花より団子 壱
タイトルから察するにあの人です
王都・訓練場
「結婚おめでとう。アキ よ、この色男!」
「・・・俺がナミの相方として彼女の装備の強化を図るのが不思議か?」
「・・・・・・もきゅもきゅ 婚約指輪?」
「違う! アイツと会ったっていうか組んで一年経ったからその記念にと思ってだな!」
「語るに落ちてねーか?」
昨日はナミ曰く、アキラとナミの結婚記念日だったらしく、アキラは身内だけで祝いたかったらしく私たちに内緒で祝ったそうだが、今朝、ナミが訓練場の食堂で自慢して、一気に広まった。
後、今迄、『主様』という呼称が『アキラ』に変わっていたのも親密な関係になったということを裏付けている。
その為、何時もと違ってガコライがアキをからかうという珍しい光景が繰り広げられている。
この光景をオカズに食べるアキラから強奪したミリ飯(チキンライスの缶詰)は最高だ。
「・・・・・・なぁ アニ?俺の朝飯は美味いか? エエ? オイ?」
「もきゅもきゅ ・・・美味しい。でも保存を利かすためか調味料の味付けが少し濃い・・・でもアキの照れた顔をオカズに食べれば後三杯イケる。だからおかわり」
「いや照れてねーし! つかまだ喰う気かよ!?」
アキは何時も何かと美味しいものを作ったり持ってきているので最近は美味しいもの=アキラが持ってくるという図式が私の中にできている。
アキも嫌とは言わず、憎まれ口は言っても、ちゃんとご馳走してくれるのだから問題は無い。
だから少し位なら妥協もしてあげる。
「なんだこの手は?」
「・・・・・・右手」
「何のつもりだ?」
「・・・・・・デザートで手を打つ・・・・・・出して。」
「何、その仕方ない奴だなって不満顔? 出さないよ?」
ツンデレという奴だ。ブリタニアの本で書いてあった。
アキは普段も戦う時も素直では無く、捻くれている。
「それでアキ? これからは女神様一筋でいくんだよな? やぁ~めでたい!」
「・・・・・・何のことだ?」
「惚けんなって! ナミちゃんが浮気なんて許す訳無いだろ?って事は他の男たちにもチャンスが」
「俺は自分の事を愛する者の気持ちには可能な限り応えていくつもりだが?」
アキが口元を釣り上げて答える。 あぁやはり役者が違うな。
アキの言葉に食堂の喧騒が静まる。
食堂の一角でノエルやアーニャ、ルー嬢に自慢話に花を咲かせるナミは頭がお花畑になっていて気づいていなく、その言葉にさっきまでゲンナリしていたノエルやルーを始めとした女性陣の表情が微かな希望の言葉に輝き、男性陣の顔が無表情に変わる。
「あ~アキ? その発言は、もしや アレか? 自分の愛情はナミちゃんだけに注がないと?そう受け取っていいのか?」
アキは何時か背中を刺されると思う。
是れを天然でやっていたらまぁ許せるかも知れないが、アキは鈍感で愚鈍な男では無い。
常に本気だ。
目つきが鋭く、異世界人特有のオリエンタルな容姿に七英雄というフィルターも付き、貴族より稼げもいいアキラは国中の女性から狙われている。
隣国・・・というより女帝・カグヤからも縁談の話が来ている。
他人の女性に手を出さないので、既に伴侶のある男性からは兎も角、モテない男達からは美女が乱獲されると、目の敵にされている。
この前も無謀にもアキに挑んだ勇者が返り討ちに合ったばかりだ。
流石、魔王の父になるかも知れない男だ。
ん?アキが王族となると、もう美味しいご飯が食べれなくなるかも知れない。
彼の元に毒見役、試食役、料理の批評役として就職しなくては!
アキは少し考え、フムと頷くと
「そうなるな。 ナミも了承済みだ。」
『キャアアアアアアアアアアアア♡』
『巫山戯んなぁぁぁぁぁぁ!!!!』
女性陣の黄色い声が上がり、モテない男性陣からは怒号が上がる。
ノエルさんは両手でガッツポーズを、ルーさんも見えない様に小さくガッツポーズを取り、平静を保とうとしているが、口元が少し嬉しさでニヤケてる。
そして私はその隙にアキラのポケットから飲料型ゼリーのパックを掠め取り、デザートにありつく。
美味しい♪
「あ そろそろ時間だ。クラリスとアリシアの授業の時間だ。またな諸君。」
「アキィィィィ!!! 昼の合同訓練逃げるんじゃねえぞ!! 首を洗って待ってろ!!」
ガコライは何を怒っているのだろう?
誰か好きな人でもいるのだろうか?
この前、暇つぶしに訊いても答えてくれないし・・・
ああ、そんなことより、昼食が待ち遠し・・・ん?
視界の外にガコライが最後に食べようと残していたデザートのフルーツカットの盛り合わせが映る。
ガコライは気づいていない。
ガコライは何だかアキを追いかけるのに、忙しいみたいだから今の内にガコライが残しているデザートのフルーツを頂きましょう。
食べ物を粗末にするわけにはいきません。
いただきましょう♪
「もきゅ もきゅ。」
美味しい♡
アニさん登場!




