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異世界攻略のススメ  作者: 渡久地 耕助
蒼炎の七英雄

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月夜の逢瀬

2015/01/06 改稿

 カグヤは二面性のある英雄である。


 人懐っこく、庇護欲を誘う雰囲気を持つ。

 

 内政や現代知識を活かした農産業、工業を発展させる豊穣神の姿。


 一方、実力者との戦いに恋い焦がれ、血肉を沸き立たせる。

 そして冷徹に戦場の英雄をあの世へ送る戦女神の二面性を持っている。


 そんな二面性を持つ彼女が同時に同じ人物に恋い焦がれたのである。


 自身を凌駕する可能性をもつ青年。

 手に入れたい、壊したい。愛したい。殺したい。


 彼は自分の者だ。誰にも渡さない。


 何らかのトリックや小手先の技術、前線に出てくるタイプではない魔術師と偵察職を併せ持つ。

 自分とは対極に位置する者。


 接近戦、中距離戦、遠距離戦、魔術戦、頭脳戦全てにおいても高いレベルを誇る。


 しかし彼が本領を発揮するのは、後衛で指揮を執った時だ。

 彼が自分と同じ軍を手に入れてしまうと一対一で戦えなくなってしまう。


 そして、電撃作戦によって彼を引きずり出そうとした。

 何故か彼は単騎で国境線に待ち構えておりここでカグヤは自身を抑えられなくなる。


 戦闘狂(後者)の顔が表に出てきてしまいその本性を抑えられなくなる。

 

 帝国の傘下に加える為、捕縛する筈だった。

 鈴木、幹部との戦いを見て自制心が消える。


 しかし蓋を開けてみれば、自分の土俵で戦い敗北した。

 生き残りはしたが自分に敗北感を与えて彼はこの世を去った。


 彼女が正気に戻った時にはもう、愛しい者は目の前には魔素となって消え失せていた。


 ◆◆◆◆◆


 カグヤside


 相打ちとなりましたが……彼は死に、私は生き残った。


 正気ではない……この異世界に落ちあらゆる重圧から解放されていた。

 今迄戦ってきた中で不死身と思っていた自分はどこか現実味が希薄になっていたのだろう。

 

 神と呼ばれ、それに応えないと心が保ちそうに無かったから。


 でも死を思い出させる彼の強烈な殺気が、

 一撃が私に武器を持たせ人に使うには強力なスキルを放ってしまった。


 しかも『死にたくない』乾坤一擲の相手に精霊化を行い薄汚く自分は生き残った。

 相手は精霊化では無く、拳にのみ霊力を込めていたのにだ。


 なんて無様、なんて卑怯。

 誰が戦女神だ。

 

 ただ生き汚いだけの人間だ。


「わ、わたし、私はなんてことを・・・」


 さっきから降り注ぐ雨が私を責めるように振り続ける・・・


 人を殺めたのは初めてではない……

 今迄自分の命を貞操を狙ってきた者は全て殺してきた。


 だったらなぜ私は泣いているんだろう…

 

 彼が愛おしかったから?

 私と対等の存在だったから?

 自分の行いを恥じているから?


 わからない ワカラナイヨ


「……帰ろう」


 魔石を砕き、転移魔法を起動させる。

 転移魔法で国境線の前線基地に飛ぶ。

 視界が前線基地の門前に切り替わり、凱旋する。


 前線基地には自分の部下たちが私を大歓声で迎える。

 祝杯をあげ、一晩中お祭り騒ぎになった。


 今日は夜も遅く、私も戦いの後なので軽く祝杯をあげて寝室に向かう。

 明日から本格的なガリア攻略作戦が始まるだろう。


 七英雄の鈴木は暫く戦線復帰は叶わないが帝国幹部会と前線基地内には大隊の規模の兵士がいる。

 直ぐにはガリアは落とせないだろうが、英雄亡きガリアに勝機は無い。


 西連邦に先を越される前に攻め込まねば。


 そして寝室の扉を開け、鎧を外して武器を立てかけた時

 

 「こんばんわ? カグヤさん。」


 背後から二度と訊くことの叶わない筈の死神の声が聞こえた。


 振り向くと死んだはずの死神が不敵に笑っていた。

 反射的に、全身に強化を掛け襲い掛かるが

 先ほどとは別人の様な速さで腕を決められ、口を手で塞がれる。


 何故生きている? 何故ここに居る? その強さは何?

 というかあまり密着しないで欲しい。


 先ほど最高の殺し合いをして一気にハイになった後、直ぐダウンしていたのに、また滾ってくる。


 知ってか知らずか彼は私の耳に息がかかるように耳打ちし出す。


 アッ 耳元にいきがぁ

 いえ、というかこの体勢のままで話すの!?


「まず 何故生きているかだが、【完全隠密(インビジブル)】で姿を消えたあの際、分身と入れ替わったから。

 材料を揃えて(・・・・・・)錬成した真に迫る分身だ。

 いかにもらしいセリフを言ったあとに分身を使うとは思わないだろうからね?」


 ……さっきまで自分を卑下にしていたのが恥ずかしくなる。

 私の少し斜め上を行く卑怯さだ。

 

 多対一の中、私に致命打を与えた実力は紛れも無く本物だ。

 

 戦術に嵌り、分身でさえ私に致命の一撃を与えたのだ。

 抑えているがかなりの魔力量を秘めている。

 半ば神の領域に踏み込んでいる力を感じる。


「死んだふりをしてやり過ごし油断した所をここまで着いて来て進入したって事、勝って兜の諸を閉めろってね。」


 あとで警備の見直しね。 

 警備担当の罰はどうしてくれよう?


「そして、ここに忍び込んで、貴女に要求するのは一つ――」


 其処は疑ってない。

 あの死合いの中あそこで手を抜く男ではない。

 あの時、私は恐怖し恋焦がれた。


 刃と魔力を交え全霊で挑んだからこそ。――わかる。


「いえ、続きはベッドの中でしましょ~」

「――停戦条約を…え? ちょっと待て? 何故脱ぐ?

 手を離せって痛い、痛い!? 何、その握力!!ちょ下を履け下を――」


 ベッドに押し倒した彼の瞳に移る私は劣情一色だ。

 

 真に迫る分身を創り、連戦に次ぐ連戦。

 彼も疲労しているのだろう。


 今ならヤレル。

 

 そう思うと異様に体が火照る。

 羞恥と屈辱は無い。

 

 ただ歓喜と期待で体は内震え、気が高まりすぎて服の下は大洪水になっている。

 気が付いたら自分から激しく彼を求め舌をからめ合い、求めあっていた。


 戦場で愛し合った仲(殺し合った仲)だ。


 数時間前の 逢瀬(くどいが決闘)を思い出し背筋がぞくぞくする。

 寝室のテラスからさす月明かりの元、今度は部隊が戦場からベッドの上に変わる。

 

 長き一日の終わりを締めくくる最後の闘いが行われた。

 

詳しくはノクターンへんで(嘘)

極限の吊り橋効果、保存本能。

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