召喚魔法
ユニーク200万突破!
応援、感謝です。
-アキラ-
朝食が終わり、家庭教師として授業の時間が始まる。
俺はこの異世界にきて生きる為、帰る為にあらゆる技術、知識を収集した。
孤児院の子ども達や士官候補生、王族の英才教育を施す程度には十分だ。
「さて、召喚魔法…それも禁止魔法として扱われている分野に触れてみようか?」
「……熟練度は?」
「熟練度3…いや熟練度2かな?」
これからクラリスに教えるのは聖級の禁止魔法【召喚】。
スキルレベルは3。
――ここでさらっとおさらい。
スキルの等級、熟練度について
この世界ではスキルとは資格や免許みたいな物だ。
評価基準は等級とスキルレベル。
等級は習得した技の量。
技の量と難易度を数値化し、合計値で初級、中級、上級、聖級、神級(災害級)の5段階に分ける。
熟練度は技の質。
単純に強度、威力を熟練度1~5の5段階で評価する。
料理なら等級はレシピ、レパートリーの数。
熟練度はそのまま、料理人の腕前。
今朝のとろとろプレーンオムレツを【料理】を等級、熟練度で表すとこうなる。
◆◆
職業スキル【聖級料理】
『とろとろプレーンオムレツ・レベル4』
◆◆
料理人が最初に修行する単純な卵料理。
故に誤魔化しが効かず、その料理人にの純粋な熟練度が判る料理だ。
また馬鹿の一つ覚えの如く一つの技を突き詰めれば竜の首さえ落とす一撃にもなる。
最も馬鹿の一つ覚えの剣士はワンパターン故、見切られ易く早死にする。
オムレツだけしか作れなければ料理人としてやっていけない。
スキルは量と質のバランスを持って習得するのだ。
――おさらい終了。
これからクラリスに教える禁止魔法は【召喚】
黒魔法の上位互換とも言われる所以であり、難易度は【聖級】
求められる威力・効果は熟練度2~3。
この世界に住む幻獣か魔獣を召喚する魔法陣だ。
だが、召喚魔法が禁止魔法とされる危険性も知らねばならない。
「さて、ここで問題です。禁止魔法は誰が禁止と定めたのでしょうか?」
「王政府や教会ですね。」
「正解。では、召喚魔法の大半が禁止とされる理由は?」
「世界に後遺症、または文明と無辜の民を殺戮する魔法ですね。他にも宗教的、倫理的に使用できない、消費魔力が高すぎる等、机上の空論の術式も該当します。」
「それも、正解。いやぁ優秀だな。」
要するに禁止魔法は禁止兵器だ。
NBC兵器(核兵器・生物兵器・化学兵器)に相当する。
他にも過剰殺傷の攻撃魔法
天候操作、地形操作。
経済や文明を破壊、混乱させるものから、宗教や政治的にアウトになるのが禁止魔法だ。
魔獣や幻獣を召喚するという事から召喚魔法は生物兵器に該当する。
そう、この世界の魔法は魔力さえ有れば大概の事は出来る。
術と仕組みを理解すれば、不可能はほぼ無い。
そりゃ禁止しないとこの世界も立ち行かないのだろう。
そんな禁止魔法に分類される転移や召喚魔法は大半が聖級以上だ。
しかも、殆どが詠唱では無く複雑な魔法陣を描く手順が要る為、仕様に時間が掛かる。
召喚、転移する距離、質量、召喚対象の条件指定と検索条件を絞るに連れて熟練度が上がっていく。
この世界の何処かに要る者を召喚するなら熟練度3。
幽世、魔界、天界等、大精霊が祀られ、封じられている神殿の交信、召喚で熟練度4
地球など完全な異世界で熟練度5だ。
この事から転移や召喚が容易に使えるようになれば世界的に普及すれば世界は大いに発展する。
勇者を召喚するも、交易に使うも齎す利益は大きいだろう。
反面、危険も大きい。
召喚した勇者に恨みを買った国は滅ぼされるだろうし、犯罪にも利用されやすい。
軍隊を敵地に瞬時に送られたりなんかすれば悪夢だろう。
カグヤの転移魔法の電撃戦術なんて正に悪夢そのものだ。
