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異世界攻略のススメ  作者: 渡久地 耕助
狩猟祭りは甘い香り。

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蒼の奇跡

 「その陣形を攻略する」


 最初に狙うのは頑健な聖人、棍棒使いだ。

 お馴染み縮地を使い、全員の意識の空白の瞬間に動いて急接近。

 初撃は意識の空白を狙って胴体を拳で殴りつける。


 これまでの授業(せんとう)で俺の攻撃に死なない程度に魔改造した。

 以前より頑健になり大抵の攻撃にも、毒物も通じない肉体に最高峰の支援魔法までかけられている。


 だが、反撃できない。

 俺のターンは終わらない!


裏技アウタースキル――」


 最も地味で、最も普及された裏技がある。

 現代では基本技術とされる技。

 基本にして最大の奥義。


連撃コンボ


 技と技を繋げる攻撃の型。

 反撃を許さない攻撃術。

 源呼吸による永久機関、無拍子による連続攻撃で延々と殴り続ける事が出来る。


 裏技(アウタースキル)連撃(コンボ)

「俺はお前がK.Oするまで殴るのを辞めない!」


 無論、手加減はしている。

 意識を刈り取っただけだ。

 死にはしないだろう。

 この程度では、回復魔法を受けて起き上がる。

 そして、これは序章に過ぎない、真の攻略方法、本命はここだ!


「【混沌の沼】」


 地面に不活性元素で満たした沼を作り出し、連撃で沈んだ聖者が力なく沈んでいく。


「そんな!?」

 即座に魔法による援護が飛ぶが、効果は無い。

 力なく、魔力が霧散され形を崩す。


「五代元素を不活性化させ、飽和させた泥だ。魔法で支援を掛けるなら魔法が効かない様にすればいい。」


 一度、沈んだ狐仮面(けいけんしゃ)がウンウンと頷く。

 何物にもならない泥の中では、魔力に頼っての脱出、救出はできない。



 次々と聖槍使い、聖剣使いも連撃で仕留め沼へと放り込む。


「捕獲完了」


 これで、前衛と後衛を物理的に切り離した。

 支援魔法、回復魔法の無効化地帯を作り出し、そこへ拘束する。


「前衛、攻略完了……次!」


 そう、まだ終わりではない。

 あと6人+α


 対七英雄陣形には、前衛が崩すだけでは無力化できない。

 そんな半端な術を俺は教えない。


「陣形を切り替えます! 一列縦隊!!」


 戦術眼に優れているであろう、旗持ちの聖女の声で杖持ちが俺に砲撃耐性を録り、その背中に手を向け、魔力、気を注ぎ込み始める。


 この戦術は前衛が敗れても散開しない。

 並列に繋げた演算機の様に魔力で接続された術者達で行う

 一人の術者に魔力を集中しての砲撃魔法。

 前衛に回す魔力が減った事で一人の砲撃手に魔力を注ぎ、禁止魔法、大魔法級の砲撃を行う戦術。


 先程までの継戦術式なら、こちらは決戦陣形。

 最大出力の魔術を全員で打つこれまた基礎にして最大術。

 陣を汲んで一斉射撃を行うのではなく、異なる人間が、交響曲を歌い、演奏するように詠唱し放つ合成魔法。


 通常なら血のにじむ訓練をして初めて発動する高等魔法技術。

 しかし、生を受けた時から、調整された聖人の素体ならではの詠唱式がそれを可能にした。


 俺に向けられた杖の先に太陽の様に光り輝く光玉が形成され、射出されようとしている。

 広範囲に破壊力を持った光の奔流が巻き起こるだろう。

 転移で逃げようにも結界を張っているだろうし、射線上の被害を考え迎え撃つ事を選択。



「ふん、その程度の魔法軽く、無効化して……して…」

「受けてみなさい、神の慈悲を、これこそ、ルー様の、御……業?」


 両者の言葉尻りが弱まっていく。

 うん、余計なのが一人いたね。

 魔力供給減に可笑しいのがいたよね~


 だって杖の先に見覚えのある蒼い炎玉が顕現してんだもん!


