表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界攻略のススメ  作者: 渡久地 耕助
蒼炎の七英雄

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/238

帝国兵 カリサの報告

2014/10/15 加筆修正。

 ~魔の森~ 

 

 ガリアと旧ゲルマニアの国境沿いに存在するダンジョン。

 この世界では森は魔力の吹き溜まりである事が多く、魔物が沸き易い。

 

 植物は肉食に、虫は肥大化、知性が向上。

 そして森自体が意思を持ち魔物を引き寄せ、人を引き寄せ、養分にする。

 

 魔の森の魔物はすべて、森の使い魔。

 入った獲物は逃さない迷いの森。

 

 この森を越えてガリア、ゲルマニア間の国境を越えるには空路か海路を使うしかない。

 陸路では迂回せざるを得ない。

 

 しかし人の命を求め、両国に向かって徐々に進行しつつあった魔の森は突如、消失する事になる。

 

 太陽と闇

 ―両極に位置する最強の英雄達との戦いによって。  

 

 ――ガリア国内魔物学大全、魔の森の項より抜粋

 

 ◆◆◆◆◆

 

 ~戦乙女竜騎士隊 隊員カリサ 視点~

 

 私は後に七英雄と呼ばれる者たちを三名、この目で見たことがある。

 

 一人は我らが仕えるカグヤ皇帝。

 武術、頭脳、美貌、全てが神々の域に到達する戦女神。

 

 二人目が属州ルーシの英雄 ゴウタロウ 

 強靭な肉体に武術を身につけるだけでなく異世界の技術の粋を集めた鎧を纏う強大な英雄。

 

 三人目の英雄

 彼は名前を出すのも思い出すのも憚れる。

 

 彼と遭遇し私が今、生きているのは奇跡としか思えない。

 個人の戦闘力より、人材育成力、装備の調達力が危険視されていた。 

 彼に鍛えられたれば、只の村人は勇者に、鈍らの剣は魔剣へと変わる。

 

 伝説を量産する英雄。

 ロマリアからは魔王の再来、復活とまで呼ばれた七英雄。

 

 今でもあの時の光景に肩が震える。

 しかし、私は過去を克服しなければならない。

 任務を遂行しなければならない。

 

 だから、私は語る。

 あの、国境線での戦いを。 

 

 ……死神との邂逅を。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 ガリアに七人目の異邦人が現れたらしい。

 それも各国が抱えている異邦人と同じく武芸に秀でた人物らしい。

 

 近年、突如現れた異邦人。

 強力な戦闘能力と技能を有する彼らは瞬く間に各国で頭角を現し、英雄として君臨した。

 

 千年前にも異邦人は現れたらしい。

 当時、強大な英知、武勇を持ち、勇者と魔王に匹敵する力を持ったという。 

 

 そして千年後、七人目が頭角を現した事から彼ら異邦人を便宜上、【七英雄】と呼ぶ事になる。

 

 ガリアの七英雄は出現と同時に、当時、起きていた内乱を鎮圧。

 しかし中立を謳っていたガリアの宰相が西の王国連邦と通じていた事が露見した。

 

 相互不干渉条約を破ったという詭弁でガリアを攻め込む大義名分が東を支配する帝国に出来る。

 

 わが国は既に二人、七英雄を有している。

 西には三人いる為、残りの二人の七英雄は確保しておきたい。

 

 人形師は性格に難がある為、仲間に引き込むのは至難。

 その点、新しく現れた英雄はガリアに属している訳ではなく、国と距離をとっているとの情報を入手。

 

 何でも戦争を嫌う性格らしく、教職に就こうとしているらしい。

 

 軟弱な男だ。

 実力主義の結果、女系国家となった帝国軍人故だろうか。

 私もその例に漏れず、未だ見ぬ男の英雄を侮蔑した。

 

 しかし皇帝陛下、将軍達はそうは思わなかったらしい。

 

 彼の引渡しをガリアに要求。

 しかしガリアはこれを拒否。

 国属では無い為、当然の返答だったが、相互不干渉を破った西の王国連邦とガリアに対し、宣戦布告の大義名分を帝国は得ることが出来る。

 

 

 下された指令はガリアの英雄、アキラ・ワタナベを捕縛ないし討伐任務。

 大剣豪アリア将軍と私を含めた直属部隊竜騎士総勢三十名。

 

 更にルーシの七英雄鉄人ゴウタロウを加えた威力偵察部隊をガリアに派遣される事になる。

 

