アキラの武勇伝
ガリアの七英雄について?
宿屋の若女将さん
「ああ アキラさんの事ね、英雄の彼より、街で紙芝居や吟遊詩人、子供たちに玩具を作ったり皆から親しまれてた好青年ね、口癖が“子供たちに笑顔を”だって、え?確かにちょっと怖い顔つきだけど、笑った時は私でもクラってきちゃうわ。 やだ私ったら❤ もしかして、あなたアキラさん狙い?競争率高いわよ~なんたって…… 以下略」
とある冒険者
「俺らにとっちゃ現人神だよ! 最初はフードを深くかぶって顔を隠す妙な奴だと思ってたんだよ。仕事も誰も受けない雑務、街の住民の荷物持ちや、庭師の真似事、定食屋の手伝い、教会の仕事ばっかり受けてたな。 最初は皆、バカにしてたんだが、誰もやらなかった雑務クエストを直ぐに片付けちまったから、ギルマスとギルマネ、街の住人から信頼されてな……それが面白くないギルドの冒険者連中からよく絡まれてたな、まぁ俺もその一人だったんだけどw でもいっつも直ぐに逃げられちまうんだ。腰ぬけってよく笑ってたんだが……あいつが討伐クエスト、探求クエストを受け始めた時、俺達の評価が変わったんだ。 一撃だよ……どんな攻撃もかわし、どんな魔法も効果が無く、一撃で魔物を仕留めるんだ、それも不死者やゴーレム、悪魔でさえ……あの時、俺達はダンジョンでへまやっちまって仲間からはぐれ、罠に掛かって、瀕死だったんだ。 運よく小部屋に逃げ込んで魔よけの香を焚いて仲間の救助を待ったが、小部屋の出口には俺達を殺そうと蠢く魔物達、疲労困憊、武器も消耗し、疲労困憊で立つことも出来ずにいたんだ。俺たちは飢えか魔物に喰い殺されるか……どの道死を待つしかなかったんだ、絶望の内に魔物に喰い殺されるぐらいならいっそ死んでやろうかと考えてたその時にあの人が現れたんだよ。
急に血の様なむせた匂いを放つ紅い煙が沸いたかと思うと魔物達が一斉にそこへ引きつかれ、そこに群がった瞬間魔物達が急に事切れて行くんだ……そして静かになった時、何時もバカにしていたアキラが食糧を背負って俺たちの前に現れて、救助してくれたんだ……
後で聞いた話じゃ、俺達がダンジョンに潜って帰ってこないってんでギルマスが救助を募ったんだが、俺達の生存は絶望的、魔物の群れの中に突っ込み、危険を冒してまで助けるものがいなかったときあの人だけは俺達を見捨てなかったんだ。」
冒険者はその時を思い出したのか目に涙が浮かぶ
「すまねぇ 話の続きだが アキラは俺達なんかより、よっぽど強いのにその力に驕ることなく、どんな魔物も一撃で仕留め!何十もの罠をも潜り抜け!仲間は決して見捨てない! 俺達の英雄だ! そうだろ皆!」
「そうだ!」「いいぞ兄ちゃん!」「我らが英雄にカンパーイ!」
冒険者達が酒を片手に乾杯をあげる。
「それでなって あれ ねーちゃん? 話長かったから 帰っちまったかな?」
先ほどまで話を聞いていたフードを被った女はいつの間にか消えていた。
とある教会の神父
「ふむ アキラ君のことですか……彼が此処に来たのは二年前でした、ここで白魔法と医療スキルを学びに門を叩きました……教会の子達に私と一緒に文字を教えたり、遊んだり……子供たちが彼の影響でイタズラのレベルが上がったのは頭が痛いのですが……うちの子供たちは彼が来る日にはいつもそわそわして教会の入口に目を見張りましてね……授業に集中しないんですよ 困ったものです。」
そう言いつつも神父は穏やかに笑っている。
「ん? 闇の大精霊の契約者? 確かに十字教の不倶戴天の天敵でしょうが……彼の人格をそれだけで疑う事もありませんし、何より彼女もこの二年でこの国に大分馴染めましたし、時々人か精霊か見分けがつかない程ですよ。 子供たちにとって彼女も母親代わりなのでしょうな……ん?本国に戻らないかと?私の様な一神父を過大に評価していただき誠に有難いのですが、この国は亡き妻との思い出です。申し訳ありませんが、断らせて貰います。 それでは。」
