姫騎士VS戦女神
イメージはBGM精霊の守り人~英雄、立つ。
ラスト修正しました。
戦術陣形その参 ダンジョン内の対人型のボスを想定して考えられた陣形。
攻撃の的を絞らさず、複数の人間を一個の個として機能させて戦う陣形。
カグヤに敗れ、灰燼となっただろう上層部の本来のボス下位魔なら充分過ぎる程の効果を得ていただろう・・・・・・
「敢闘賞・・・・・・と言ったところですね。」
カグヤは健在。消耗らしい、消耗はせず汗一つかいていない。
一方、アリシア達は満身創痍だった。
「ハァ・・・ハァ・・・・・・そ・・・・・・んな。」
他の七英雄と異なり、幼少の頃から武の道を歩んできた下積みと天賦の才。
好敵手も居らず、孤独な戦いを続けていた努力する天才。
アキラという才能と身体能力の低さを戦術と奇策、努力で補う好敵手との対決が・・・・・・彼女をより高次元の存在へと昇華していた。
【窮鼠猫噛】【源呼吸】など新スキルの開発をし、固有スキルまで発現させるアキラの【強化】の最上位互換、【魔改造】による得体の知れない戦闘スタイルが、今迄、相手の土俵に立って戦う横綱相撲だった彼女の姿勢を変え、戦術の陣形を崩しに掛かられたのだ。
「お弟子さんと風紀委員の方が右手、左手とすると、補助を行う歌姫さんは心臓部。隙を突く狩人さんとジョン君は目、状況に応じて、臨機応変にアイテムで補給を行う会計さんが脳であとの二人はそれらを守る骨や筋肉、状況によっては手より強力な攻撃を放つ両足となるのでしょう? オーソドックスな基本陣形に改良を加えた素晴らしい陣形ですが・・・・・・この世に完璧な戦術などありません。」
全員が倒れ伏しているもまだ意識は保てているし、ダンジョンの転送は始まっていない。まだダンジョン・コアに戦闘可能な状態と認識されている証拠だが・・・・・・逆転の目は低い。
「先ず、この戦い方では対象の攻撃力を無力化してジワジワと倒す事が前提としていますが・・・あなた達の体力・装備が持たない事・・・・・・あの厄介な毒ナイフ、毒矢だけ警戒し、前衛であるあなた達の攻撃を受け止めたと同時に捕まえるか、交差迎撃を仕掛ければ攻撃の要である前衛は無力化できます。 一つでも欠ければ後は潰していくのも時間の問題です。」
そうして一人、また一人と倒れ伏し魔素の粒子となって入口に転移していき。今の状態になったのだ。
「まぁ毒の泉も武器による攻撃も蒼炎の熱で蒸発・融解させることも、ここのボスやアキラのように蒸発・灰燼と化す事も出来ましたが・・・・・無粋でしたので控えました。」
アリシアは自分の無力さに俯き涙をこらえる。
何が王女護衛官だ・・・・・・何が七英雄の弟子だ! クラリスにアキラに申し訳が絶たない。 相手が強すぎて、頑張りましたけど負けました。 そんな言い訳などしない・・・・・・手加減されて一矢も報えずに敗北した自分を恥じた。
訓練ダンジョンでなければ今日、自分の命はなかったのだ。
だが、アリシアが勝負を諦めかけたその時、彼女の脳裏にある男の言葉と姿が過ぎる。
失われた子供たちの笑顔を取り戻そうと街で物語や唄を歌った詩人がいた。
兵士やハンターの帰りを待つ家族の為に自信の身を削って新薬と食料を作り出した錬金術師がいた。
凡人の身でありながら、地獄の街に身を投げ、誰もが諦めた難民を助け出した執事がいた。
1000年以上もの間、誰もが諦めてた黄泉の牢獄から女神を救けだした勇者がいた。
国中の医者や術師が匙を投げた難病を、神の力に縋らずに自らの手で奇跡を起こした医者がいた。
友と愛する家族を守るため術と力を教えてくれた師がいた。
友と弟子の危機に駆けつけ、巨像と悪魔、邪霊の大軍に立ち向かった親友がいた。
暴力に虐げられた女性の為に立ち上がった紳士がいた。
不忠の愛の思いを告げ、受け止めてくれた愛しい人がいた。
「俺は諦めない・・・・・・諦めてしまったら今迄積み上げてきたものが無駄になってしまうから。」
その言葉に目を見開き、自身の体に活を入れる
満身創痍ながらも立ち上がる体。
ああ… 立てて良かった。もう一度立てる力があって良かった。
強くなって良かった。
もう負ける気がしない
戦女神はその姿を見つめ、始めて敵として、彼女を見定めた。
「・・・・・・お弟子さん。 名前を伺っても?」
「アリシア・ド・マイヤール」
「覚えておきましょう・・・・・・強き人・・・私も武門の者の礼儀としてこの刀で沈めて差し上げます。」
倭刀ではない・・・打刀・・・・・・ジパングの職人に作らせた神刀・・・自身が最も得意とする得物を抜き放つ【精霊化】は使わない、自身が培って来た【技能】を眼前の敵に向かって打ち放つ。
体を半身に向け、居合の構えを取るカグヤ
正眼に構え、基本にして最強の斬撃【上段斬り】と【源呼吸】で気合を高めるアリシア。
両者が同時に弾かれたように動き、必殺の一撃を叩き込み、影が交差する・・・・・・
静寂の中・・・・・・アリシアの剣が自身の余りにも強力な斬撃に耐え切れず粉微塵に砕け、最後の力を絞りきり、今度こそ倒れ伏す。
「見事な一撃でした。」
その言葉が届いたかは定かではないが、最強の存在に称賛を送られながら・・・・・・アリシアは光に包まれ転送されていった。
次回、エリクさん登場!?