 そして 魔の森から発生する濃霧に紛れて上空から国境の砦を奇襲。

 ガリアの英雄を誘き出し、捕獲、ないし偵察を行う。

 

 そして私は死神と邂逅する事になる。

 

 ◆◆◆◆◆  

 

 行軍中、突如先行していた鉄人とアリア将軍が私たちを手で制する。

 鉄人が上空から砦の前に降り立ち、誰も居ない筈の虚空を睨みつける。

 その行動の理由は直ぐにわかった。

 

「待ってましたよ鈴木さん。」

 

 虚空から突如、黒服に白衣を着た男が現れた。

 恐ろしく完成度の高いステルス。

 アリア様はその長年の経験則から来る直感でルーシの英雄は駆動鎧の性能で見破ったらしい。

 精鋭である筈の私たちの中で彼の存在を察知できたものは居なかった。

 

 ―ガリアの七英雄

 

 誰もがその男の正体に築き、姿を現した男を注視し、臨戦態勢を取る。

 

 ……鷹の目、鷲鼻の猛禽類を思わせる鋭い印象を持つ男と聞いていたが、

 目の前の男は糸目の様に目を細め、笑顔で穏やかな印象を与える。

 前情報がなければこの男を警戒しなかったかもしれないような男だ。

 

 だが、今さっきこの男の驚異的なステルス能力を見せた。

 巨像、不死者を一撃で狩る攻撃力を持つと聞く。

 

 死神の二つ名を冠した英雄の底知れない実力を秘めている筈なのに。

 何も感じ取ることが出来ない。

 

 その事実がこの男の不気味さを際立たせていた。

 

「其れにこんなに美しい美女、美少女を連れて……眼福だね~」

 

 おどけた様に肩をすくめる死神だが、この男はさっきから隙が全く見せない。

 一挙手一投足全ての挙動を観察しても、意味がない。

 

 正に一寸先、闇。

 下手に動けば命が無い。

 そう、本能がささやき続ける。

 

『ガリアの英雄と相対したら交戦はせず情報収集に徹し、情報を持ち帰ることを第一としなさい』

 

 カグヤ様のその言葉が思い出される。

 その言葉に心を奮い立たせ、可能な限り情報を集め【透視】で能力値、スキル、武具を観察する。

 

 しかし見破れない。

 まるで視界にいる男は存在しないのだとスキルは判定し、脳に伝える。

 

「そんな……透視をも幻惑するなんて」

 

 恐怖からそんな弱音が紡がれる。

 姿を見せてなお、透視、鑑定、千里眼、洞察眼を幻惑しているのだ。

 

 そうこうしている間に交渉は決裂したようだ。

 鉄人が最後通牒をし、応答を求める。

 

「それで、返答はいかに?」

「だが、断る。」

 

 ソレが合図、確保、捕縛から討伐に変更。

 スキルでの情報収集が聞かない以上、武をもってこの男の力を測る。

 一斉に飛竜がブレスを吐き、騎乗している竜騎士が魔法弾を一斉に目標に向けて飛ばす!

 

 それと同時に死神の影、虚空が歪んだ。

 

 大量の宝剣、聖剣、魔剣が陰から滲み出るように召喚され私たちに向かって射出された。

 射出された剣がブレスを引き裂き、魔法を掻き消しながら私たちのほうへ向かって飛んでいく。

 

 閃光と化した剣は飛竜に突き刺さって行き、

 力を亡くしたドラゴンと仲間が次々地面に堕ちていく…S暗転

 落ちていく中、直ぐ様、体制を立て直すため手綱を握る者。

 飛び降りる者。

 転移石で脱出を試みる者

 しかしそのすべては地面に激突することも、地面に無事、降り立つ事も叶わなかった。

 

 最後に見た光景は地面と龍の影から伸びる黒い手。

 それが何本が次々に竜騎士を襲いかかる光景。

 

 仲間の悲鳴が聞こえ、騎竜の断末魔が鼓膜を打つ。

 アリア様が叫びながら黒い手を大剣で切り裂き、私に向かって手を伸ばそうとする姿。

 そしてこの惨劇を引き起こした男。

 

 死神。

 あらゆる命を刈り取る存在。

 世界を相手取っても勝てるであろう存在。

 

 だけど私は絶望しなかった。 

 希望を知っていたから。

 

 死神に勝てるであろう女神に心当たりがあったから。

 

「――カグヤ様」

 

 残された希望を胸に抱きながら、私の意識は闇に堕ちた。

 この戦いは我々の勝利だという確信を持って。

 

 ~カリサ視点 了 ~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