花より団子 弐
修正しました。
昼食時、アキラが食堂に現れ、今日は珍しく重箱を持って現れた。
私が原因で食いっぱぐれるので、お昼は私達と一緒に食べても大丈夫な様に大量に持ってきていた。
アキラも気が効いてきた。
「ほら 味噌汁だぞ 美味いか? アニ。」
「ポカポカする。」
「ア~キ~、テメェ~そこまでするか~!」
「俺は手抜きはしない主義でな?」
確かに、この料理には手抜きが一切感じない、大変美味しい料理だ。
唐揚げ、オニギリ、卵焼き、味噌汁、野菜スティックと手で食べれるものばかりだ。
ジパング料理のオニギリも最高だ。
ガコライも食べればいいのに。
でもその分、私も食べれるからいいんですけど。
「耐えろ耐えるんだガコライ! その怒りを訓練の立会いにぶつけるんだ!」
「頼むぜガコライ! モテない男達の底力を見せてやれ!」
「ぐぬぬぬ」
さっきから外野がうるさい・・・・・・
あと女性陣が私を睨む・・・何故?
「・・・・・・そういえばアキ。 一ついい?」
「なんだ?」
「・・・アキが王族か貴族かになったらアキの下で(毒見役、味見役として)力になりたいんだけど。永久就職という形で。」
「ああ、アニには(毒見役、味見役として)期待している。何時でも歓迎だ。」
よし、是れで食事には困らない。私は毒キノコすら食するスキル【鉄の胃】を習得している。
問題は無い。
ああ、宮廷料理や異世界の料理を堪能出来る。
アキの新作料理や異世界料理を批評という形で食べれる。
「やめてやってくれ アキラの旦那!アニの姉御! ガコライの兄貴のライフはもうゼロだ!」
「永久就職という単語で沈んだな・・・・・・というか付き合い長いんだから()内の単語に気づけよ。」
気付くとガコライが泡を吹いて倒れている。
昼食中なのに、何か当たったのだろうか?
残すと勿体なのでガコライの昼食もいただきましょう。
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屋外、訓練場
「ハァハァ・・・・・・試合前からやってくれるな 親友!」
「イヤ、俺も真逆アニの援護射撃が来るとは思わなかった。・・・・・・大丈夫か?」
「だが、俺はこの試合負ける訳にはいかん! 聞こえるかモテない男達の涙が!」
「全く聞こえんな? 黄色い声援は聞こえるが。」
今朝のアキラの発言にアキラを憎からず想っている女性陣の声援はすごい。
ナミも先日までならむくれていたのだが、他の女性に絶対的なアドバンテージを得た事で、自分の愛する人がモテる事に多少なりとも誇らしく思っているようだ。
「というかお前はモテるだろう?ガコライ。」
「え? マジか!?」
そう、ガコライも人あたりのいい性格から男性陣だけでなく、少数だけど女性ウケはイイ。
「まぁ 所詮イイ人止まりだが。」
「ガフッ」
ガコライがまた吐血する。
ガコライが誰が好きなのか知らないが好きな人を親友に盗られるかも知れないというのは相当なものだろう。
私も食べ物を横から掻っ攫われると不機嫌になるが、二度と食べれないとなると怒りより絶望が勝るかも知れない。
アキは他人の女性には興味を抱かない。
朴念仁では無いが、結構肉食ではある。
なんせ女神様といい仲になっているぐらいだ。(逆に食われたらしいが・・・・・・)
ガコライもあの様子だと告白はしていないだろうから想い人がアキに靡かない事を祈るしかないのだろう。
・・・・・・望み薄だけど。
でも、こんなにガコライに想われているのは一体、誰だろうか?
見てみたい気もする。
「あ 上げて落とすか・・・・・・其処までやるか・・・・・・」
「まぁ手加減できる相手では無いし・・・この前のカグヤみたいに不意打ちも警戒されてるんじゃな。」
流石に今迄、不意打ち、奇襲を主体としていたアキラも有名になれば戦い方も研究されている。
ガコライもアキと共に、魔物討伐のおり、その戦いぶりを間近で見ている。
不意打ちも効かないし、口では負けてはいるが、そんな中でもアキラの不意打ち、罠を視線や立ち位置をずらしながら牽制している。
「俺は負けん! この戦いに勝って彼女を守る! 【稲葉】抜剣!」
「真剣か・・・・・・それも数少ない俺印の【魔改造】剣、稲葉か・・・・・・物持ちイイな親友。」
ガコライがアキラから託された黒剣、【稲葉】を抜く、凡ゆる重さに耐え、決して曲がらない頑丈な剣だ。
鞘には私の三角帽と同じ、アイテム収集機能まで就いている優れものだ。
「では俺もその気持ちに応えよう。 小太刀、抜剣」
・・・・・・正当な勝負ならガコライが優勢。
精神的優位性は完全にアキラの様にも見えるが、ガコライは銀狼の二つ名を有するほど、戦闘センスは高く、切り替えも早い。 口や態度とは別に戦闘用の思考がもう体を支配し、制御下に置いている。
奇しくも互いの得物は片手剣だが、スキルから見て、熟練度はガコライの方が高い。
技量ではガコライが上だが、アキラの前では勝利の要素にはならない。
果たして・・・・・・
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「負けられないんだよ! お前にはぁぁぁぁぁ!!!!」
ガコライの私怨がこもった斬撃が襲いかかる。思いっきり涙目だが繰り出される斬撃は激烈!
