反省
悪魔使い対戦女神は未だ早く、話の展開、パワーバランスの為、前回のラストを修正しました。
ガリア城、第2食堂
「・・・・・・で、全員やられて凹んじまった訳か?」
普段の日より、訓練兵達の食堂の利用者数が多いことを不思議に思ったエリクが事情を落ち込んでいるジーク達から聞き、思わず同情した。
来客の多い原因その1
先日のダンジョン攻略に挑戦した生徒たちの自主訓練。
あの後、ルー寮長とアキラが異変に気づき、出張先(諸外国の古代遺跡、ダンジョン探索)から急いで転移で戻ってきて上層に戻り、その場でカグヤを叱りつけ、ダンジョン実習はお開きとなったのだ。
まだまだ、ひよっこに過ぎない訓練兵や一、近衛騎士では一人軍隊に匹敵する戦闘能力を持つ、臨界者・・・その中でも最強の実力を誇るカグヤ皇帝に勝てというのは酷なものだろう。
休日はアキラが、王城にクラリス・アリシアの所に家庭教師として出向し、兵士や自主参加の訓練兵達と合同訓練に参加するので指導してもらおうと集まったのだ。
そして普段より来客の多い原因その2
件のカグヤ皇帝がこの食堂にいるのだ・・・・・・
「うう アキラさんに叱られました・・・・・・」
鬼レベルの難易度のダンジョンをいきなり、無理ゲー、クソゲーの域にまで難易度を跳ね上げたカグヤは当然アキラの怒りを買い、その場で正座で説教されてしまい、生徒たち同様凹んでしまっていた。
生徒たちにも謝罪し、アキラも溜飲は下がったのだが、曲がりなりにもお嬢様として育ったカグヤには愛しい人に叱られる、怒られるという事にショックを受け、王城に顔をだし、ガリア国王やクラリスと謁見、会談となったのだが、ショックが抜けきっておらず、終わったあとも、この食堂にさまよい、一人、席につき落ち込んでいるのだ。
突如、食堂に現れた絶世の美女にして最強の英雄、女帝を前に城の者や学生たちも浮ついた空気を出し人が多く集まるもジロジロみようものなら不敬罪に問われるし、何より相手は蒼炎の戦女神を冠する女傑。
触らぬ神に祟りなしと避けつつ食堂にとどまるのだった。
「俺としちゃあ儲かるから嬉しい限りだな。」
ガハハハと豪快に笑うもこれを食って元気だせよ。と事情を話したマリア達にデザートのケーキを出して厨房に戻るエリク。
どうやら彼は女帝よりも奥さんの方が魅力的に見えるため、あまり興味を示さないようだ。
「で・・・・・・どうするっスか?」
ケーキをパクつきながら他の面々に話しかけるマリア。
唸るジーク、ルーシャス、フィオナ、ケント。
食べるマリア、クリスタ。
姿は認識しづらいが、悩んでいるだろうジョン。
訓練、最強の英雄相手とはいえ、恋も負け、戦いにも負けを喫したアリシアは涙こそ流さなかったがそのショックは計り知れないものがあった。
あの時のメンバーはアリシアの恋愛事情を知ってしまうことになったが、誰ひとりとしてそのことを口外はしなかった。
マリアとしてはスパイとして、内と外からガリアを崩せる情報を手に入れた事になるのだがどうにも乗り気では無かった。
短い付き合いとはいえ、苦楽を共にした仲間、友人を失う事は避けたかったのだ。
「あの娘も真面目だからね~」
「・・・・・・あの時、焚きつけた俺にも責任の一端があるしな。」
「ジョン君もあまり気に病む必要はないのでは・・・・・・大きい壁にぶち当たった時、目標とするか、自分の器の小ささに卑下するかは人次第ですが・・・・・・アリシアさんなら前者の筈です。」
「フン、副会長にその心配は無用だ。今はどうやってあのレベルに到達するかだな。」
そういってジークが未だ落ち込んでいるカグヤの方を見る。
「う~ん 兄さん達は死都やオーク狩りでレベルを上げたけどAランクのダンジョンは僕らの手に負えないしね。」
ケントはCランクだった兄達が今や、Aランクに迫るほど成長した姿を思い出す。
「七英雄達も初めから強かった訳ではありません・・・・・・確かに卓越した文明、知識を持ってはいるが我々と身体的スペックはそう変わらん。 むしろこちらの方が一日の長があるはずなんです。」
悶々とする面々、マリアとクリスタだけがケーキをパクついている。
(マリアちゃん 力になってあげれない?)