よって召喚と転移は王政府や教会が厳重に管理し通信、避難用の転移魔法陣として活用。
召喚は魔術学校の使い魔召喚程度でしか普及されていない。
因みに【悪魔化】と【精霊化】は神級で熟練度は評価5。
【現呼吸】は聖級。
アリシアの熟練度は1。(瞬間出力は熟練度4)
帝国5将軍のエーデルワイス女史が熟練度2。
グラハム神父が熟練度3。
俺とクレアが熟練度4。
カグヤは恐らく……というか絶対、熟練度5の域に達してる。
魔改造とか使えば俺も熟練度5の域には出る。
「召喚魔法だが、呼び出す奴だが……コイツにしてもらう。」
そういって一冊の魔道書をクラリスに渡す。
タイトルには封印された筈の召喚対象の名前が書かれている。
「あの、それだと熟練度4の召喚になりますが?」
熟練度4の召喚魔法は異界にいる者を呼び出す。
クラリスに渡したのはロマリアが封印した都合の悪い禁止魔法がタイトルの魔道書。
「間違ってないから安心してその魔道書を解読してみようか。」
「……そうですか。」
疑念を抱きつつも解読に掛かるクラリス。
自分から答えを探しに行く姿勢は流石だな。
この魔道書を正しく読み解けば一つの召喚魔法陣が完成する。
ロマリアにある勇者召喚魔法陣は確実に等級、熟練度共に最高値だろう。
恐らく、俺達異世界人を召喚した魔法陣も同様。
だとしたら、彼女がこれから召喚するモノはそれらに比べるとランクは落ちるが、予定を早めるのには丁度いい手札だ。
勇者と修練者がいる以上、此方も切り札を一つ切る必要がある。
果たしで誰がこの魔道書に記された者の担い手になるか……何方にも転んでも面白い事にはなるな。
◆◆◆◆◆
~21層~
「おおおおおおお!!!」
「はああああああ!!!」
「らああああああ!!!」
剣と魔法が21層を飛び交う。
ガリアの未来を担う士官候補生が自分たちの研鑽してきた技と術を駆使して迷宮の守護者に挑む。
自分たちが今まで磨いてきた剣術と魔術。
加えて異世界の英雄たちが齎す未知の武器や戦術と知識を組み合わせる事で実力も付いた。
学園でも十指に入る実力者を七人も揃えた。
人数も、レベルも、スキルの幅も挑戦者が圧倒している。
なのに勝てない。
昨日は一撃を与えれた、技量は相手が上回っていても、あと一歩まで追い込めた。
『凄い気迫だね~。だけど実力差を覆すのは精神力だけじゃ足りないよ?』
目標から打楽器を震わせたような声が響く。
前衛の三人は構わず、正面、左右から攻撃を仕掛ける。
アリシアの閃光の如き突き。
ジークの大地を割るような剛剣。
ベルゼの重い突きが全て弾かれる。
その攻撃をその見に受けながら何の痛痒を感じず腕を前衛の三人に向かって突き出す。
『一発、二発、三発~。』
守護者の間延びした声に合わない速度で突き出される拳の一撃。
スキルとも技とも言えない唯の拳打が三人に襲いかかる。
アリシアは即座に縮地で回りこみ攻撃をやり過ごす。
ジークは拳に対して斜めに大剣を構えて受け流す。
ベルゼは重力魔法で空中へ離脱する。
『うん、ドンドン行くよ~四発~五発~六発~』
ドン、ドン、ズドン!!と大質量を伴った攻撃が嵐のように繰り出され遂に八発目でジークが受け流しきれず吹き飛ばされる。
「スイッチ!!」
アリシアの叫び声に応えたクレアが守護者に向かって突っ込む。
吹き飛ぶジークにすれ違いざまに無詠唱回復魔法を掛け、その勢いのまま守護者に無手で突っ込む。
その間に守護者はアリシアに標的を変えて彼女の現呼吸で高めた気の防御力を削っていく。
後方から初級、中級の攻撃魔法の援護射撃が飛び交うが相変わらず何の痛痒も感じさせず襲いかかる。
『九発めって――!!!』
止めの一撃を繰り出した腕に閃光の如き矢が腕を弾き飛ばす。