片手剣で出される威力では無い。
稲葉はあらゆる重量に耐えうる特製を持たせて【魔改造】した黒剣だ。
故に頑丈で且つ重い一撃を放つのだが、アキラは其れを尽く、躱しまくる。
ガコライの剣を躱し、片手剣で裁き、もう片方の拳で叩き、蹴りを放って削りにかかる。
小太刀は刀身の短さ、つまりリーチの低さから防御に使いやすく、攻撃するには体術に近い体捌きが要求される為、アキラが初めから所持していた【拳闘術】のスキルを存分に使用できるだ。
じわじわと拳によるダメージが毒の様に広がっていき、遂に膝を着くガコライ。
息を切らしながらも剣を手放さない。
「負けないでくれ ガコライ~~~!」
「アンタは俺たちの代表なんだ!」
「ああ、心配するな俺は倒れん、この背中には同士達の思いを背負ってるんだからな~!」
『ガコライ!ガコライ!ガコライ!ガコライ!』
その姿にガコライコールが訓練場に響き渡る。
「うおぉぉぉぉぉ! 【プル&シャーク】!!」
ガコライの剣撃と投げ技を駆使したスキル。
斬撃をアキラに当てたところに拳の反撃を見極め、相手の袖を掴んで引っ張って投げ、剣で止めを刺すガコライの切り札だ。 だが、相手が悪かった。
「そのスキルは対策積みだ。引っ張られても大丈夫なように、テープで服を内側から貼っつけまくったからな袖つかみは効かん!【プル&シャーク】」
袖を掴むも、引っ張ることは出来ず、逆に投げられ、態勢を崩すガコライ、だが、倒れながら両手を地面につけ逆立ちで蹴りを放つガコライ、難なく躱すアキラ。
そして、戦いを煎餅をかじりながら見つめるアニ。
「粘るな?ガコライ。」
「倒れる訳にはいかんっつったろ? 強くなったのはお前だけじゃ無いんだぜ?」
拳によるダメージが効いている筈だが、ガコライの精神が肉体を凌駕しているようだ。
つまり脳内のアドレナリンの多量分泌で、一時的にだが痛覚を遮断しているのだ。
柔術と剣術を使うガコライ
拳闘術と剣術を使うアキラ
両者譲らず、膠着状態に陥る。
「らああああああああ!!!」
「はああああああああ!!!」
片手剣で鍔迫り合いになりながら、両者の左手が腕を掴もうと、体を打ち抜こうと何度も交差する。
【毒霧!】
【遠吠え!】
アキラが毒霧をガコライの視力を奪い、ガコライの大声でアキラの聴覚を奪う。
痛み分けになって再び距離を取る。
全員がガコライの善戦に目を奪われる。
七英雄に互角に戦える。
その事実にガコライへの認識が、アースの住人が自分たちの誇りを取り戻す。
突如現れた異世界人が世界の中心の様に回り始めたこの世界アースで、それに対抗できる者は少ない。
七英雄の栄光の影に隠れるも、確かに実力をつけてきた銀狼が死神に牙を突き立てんと奮闘する。
最早、戦う前の軽い空気は霧散した。
だが、ガコライの肉体は回復した訳ではない、無視しているだけなのだ。遠からず、拳による|ダメージ
《毒》が全身を蝕み、披露で倒れるだろう。
そしてその時は来た・・・・・・
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ガコライside
アキラはアニに恋愛感情を持ってないし、アニもアキラに気なんて無いのは分かっていた。
雰囲気に乗せられたのでは無く、知ってて乗った。
アキラに挑まずにはいられなかった。
挑んだのは俺と同じようにアキラもズルズルと傍にいる相方の関係を崩すのを恐れていたのに、その恐怖を乗り越えて、ナミさんとの仲が親密になったからだ。
つまらん嫉妬だ。
何時も滅茶苦茶な癖に決めるときは決める奴。
アキラは何時も俺の先を歩く・・・・・・
使徒の救出作戦の時も、七英雄に昇格した時も、今回の騒動の時も・・・・・・
もう背中を見るのはうんざりだ!
追いつき・・・イヤ追い抜いてやる!
・・・・・・そう思ってたのに
「その体でよく戦ったな。」
うるせえ・・・・・・お前なんか直ぐに追い抜いてやるつもりだったんだ。
「袖や襟を掴めず、腕や足を掴まざるを得ないが、其れを知っててやらせるのは二流だ。」
畜生・・・あんなに訓練したのに! 体が・・・・・・動かねぇ
「後はスタミナ切れを待ち、焦れて襲いかかれば、カウンターの餌食だ。」
わかってる い いち説明 す な
「今は眠れ・・・」
うる い よ な お 話だ・・・
「・・・・・・」
・・・・・・畜生。
ガコライside end
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訓練場 救護室
アニside
ガコライは眠っている。
アキラの愛人募集宣言とも取れる事が発端の今日の訓練。
ガコライが倒れたあと、ガコライに感化されてアキラに挑んだ者が多数居たが、アキラはそのことごとくを返り討ちにした。
それこそ服を触らせることも無く・・・・・・
「・・・・・・ん?」
「・・・・・・起きた?ガコライ。」
「ああ 負けちまったなのか。」
「・・・・・・完敗」
「容赦ねぇな 俺の相棒様はよ・・・」
当然だ。
私は食べ物と勝負事に妥協も容赦もしない。
「アキは?」
「今頃ルーとチェスを打ってる。 お大事にって」
「よく言うぜ・・・・・・」
本当は男はこういう時そっとすべきとは知っているがここはこう言うべきだろう。
「・・・・・・ガコライは私の相棒なんだから、このくらいでヘコたれないで。 早く良くなって?」
「/// !!!」
「・・・・・・食費も稼がないといけないし。」
「!!! あ~そ~だな。 お前はそういう奴だよ。 期待した俺がバカだったよ。」
「・・・何を期待するって?」
「何でもねぇよ!」
何故、怒るのだろう? 心配しただけなのに。
アニside end
続きます。




