戦士村の狼
お久しぶりです。
お待たせしました!!
――クルトの戦士以外の武器、兵器の所持、製造、持ち込みを固く禁ずる。
――是の掟を守らぬ者、人に非ず魔物と同列と扱う。
上記、ガリア王国憲法によりガリア王国の軍に属さない者。
武器に関する許可証を持たない者の武器に関する権限を制限、施設の利用を固く禁じます。
その為、狩猟祭参加者は期間中「狩猟許可証」を発行し携帯してください。
狩猟場、戦士村、開拓村での武器の所持、製造、持ち込みを許可し村内の施設をご利用できます。
街内の出入り、施設をご利用する際はお近くの軍の屯所、ギルド施設で武装解除に応じて下さい。
狩猟する際、狩場の占領、魔物の横取りを禁じます。
皆、仲良く狩りをしましょう。
これらを守れないの者は人間に仇名す魔物・鬼と見なし、狩猟対象としますのでお気をつけ下さい。
~狩猟祭実行委員長 【戦士長】リィーン・ド・マイヤールより~
ー戦士村の掟より抜粋ー
◆◆◆◆◆
~ガリア郊外 戦士村~
「同じ、賑わう祭りでもここの空気は違うなぁ」
「確かに甘い空気や匂いはしませんね~ 血や鉄の匂いといいますか。」
「わらわ的には菓子も血も味わえるから何方でもいけるがの。」
追っ手を撒いて一足先にガリア郊外にある狩猟祭りの会場、通称「戦士村」にやってきた。
大天幕が建てられ、それを囲むように天幕や馬車、屋台が立ち並んでいる。
元いた世界のサーカスを彷彿とする。
違うのは同じ芸人でも武芸者が多いところだ。
眼を使わずとも肌で猛者だと感じ取れる。
あ、アニとガコライ発見!
露店でアクセサリーを物色してるようだ。
……デートか?
てっきりアニと一緒にスイーツ巡りにでもいってると思ったのに以外だな。
邪魔しちゃ悪いので気づかない振りして別方向へ向かう。
「修練者だけでなく、神官も来ているのぉ?」
「え?師父が来てるの?」
「いや撲殺の…では無い、流浪の神官団じゃ。」
流浪の神官団…… 確か修練者と同じく布教せず、自身の治療技術の向上の為に各国を巡る十字教の団体。
簡単にいえば異世界版、国境なき医師団。
他より少々大きい天幕を張って仮設診療所には既に行列ができている。
未だ、魔物の襲撃は無いが、血の気のを多い人間通しの小競り合いや野試合での怪我人も多い。
彼らは活動費として布施と称して少額の医療費で白魔法をかけている。
傷病者や悪霊が出てくる狩猟祭りにおいて治癒術士と対魔術師は引っ張りだこだろう。
後で、俺も寄付というか布施でもしにいくか。
いや、やめとこう。
魔王、邪神、吸血鬼の教会の天敵、トップスリーが寄付しに来るとかどんな珍百景だ。
「平気か?」
「あの程度の小童共に払われるほど耄碌しとらん。」
「ふふ、テレサちゃんを祓うには勇者や聖女が必要ですね。」
確かにテレサを祓うには最低限それくらい必要だな。
両方ともガリアに来てるし同じ学校の級友だけどね。
「どこの魔王だよ」
「いや女神の敵に言われたくないの。」
「ルーの敵じゃないから、めっちゃ親しいから。」
後、魔王を名乗った覚えも恨まれる謂れもない。
最近、赴任した体術教師しかり、転校してきたシスターの視線が痛いんだよ。
「馴れ馴れしいというか、いい仲だと知れたら、男だでは済まぬ。世界中が怒り狂うが?」
「ある意味、神話級の魔物大暴走が起きそうですね~ といいますか…聖戦?」
「………はい、返す言葉もありません。」
すいません。ものっそい恨まれる覚えありました。
「うむ、今日の主様は素直でよろしいぞ」
「何時もは源呼吸の所為か、賢者様(笑)ですからね~……夜は狼ですけど」
――ビシリ!!