「へぇ?」
感心した様に射手の方へ視線を振り向く。
其処には弓を構えながら、右回りに走り続けるフィオナの姿があった。
弦を限界まで引き絞り可能な限り魔力を込めて放った【弓術】の技【狙撃】。
そして狙いに狙いを付け、溜めに溜めた一撃を放って直ぐに的を絞らせないように森へと姿を消す。
そしてアリシアはその好機を逃す甘い女では無い。
宝剣を下段に構えながら再度、斬りかかる。
使うのは、氷の魔法剣、それも相転移させる必殺剣が放たれる。
そしてクレアとベルゼの援護がアリシアの攻撃に追いつく。
「【念願氷剣・得到】!!」
「【付与・祓魔】」
「【重力砲】!!」
相転移の氷の剣、祓魔の気を付与した拳、重力を衝撃波に変換した砲丸が守護者に直撃する。
ゴォンと、重い金属音が21層に響いた。
守護者の腕が切断され、胸部の装甲が凹み、守護者の巨体が吹き飛ぶ。
『前衛!一時撤退!!』
その掛け声と同時に前衛の三人が瞬時に守護者から離れ、同時に上空から閃光が落とされる。
集団合成黒魔法「閃光焔」
炎属性攻撃魔法を集団で詠唱し聖球に匹敵する火力を持たせた大技。
個別に詠唱する初級、中級魔法では守護者の防御力を突破できない。
閃光と熱を持って焼きつくす炎の一撃は術者単独で放つ聖級黒魔法の【火竜咆哮】に匹敵する。
だが、士官候補生の顔は険しい。
「やりましたか?」
アリシアが呟く。
いくら魔法を無効化する技能、装備を持っていてもあの火力の直撃を受けては一溜まりもない。
昨日の守護者なら間違いなく倒せる魔法攻撃だ。
「未だです。この程度で倒せるのは彼女が生身の時だけです。」
クレアの『神眼』は閃光と炎の中心にいる守護者を捉えている。
「直ぐに攻撃準備、援護魔法と回復魔法をかけ直せ!! 補給を怠るな。」
ジークが予備の大剣に持ち替えて前衛に復帰しクレアと交代する。
後方の部隊もガブガブと魔力回復薬、増強薬を飲む。
「私は魔力を64捧げる。
おお偏在する風の精霊よ盾となりて
我の同胞を守れ
『|不可視ノ盾』」
クリスタが精霊魔法を唱え、味方に不可視の風の鎧、盾を纏わせる。
『うんうん、昨日よりも今日、今日よりも明日と強くなってるね。』
此方の準備を待っていたのか、援護魔法と補給が終わったと同時に焔が消え去る。
出てきたのは身の丈、三メートルを超えた岩の甲冑鎧。
切り落とした腕部、凹んだ装甲に手にもつ木刀を中心に修復されていく。
左手に持つのは『霊剣・日立』
魔力を吸収して成長する木製武器。
吸収した魔力を回復と修復に回したのだろう。
そして、彼女の今の姿は学生服を着たエルフでは無い。
内乱の際に現れた王墓の守護者。
岩の巨人『巨像』を思い出させる鎧の甲冑を纏っていた。
S級のダンジョンでガリア王国の宝剣と王族の遺体を守護する巨大ゴーレム。
そのレプリカ。
リーパーの『霊剣・日立』に続く二枚目の切り札。
『召喚魔法・守護巨人』と『精霊魔法・石纏』
魔の森に安置してある自分の分体を召喚し、精霊魔法で身に纏う闘法。
その拳は岩を砕き、魔法は跳ね返し、縮地にも追いつく機動力を誇る。
昨日の士官候補生の健闘を讃え、一段階、試練のレベルを引き上げた結果。
彼らは見事、守護者の実力を引き出した。
『仲間を揃え、武器を変え、人を変え、作戦を変える……こうでなくはね。』
そういうと日立が光となって消え、代わりに大地から岩を切り出したような斧剣を召喚する。
『全力でボクに挑みなさい!! 召喚魔法と武芸の真髄を見せてあげる!!』
『行くぞォォォォォォ!!!』
『はぁぁぁぁぁぁ!!』
宣言に応えるように、呑まれないように士官候補生は再度、守護者に挑む。
彼らの戦いは未だ、始まったばかりだ。
未完でも最終回でもありません。
続きます。




