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異世界攻略のススメ  作者: 渡久地 耕助
狩猟祭りは甘い香り。

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狩猟祭

新章開幕


 狩猟祭り 


 ガリアで起こる祭典で後に起きる武具大会の準備期間でもある。

 毎年、秋の収穫期に起きる魔物の【活性化】で発生する魔物を狩る祭典である。


 さてこの活性化だが毎年ガリアで起きる魔物の災害である。


 起源は所説あるが有力視されるのは二つ。


 死都に住まう真祖の魔力に当てられた魔物の狂暴化。

 愛する者を奪われた【大精霊】の無念と怒りに魔物が同調し狂暴化。


 つまり「テレサ」か「ナミ」のヒステリーが原因ではないかと言われてる。

 当の本人たちは否定しているが、彼女らが【完全魔物化】【完全精霊化】した時期と一致している。

 その為、国外では圧倒的に支持されてるし、ガリア国民も陰で支持している。


 天災か人災かは置いて置くとして……災害である。

 魔物の集団の狂暴化は一大事である。


 例を挙げるなら闇の女神の受胎で起きる【魔物大侵攻】。 

 驕り高ぶった人類の罪を清算するように狂暴化した闇の眷属が世界中で狂暴化。

 人畜を喰らいつくし、七日七晩で人畜と文明を破壊尽くす大災厄。


 (やはり、ヒステリー説が有力説)


 【活性化】は世界規模では無く、国家規模で発生する。


 【魔物大侵攻】が世界大戦なら【活性化】は内戦である。


 本来なら国が荒れる大災害である。

 魔物や死霊は強烈な飢餓感に襲われ【紫色気】を纏って集団で人畜を襲いだす。 

 蝗の大群の様に、その災害が通った後は何も残らない。


 本来なら(・・・・)


 ガリアに住む国民はクルト民族。

 国民全員が魔物や精霊の因子を大なり小なり内包している。


 その為、【活性化】の影響で【因子】が彼らを好戦的にする。

 好戦的になった彼らの思考はこうだ。


 ――狂暴化した魔物が群れを成して襲ってくる?

 ――しかも決まった時期、場所から?

 ――世界規模では無く、国家規模?