戦士村の空気が凍った。
それも当然だろう、何方も目を引く美女、美少女。
戦いに来てる人たちの前で両手に花は不味い。
でも、沸点が低すぎやしませんか? おい!!
先ほどまで女の香りなど要らぬ!
血と酒の香りがあれば、それでいいって空気だったじゃないですかヤダー。
「狼? ならば狩らねばなるまいて」
「いやいや、見たところ相手は美女を食い荒らす凶暴な狼だ。ここは俺に任せろ」
「こーろーすー。狼は全て、こーろーすー。」
「狼?ならばつるし上げねば。」
うん、狼を狩るという狩猟祭りの掟に乗っ取って俺を葬る気満々だ。
男はどこ行っても同じだな。
「俺は観光客です。ケモ耳はしてるけど是は街での仮装――」
「狼が兎を騙るか!! 我の目は誤魔化せんぞ!!」
「俺の見たところ、物腰、息遣いからして強そうだ。あと狡猾そうでもあるな。」
「こ~ろ~~~す~~乙女の秘密の花園を知っている者はこ~ろ~す。」
……花園っていうか食人花の庭園だけどな。
それにしても息遣いか。
一人目は兎も角、俺の息を看破してる二人目の奴はデキル。
三人目? 無敵のイザナミさん。何とかしてください。
「……ガコライ? あの狼」
「ん? 肉はさっき食ったばかりだろ?」
そこで露天での買い物帰りのガコライとアニが通りかかる。
「……お肉はもういい。仲間になりたそうな目で狼がこっち見てる。」
「あの量で虫抑え……というかあの狼の覆面?」
ガコライも俺に気付いた。
仮装してても俺だとすぐに察したアニとガコライはやはり、この中でも群を抜いてるな。
視線で助けを求める。
あまり、祭りに水を差したくないので穏便にいきたい。
俺が参加してると分かると、騒ぎが起きるし追っ手が戦死村に集まる。
「……あ~助けは不要だ、あの狼は一匹狼だから。」
マイフレンドは今日も冷たい。
どうやらガコライは親友より彼女をとるタイプらしい。
というか人をボッチか痛い奴みたいにいうんじゃねえよ。
いや……そもそも姓が狩人な奴が狼を助ける筈もないか。
ならば、お望み通り一人でやってやんよ。
魔王はいつも一人で多数で攻めてくる勇者を返り討ちにするものだ。
悲しそうに立ち去るのを止め、兎どもに相対する事にした。
「くくく、私が狼か……狩人気取りの三匹の子豚が……」
源呼吸で大きく息を吸い込み、自分では迫真の演技で禍々しい(多分)魔力と威圧感を発してリクエストに応えてやった。
俺の殺気と魔力と吐息に充てられた哀れな子豚の末路を簡潔に語るとすると
煉瓦の家も無いこの村で吹き飛ばされる以外の末路など無い。
煉瓦の家だと、焼け死ぬところだったがな!
『カグヤの出現のフラグが立ちました。』
もはや形骸化した勇者のスキルが、警鐘を鳴らす。
どうやら旗作成はこの状況でカグヤと遭遇する=死と判定したようだ。
俺のバカ!
ナミ( ;∀;)「やめて! 蒼炎の戦乙女の特殊能力で、アキラが焼き払われたら、アキラの魂まで燃え尽きちゃう!!お願い、死なないでアキラ! あなたが今ここで倒れたら、マリアちゃんや私との約束はどうなっちゃうの? 」
ナミ(*'▽')「ライフはまだ残ってる。これを耐えれば、カグヤに勝てるんだから!」
ナミ( ..)φメモメモ「次回、「アキラ死す」。攻略開始!」
アキラ(;'∀')ノシ「……」




