期待の新人
狩猟祭2日目。昼の部(新人戦)
二日目になると、活性化の影響はどんどん強くなる。
水魔法ニモマケズ
風魔法ニモマケズ
土魔法ニモ火魔法ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナホネヲモチ
欲ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテイル
中分省略
ヒトリノトキスブリヲシ
カッセイカノトキハ生前ヨリ活発にウゴキ
ミンナニチートトヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフマモノニ
ワタシハナリタイ
こウいう風に頑強で悟った感じの骸骨兵まで出てくる。
「何で、昼間から吸血鬼や幽霊がでるんだ! 真祖かよ!? 太陽仕事しろ!」
「これだからガリアは!」
「魔力中和用の聖水がきれるぞ、補給補給!」
「仮装した幽霊の癖に!」
「おい、この紫の骸骨兵の剣術がエグい! そこらの兵士のレベルじゃないぞ!」
「つーか、剣も魔法も効かないんだけど!?」
「サウイフマモノニ、ワタシハナリタイ」
「ウワァァァァァアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!! 」
「紫色に視認できるほどの魔力持ち!? 外だと指揮官や、名付きだ!! 後衛! 早く援護射撃しろ」
修練者や他国の冒険者、新兵は仮装した魔物に悪戦苦闘していた。
活性化の影響で魔物は視認できるほどに、魔力を帯びている。
通常の何倍もの速度で強くなるが、至近距離で倒さなければ吸収率は悪い。
故に魔術師も射撃武器を持つ者は近接武器に持ち帰るか、中距離で戦う必要があった。
しかし、例外も存在する。
「おい、回復職の娘!?、なんで最前線にいるんだ、下がれ!!」
「ご心配なく……」
士官学校の軍服に腕章、神官服のフードを被った少女だった。
衛生兵、従軍看護師と一目でわかる装いだったが、一つだけ他とは異なる装備をしていた。
錫杖でも、メイスも持っていない。
血の様に赤い布が拳に巻きつけられていた。
「主よ、拳を解禁します。」
祈りをささげ、大きく息を吸う。
魔物と悪霊が殺到する鉄火場に不釣り合いな祈りを捧げる光景。
しかし、数舜後に起こるであろう惨劇の犠牲者は少女では無かった。
「す~~~~~………女神の吐息・黄金狂時代!!」
金色の光の奔流が夜闇を照らし、喋る骸骨兵を周囲の雑魚諸共、砕いた。
少女の体は金色に光りだし、その余波だけで悪霊は姿を消し飛ばされる。
だが、魔物も悪霊も逃げず、吸い寄せられる。
そして光へと消えていく。
少女へと躍りかかった魔物は全て物理的に浄化された。
霧散する魔力は神官服を来た少女が息をする度に吸い寄せられ、更に神々しい後光が少女に差す。
「これが、ルー様の御業、神の鉄槌です。」
本人が聴いたら、文字通り光の速度で首を左右に振るであろう荒業が繰り出された。
「ふふふ、彷徨える皆さんを極楽浄土へ送って差し上げますね。」
可愛らしさと攻撃力の禍々しさが反比例し過ぎる少女の所業にドン引きだった。
「ツエエ~~あれで見習い僧侶かよ、勇者や神殿騎士の実力はもっと強いのか?」
「いや、加護持ちでもロマリアは、あそこまで人間やめないから」
「あの撲殺神父の所の……」
「マジすか、あの伝説のガリアの二枚看板、不良神父!? マグドレア!?」
「娘がいたのかよ!」
近隣諸国の未来ある冒険者、兵士達が畏怖を抱く。
そし噂が錯綜する。
【マグドレアヤバい】
「何か?」
金色の光を纏った少女が振り返ると半数の未来ある若者たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。
「なんでもありません!」
「あ、あっちで魔物の声が!」
「俺は給水に戻らないと!」
そう、未来へと逃げさった。
「……さ、さ~て次の迷える魂を救済しないと」
クレアは、鈍感ではない。
自分のおかしさを一層、自覚した。
「まだ、何かを為したわけでは無いんです。何を感傷的になっているのでしょうか。おバカですね。」
浄化され、亡者も魔物も一さち近づけない拳の形をしたクレーター。
後に、聖拳公園と呼ばれる事になるクレーター中心部で聖女は一人、静かに泣いた。
そして、その感情の矛先の向ける先を彼女は思い出し、駆けだした。
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真名 クレア・マグドレア
クラス 聖女(真)
出身 ガリア・トゥールーズ
属性 光・聖
王立学園 序列 10位(暫定)
専用武器 聖骸布のバンテージ
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「さぁ、鉄拳聖裁の時間ですよ。」
殴り穿つ鉄拳の聖女 麗参!