(無理ッス。 職務上、叶えかねるッス。それに私の指導力の低さは周知の事実っスよ。というか七英雄に頼るなって言ったのは先生ですし、クリスタちゃんも賛同したじゃないッスか。)
(そうだけど・・・うん そうね。 自分たちで何とかしないとね。)
「なんだなんだ今日は盛況だな!? おっちゃん日替わり定食A 下さーい。」
そうこうしている内に遅い昼食を食べにアキラがやって来た。
パァァァとカグヤの顔が輝くが直ぐに怒られた事を思い出し、俯き自己嫌悪に陥る。
マリア達、生徒も教師のアキラの登場にざわつく。
「悪いなアキラ、今日は見てのとおり大繁盛でな・・・・・・定食は切らしちまってんだ。賄い食でよかったらだすが。」
「え゛ まじすか!? やっぱ遅かったか~ オッチャンの賄い料理もいいけど・・・いい機会だから自作のミリ飯の試食したいんで。コップ二杯の水と食器下さい。 」
「ホゥ 例の心得か?」
そう言って食器を取りに厨房からトレイと水を渡すエリク。
「先ずは自分で試せって奴だな・・・この後、訓練もあるし。」
食器を受け取り席を探すアキラ・・・・・・そこに不自然に席のあいた一角を見つけ席に着くアキラ。
「・・・・・・で? 未だ落ち込んでるの? カグヤ?」
ミリ飯の容器に水を入れ、発熱して料理が温まるまで間があるので隣の席に座るカグヤに話しかけるアキラ。 流石に説教したあと涙目になったカグヤ、そしてソレが原因で落ち込んでいる彼女の姿を見て良心を痛めたのだ。
「あ あの アキラさん 怒ってます?」
「もう 昨日、十分怒った。 反省してるんなら怒ってないよ。」
其れを聞いて、安堵するカグヤ。
「そ そうですか///」
急にしおらしくなり頬を染めモジモジする女帝の姿に遠巻きに見ていた者たちが微笑ましく見つめたり、その美貌にやられて気絶するもの悶える者、アキラにさらなる怨恨を深める者と様々だ。
先日カグヤと戦ったマリア達はというと
『誰だあんた!?』
と声を揃えて叫ぶ衝動を喉まで出るところを何とか押さえ込む。
「結果的にはいい経験になったしな。」
そう言ってマリア達の方を見て手招きしこっちに来いと呼びかける。
「昨日は災難だったな。 カグヤが迷惑をかけて・・・」
その言葉に頬を染めつつ小さくなる戦女神。
「も 申し訳ありませんでした。」
『だから誰だアンタ!?』
戦乙女が恋する乙女に変貌している光景と昨日の戦女神のギャップにそろそろ突っ込むのを耐える事に限界の面々。
一国の、それも大国の皇帝が一学生に謝罪を述べるという光景が繰り広げられていた。
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マリアside
「強くなりたい~?基礎訓練の反復に俺が作ったダンジョンにいけばいいじゃん。 ダンジョン内のアイテムも素材も国と学校が買い取るし、その金で装備を整えたらいいだろ。」
あったまったアツアツのミリ飯(牛丼)を食べながらそう答えるアキラ氏。
至極当然の事を言ってるっスけど皆は貴方の隣にいる人と比べると焦りもするッス。
こないだ二十になった元いた世界じゃ女子大生の年の女の子や私の様な女子高生が一年も絶たない内に世界の命運を左右するほどの戦闘能力を有してるんすよ!
「慌てて、魔素を取り込んでも下手すりゃ魔物化するか死ぬかだぞ?俺も基礎訓練を積んでから、レベル上げに取り掛かったんだし。」
因みに、私とカグヤさんは元から魔素を貯める器が膨大だったらしくカグヤさんは戦いの中で、私はとある固有スキルで比較的早くにカンストにたどり着いたっす。
ので、ガコライさんがいってた逸話からアキラ氏の修行内容が目の前の戦女神を打倒しうる手がかりになるッス。
「アリシアも昨日、同じこと聞いてきたな。 まぁ月並みだが焦るな・・・・・・あのダンジョンを攻略して俺の授業をしっかり聞いて反復すればいいよ というか・・・・・・」
そこでアキラ氏の顔があの時の・・・・・・内乱の時に見せたあの目つきに変わって続きを言ったッス。
「そんなに人殺しの技術が学びたいのか?」
ああ~やっぱりこの人戦いを嫌う節がありますね。 根底が教師で優しい故ですかね?誰よりも優しい人が誰よりも強いなんて皮肉ッスね。
「そ そんなことは」
ルーシャス君が言葉を濁らせます。
まぁ文化の違い、お国柄の違いでしょう、私たちは比較的平和な国から来ましたし。
「大義を見失うな。ハンターは魔物から、兵士は敵国から大切な人や民を守る為に訓練をしているんだ。必要以上でも以下でもダメだ。彼らは望んで人を殺すわけでも無いし、個人が過ぎた戦闘力を持っていたら、その技術を魔物以外に向けたらどうなる? 先の内乱で反逆者達がそんな力を有していたら今のガリアはなかったぞ。 俺とてこの力を七英雄以外に使ったことは無いし普段は自制している。」
そして落ち込む面々・・・・・・言ってることは最もッスね。
そしてウンウンと頷く、カグヤさん。 いや、あなたが原因なんスけど!
「実習や講座の時にもいったが今は心身共に鍛えることだな。」
「主様・・・・・・そのくらいにしてあげたらどうですか? この子達も向上心故に教えを請いにきてるのですから。」
「基礎の大切さなど普段からお前が一番教えてるんだ。それでも尚、焦って休日を返上してここに来たんだ。週に一度しか働かんのだからもう少し、教え、導いたらどうだ?」
そう言って後ろからナミさんとルーさんが現れ、助け舟を出してくれるッス。
相変わらず、お二人ととも見惚れる美しさっスね。
カグヤさんはというとナミさん、ルーさんの登場に頬を軽く可愛く膨らませてにらんでます。
ううん一気に美女・美少女率が上がったスね。
「ぐぬぬぬ わかったよ 昼から訓練をつけてやる。 丁度アリシアからも頼まれてたし纏めて鍛えてやる。」
「アリシアが?・・・・・・」
アリシアさんのことで気に病んでたジョン君が問いかけるっス。
・・・・・・やっぱいたんスねジョン君。
「ああ お前らと同じだ・・・・・・もし今日俺のとこに鍛えて欲しいと来たら一緒に訓練を付けてやって欲しいと言ってたぞ。」
・・・・・・アリシアさん
「いいチームだな。」
そう言ってニヒルな笑みを浮かべる先生。
午後から忙しくなりそうっス。
・・・・・・やっぱ私も参加しなきゃ駄目ッスか?