 ――鴨が葱を背負って来たな。


 彼らは活性化を災害として認識しなかった。

 逆に収穫期、祭典として認識した。


 真祖の怒りというなら、その発散に付き合おう。

 女神の嘆きとうなら、血を持って慰めよう。 


 幸い出現時期、出現場所は決まっている。


 その情報こそが真祖の人間性だ、女神の慈悲だと侵攻し、災害を試練や祭典として扱う。


 情報がそろい万全に対策手段が取れる災害程、御し易いものは無い。

 昂った因子を発散する標的として魔物はうってつけだ。 


 魔物の発生源を見つけては人が集まり狩りつくしては新たな魔物を求めて移動する。

 そんなサイクルが繰り返され適度な狩場には集落から街へと発展していく。

 若い冒険者と新兵は強力な兵士へと成長。

 彼が落とす金や魔物の素材を狙って観光業と武具店、興業による経済は発展。


 国内総生産(G・D・P)国内総経験値(G・D・E)の向上。

 経済力と軍事力を兼ね備えた強国へとなった。


 狂暴化した魔物の末路は、より強力な魔物(にんげん)の血となり糧となった。

 結果、ガリアに生きた(・・・)魔物は消えた。


 例外は国境線にあるダンジョンが国外の魔物を輸入する国境線のダンジョンのみ。

 しかし魔物は死んで尚、この世に留まり続けた。


 実に恐ろしき女の執念。

 そして死に絶えた霊と女を慰める為、狩猟祭りの形が少しだけ変わる事になる。


 死霊の魔物が現れた翌年。


 狩猟祭は血生臭い匂いが薄れ、女性が喜びそうな甘いお菓子の匂いが漂った。

 武骨な皮鎧や甲冑を着けた若者が少なくなり、魔物や精霊、魔女をモチーフにした可愛い恰好が増えた。


 酒場以外に喫茶店が出来た。

 詩人も冒険活劇以外に、恋愛の詩を歌いだした。


 ロマリアに異端とされた女性、つまり魔女を多く迎えるようになった。

 死者を、女性を慰め、楽しませる祭りへと変わっていった。


 つまり、狩猟祭はハロウィンとなった。 


 結果、魔物は当然の様に数が増え、経験値は増加するのは変わったが。

 驚くほどに狂暴性が消えた。


 そして祭りには歌劇に通う半透明の巫女服の女性

 屋台巡りをする吸血鬼の恰好をした女の子


 二人がそれぞれ菓子を食べながら祭りの会場を練り歩く姿が見かけるようになったという。


 ◆◆◆◆◆


 ~ガリア王国 王都郊外~ 


 俺は祭りの入り口で配られているパンフを読みながら呆れる。

 この国の歴史って血生臭いというか国民も好戦的だけど情も深い国だな。


 俺の今の恰好は死神の装束を思わせる黒づくめだ。

 これで仮装が成り立つのだから楽でいい。


 街を練り歩きつつもパンフの感想を述べる。


「……歌劇通の巫女の幽霊に、屋台通の吸血鬼の女の子…ねぇ」

「い、息抜きって大切ですよね~その点、お祭りっていいですよね~」

「そ、そうじゃ!薄暗い日陰に住んでいると、鬱屈するし年に一度は自由に街を歩きたいのじゃ!」


 町中に甘いお菓子の匂いと幽霊や魔物、魔女の恰好をした子供や冒険者が溢れる。


 血生臭い祭典とされていた狩猟祭りとは趣が違う。

 女子供が喜びそうな祭りだ。

 ロマリアは聖人を祝う祭りで厳かな式典だったけど。

 ガリアは式典ではなくお祭りだ。


「魔物が結果的に全滅する程、影響を受ける魔力、呪いって」


 パンフを読み上げる度に狼狽する二人。


「こ、この国の人たちって好戦的ですよね~魔物も死んでも死にきれないですよね~」

「ま、全くですね。未練がましいにも程があるのじゃ。」


 盛大なブーメランをかましながら話題を逸らそうと必死の同行者。

 この狩猟祭りの主役でもある大精霊(ナミ)真祖(テレサ)である。


 ロマリアの対策というか、陰での工作も終わり、帰ってきた二人を労う為に狩猟祭りに繰り出したのだが、祭りの起源が書かれたパンフを読んでいくと焦りだす二人。


 死都にいたテレサは兎も角、千年間黄泉の入り口に封印されてたであろうナミが生霊、思念体の状態で街に繰り出していたのに驚きだ。


 今でこそ俺の両隣で墓穴を掘り続ける変わいい美少女だが【活性化】を引き起こす程の魔力を持った【完全魔物化】と【完全精霊化】を行った千年前の猛者だ。


 その強さや執念には恐れより呆れの方が強い。

 何せ、ご機嫌取りで血生臭さが消え、ここまで軟化するのだ。

 

 まぁその事で彼女達を弄るのはこの辺りでいいだろう。


 死して尚、未練がましい女性筆頭である二人だが今は未練も無く、理性的だ。

 

 何より幸せな日々を過ごしている。

 間違ってもガリアに害を為そうとはしないだろう。


 魔物や精霊となってしまった悲劇の女性を慰めよう。

 そんな国民の願いや思いやりが叶ったのか、活性化の魔物は狂暴性は薄れた。

 むしろ強さの割に経験値が美味しい狩場になったという。


 真祖や女神が街で正体を隠して祭りに参加できるように国民全員で魔物化や精霊化のスキルをモチーフにした仮装が功を奏し、二人の機嫌が反映されたかのような景色ですらある。


 先祖の敬意と千年前の被害者である二人を恨まず、祭りに参加できるようにしたガリア国民の優しさと粋な計らいに、お兄さん泣きそうです。


「屋台でお菓子の食べ歩きもいいけど、少し歩き疲れたな。喫茶店でも少し休もうか?」


 嘘だ。

 俺に疲れなんて感じない。

 あるのは後ろでちょっと委縮してる二人に笑顔を取り戻して欲しいからだ。


 それがガリアに住む人達の願いであり、俺の願いでもある。 


 俺が怒っておらず、笑顔を見せた事でぱぁっと顔を輝かせる二人。

 其処に未練や恨み辛みは無く、喜色が浮かんでいる。


「そ、そうですね。私も少し喉乾いてます!私、いい歌劇団を知っているんです。アキラもきっと喜びますよ!」

「賛成! あ、あのお店には良い、トマトジュースが取り扱っておる。主様におすすめじゃぞ!」


 長年、このお祭りに参加してきたと語るに落ちる二人だが、追及はしない。

 

 息抜きは大切だ。

 そして、恨みや憎しみを抱かずに思いやりで災害を祭りへと変えたガリア国民に感謝し敬意を表する。


 この調子なら今年も魔物は活性化はしても狂暴になる事は無いだろう。

 なら、俺はテレサとナミを連れて祭りを楽しむだけだ。


 そして彼女たちの笑顔を見て決意を新たにする。


 この平和な世界が続くように。

 この二人の笑顔を二度と曇らせない為にも俺は戦う。


 千年前の悲劇は二度と繰り返さない。


 そして、1000年目の狩猟祭が開催された。

お待たせしました。


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