「き、奇跡が起きました?」

「確かに記録上、一番有効な炎だけど」

「え、いいの? 異教の神の御業が顕現してるんですけど。」

「ち、違います! ルー様は光、すなわち太陽、太陽の焔が顕現したのです。」

「え、でも蒼いよ?」

「ひ、光は七色あると聞きます、私たちでは七分の一という事でしょう!」

「不思議ですね~」←元凶


 戸惑う信者、すっとぼける元凶。


「い、今が好機です! 幸いあの沼のお陰で同胞に被害はいきません! 発射!!」

 旗持ち聖女の声で揺らいだ信仰心を何とか持ち直し、勢いのまま射出してくる。

 青白い球体がとんでもない熱量と速度で射出される。

 炎の魔法は魔力を注ぎ込めば注ぎ込むほど熱量と規模が大きくなる。


 臨界者6人分の魔力に規格外の馬鹿の魔力で上書きされた青炎の魔法はここら一体を焼き尽くすだろう。


 結界を引いた聖人、沼に落ちた聖人は何とか耐えるだろう

 射線上の俺達の命は不味いがね。


「あ、主殿、ここ、これは不味いのでは!?」


 古めかしい言葉をかなぐり捨てて慌てるテレサの悲鳴を背に俺は迎撃態勢をとりながら、内心ため息をつく。


 あ~彼女たちにも仕掛けた魔改造の弊害だな、カグヤの魔力供給に耐える容量(キャパ)を得て蒼炎を出すレベルまで行ったと。


 だがな?


「その蒼炎は攻略した・・・・)。」

 

 右手で近くまで飛んできた蒼炎を払い打ち消した。


「同じ技が通じるわけないだろ? 既に攻略済みだ。」


「お、おお~」

「そ、そんな」

「あらあら~」


 テレサの感嘆の声

 聖女の絶望の声

 狐仮面の嬉しそうな声


 三種三様の声と感情を残し、蒼の奇跡は潰えた。


 希望が砕かれ絶望に押しつぶされる聖人達。

 魔力を出し尽くし、当初の予定だったであろ大精霊(ナミ)の封印術を使う魔力も無いだろう。

 彼女たちは選択を誤った。

 

 もう、やり直す事も撤退も叶わない。

 彼女たちに勝機は無い。


 しかし、敬虔な信徒は異教の徒であっても神は見捨てないのか

 再び新入りの狐仮面が前に出る。


「先輩方~、ここは私が引き受けます~」

「や、やめなさい後輩を残しておめおめと逃げれません。動けるだけなら貴女が……」


 魔力切れで膝から崩れながらも身を案じる聖女。

 無力感から、涙を流しつつも、それでも立ち上がろうとする者。

 絶望の中、諦めないのは彼等の信仰か、良心は本物だろう。

 彼女たちを造り物の偽者とは誰にも言わせない。


 うん感動的な場面だった。

 魔力切れの原因が、自称新入りだと伝えるのが憚れる位だ。

 知らぬが仏、言わぬが花だな~ウン。

 素直に感動できない自分の立場が憎い。


 いくつかの言葉を交わし、元凶が俺に向き直る。


 蒼焔を真正面から攻略した事で歌うような声で狐仮面が太刀を抜き放つ。

 女装野郎と仮装少女が向かい合う。


 女に変化した俺の正体を見破れるくせに、後ろの狐の正体を見破れない。

 慧眼なのか、節穴なのか判断に困る聖人達が見守る中、最後の授業が終わろうとしていた。


「狐火の聖女~麗参~」


 ラスボスより強いシリアスをシリアルに変える仮装女が立ち塞がった。

 政務を放り出して仮装までして外遊しているという正体と背景を知らなければ聖女の様だった。 

 宰相召喚したら一発で決着が着くんだろうな~


 

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