とある研究者
「アキラ教授? ええ確かに彼は英雄でもありますが根っからの研究者、教師の男ですなぁ彼の知識は考古学、精霊学、地質学、生物学、言語学、魔法学などあらゆる学問に精通し、この国の将来を担う子供たちを正しく導く人ですな。 また精霊魔法や魔法の新たな可能性、錬金術の研究もしており発明家でもありますな。 この私もこの国の未来が楽しみで仕方ありませんよ。
……ただ実験と評して人に魔法を掛けるのは止めてほしいですな……この前は国王陛下の耳をロバの耳にしたり、ダンジョンの魔物をファンシーな妖精の姿に変えたり、ドアのノブに電流を流したり……国の泉を酒の泉に変えたり……文句を言いにご自宅に向かったらブリキのタライが落ちてきました。 まぁ人命にかかわるイタズラはしませんし、魔法も直ぐ解けるのですが…アレさえ無ければねぇ ハァ……」
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勇者、戦士、魔法使い、僧侶の四人が宿屋で今日集め終わった情報をまとめる。
実力は 一撃で相手を仕留める攻撃手段を持つ偵察職、物を変身、変質させる魔法を修得しており、古代魔法を修得 普段は研究者兼講師
民衆からの絶大な人気、一部嫉妬に狂う男アリ
性格はいたずら好きだが、聖者のような男
大精霊の契約者だが、経典の様に精霊の操り人形では無く精霊も人格はおとなしくなっている。
「やはりロマリアの噂とはだいぶ違いますね」
勇者シュウはロマリアでの情報を思い出す。
七英雄が闇の大精霊と契約し、神話と同じく魔王を いや神話以上の魔王が生まれる危険ができた為、同じ七英雄の勇者とその仲間が調査に出たのだが……
「う~ん悪い奴じゃないと思うんだけど……」
自称虎の獣人のミーアは人間より優れた直感をもつ少なくとも民衆から話を聞き、その気配を感じたところ本当に慕われていると感じたのだ。
「研究所の奴らはイタズラには悩まされてたみたいだけど、後から調べたら舞踏会に行けない女の子にきれいなドレスを作って魔法でかぼちゃの馬車を作って参加させて恋の手助けしたり、荒れた土地に水脈を探して井戸を作ったり、桃の木を生やしたりもしてるね。 電気の罠も民家の防犯グッズとして売りに出してるし、イタズラと称して実験しては、それが実を結んでるね。」
同じ精霊使いの魔女 デネブも調査を進めアキラの人格の危険性を否定している。
「教会に敵対している訳でもありませんし、もし彼を亡き者にしてしまえば民衆や孤児院の子供たちは悲嘆にくれてしまいますし戦争の引き金になりかねません。 彼が情報通りの悪人ならこんなことに悩まなかったのに……!」
僧侶のテレサが涙を浮かべる、教会の子供たちの笑顔がよぎる…… 自分にあの子たちの笑顔を奪えない! でも魔王が再来すれば……非情にならなければとジレンマに陥る。
「やはり事前に調べて正解でしたね。 どうも教会はきな臭い、経典も何処か歪められている節もあります。 一度本国に戻り、ガリアの調査準備を装いつつ、本国を調べましょう。それに、もし彼と敵対することになり、魔王の復活を阻止できても、疲弊した僕では蒼炎の戦女神に勝てません。」
普段 どこか抜けている勇者も顔を引き締めるこの三竦みを打開するには、他の七英雄に協力を求める必要がある。
蒼炎の戦女神か神剣の勇者以外では太刀打ちできないが七英雄を複数同時に掛かれば勝てるし、自分の仲間達もそれに匹敵する実力をつけつつある今はまだ早い。
「今は時期尚早です。この情報を持ち帰り帰還します。」
勇者一行 三強の一角の七英雄は来るべき対決を前にガリアを後にした。




