ花婿よ・・・生まれ変わるソナタに祝福としてこやつら美女の血を飲ませてやる。」
強力な魔力を放つ真祖。
「お腹いたんで帰っていいか?」
胃痛に苦しみ、胃薬を飲み出すアキラ。
当事者だろ!しっかりせんか!
私はアキラの貞操を守る!
真祖ちゃんの名前出てこず!?
次回こそバトル!




