王族御用達
徐々に更新頻度を上げていきます。
感想、評価、ブクマありがとうございます。
御陰様でもうすぐ、総評が23000超え!!
楽しんで執筆します。
加筆修正しました。
内容(何故、新人戦と呼ばれるか、レギュラー陣が出場しないか。)
~研究室~
-アキラ-
講義が終わると、やはりアリシアが相談を持ちかけてきた。
「内密で相談があるのですが……お時間を頂けますか?」
態々、迷宮実習を早くに切り上げて相談に来たのだ。
彼女が何故、この時間に此処にいるのかという理由。
相談する内容も分かっている。
「……ちょっと待ってな?」
了承と同時に5メートル四方の特殊な結界を張る。
講堂が丸で修正液を掛けたかのように、色落ちしていく。
結界、迷彩、防音のスキルと魔法の混合技術。
あっという間に密談に適した白い空間を創り上げる。
「隠蔽空間だ。どれだけ声を出しても外には聞こえないぞ。」
「……助かります。」
普通なら、このスキルや景色に何かしらリアクションを取る。
それこそ、脇役やガヤみたいにこの異常事態についてツッコミなり、騒ぐなりする。
だが、アリシアは異常を目の当たりにしつつも、精神状態は平静を保っている。
何も考えてない訳でもない。
唯、観察し、備えるに、留まっている。
【源呼吸】の鍛錬の賜だな。
体に纏う魔力、霊気からは動揺が感じられない。
いい傾向だ。
「……それで話とは?」
「……私に新しい武器を打って下さい。」
あれ? ちょい予想外な事を言われた。
「……新しい武器が欲しい?」
てっきり迷宮の守護者か、勇者くんについて訊いてくると思ったら、彼女は予想の少し斜め上の回答……新しい武器を強請られた。
あれ? 新キャラには興味なしですか?
それと、ごめん。俺って察し悪いみたい。
鈍感系だな。
「ええ、知っての通り、近々、武闘大会が開催されます。」
「ああ、新人戦な?」
気を取り直して、新人戦という単語を反芻する。
もう直、開催される武闘大会は通称、新人戦とも言われる。
活性期でレベル上げした武芸者と武器商人、鍛冶職人達が、国や民事組織に自分の腕を宣伝する場でもあるのだ。
出場者はB級以下の冒険者や騎士見習いといった新人だけ。
レベル200以上の人間は出場できない。
七英雄やA級以上の冒険者、前回優勝者などは、招待客か審判、解説といった感じで大会に携わる。
そして上位入賞した参加者は富、名声、力(登録武器)を得れる。
製作者側は、向こう一年間、騎士団御用達となる。
優勝の常連はルーが率いる旧・白い悪魔。
義賊、武器商人としての顔を持つ彼女は毎回、武闘大会にゲリラ参戦し、優勝を掻っ攫っていく。
流石に非公式(殆ど公式)で参戦する為、騎士団御用達は事態し、リィンの伝手で冒険者ギルド御用達の武器商人に収まり、騎士団の御用達は準優勝者が受け持っていた。
その連勝が止まったのが去年。
何を隠そう、我らが誇る常識人、ガコライが優勝したのだ。
大会に参加する際、登録した武器はなんと俺がアイツに送った武器だ。
その名も【魔剣・稲葉】俺の固有スキル【魔改造】の産物である。
そんな優勝者の剣、稲葉の製作者は授賞式には現れず、王家御用達の名誉を与えられたがその存在は未だ明かされていない幻の職人だそうだ。
今でも、超新星の職人として国内、国外問わず、語り継がれているそうだ。
「え?俺が知らない間にそんな事になってたの?」
「ええ、姉様やトゥールーズギルドの皆様がアキラ殿の存在を秘匿したので、稲葉の製作者は公にされていません。」
魔剣・稲葉は死都で拾ってきた道具袋と頑丈な黒剣を材料に魔改造して作った剣だ。
100人乗っても折れず、曲がらない頑丈な剣身。
異次元収納能力が付与された柄と鞘。
そして鞘に貯蔵されたアイテムの重量を重力・攻撃力に加算する事ができる重力剣。
それが魔剣・稲葉だ。
能力は確か、こんな感じだった筈。
◆魔剣・稲葉
品質 高品質→魔改造
付与能力 重力制御 耐久性(大)次元収納 重量加算
へぇ~あの剣で優勝するとはガコライの奴もやるな。
というか、ルーが作った武器とその部下相手に勝ったというのが凄い。
「それでその軍刀で参加はダメなのか?」
俺はフェンリルの素材を複製して作ったアリシアのクルトの魔剣をみて答える。
図らずも王家御用達の武器としてはこの破魔の剣は合格点だろう。
何故、新しい武器を求める?
「あの……国宝の剣が量産出来る事実は伏せた方がいいのでは?」
「あ~……確かにそりゃ秘匿すべき事実だったな。」
俺は裏技として量子転送機を応用して万物を複製する事が出来る。
これに俺の解析能力と魔改造が加われば、燃えないごみから、伝説の武器を作り出す事が出来る。
リィーンとアリシアも宝剣の複製品を送っているし、俺の武装の殆どが複製した物だ。
この事を公にしたら、武器職人は仕事が上がったりだ。
故に、その事実を隠すために宝剣以外の武器を用意しなければならない。
加えて武具大会の前回優勝者の武器製作者として一振り、王族の出場者……つまりアリシアに新しい武器を用意しないと大会が盛り上がらない。
「大会は既に大量の人材、物資、金が動いています。勝手な頼みだという事は承知ですが、私に武器を打ってください……勿論、正体は隠したままでも構いません。…お願いします。」
「……成る程ねぇ。」
知らない所で、俺はリィーンやガコライ達に守られた訳だ。
現在、俺は強くなった。
権力者どころか、国、勇者、魔王を相手にしてもうまく立ち回れる程に。
だが、去年の俺ではどうなっていたか分からない。
俺の知らない所で勝手に盛り上がって何を?とも思うが、不用意に親しい友人に武器を送った俺にも否があった。
そのうえ一年間も俺は守られていたのだ。
「そういう事なら……いいよ、武器を用意しよう。」
「――ッ!! ありがとうございます!!」
ぱぁっと笑顔を見せるアリシア。
うん、この笑顔、守りたい。
元々、アリシアの修行の成果を大会で見るつもりだったのだ、クルトの魔剣を持ったアリシアの活躍も見たかったが、国宝の複製品を大会で使うのは、国にとっても俺にとってもデメリットが多い。
なら、恩返しと弟子の笑顔を守る為に新しい武器をアリシアに贈ろう。
「ふっふっふ、こんな事もあろうかと弟子育成用の武器を作っていたのだよ!!」
「おお!?」
アリシアの顔から尊敬の眼差しで俺を見やる。
ふふふ、そんな目で見るなよ。興奮するじゃないか♥
「霊剣・日立~~」
アリシアの笑顔が曇った。
「……え、もう一振りあるのですか?」
「ん、そりゃあるよ。」
ああ、守護者も持っていもんね。
そりゃ、俺が用意したダンジョン、守護者なんだから、そりゃあるよ。
「い、いえ、このタイミングで出る武器……それはつまりパワーアップバージョンのスピリット・オブ・ソード・サンライズですね!?」
ああ、天○斬月とか逆○刀・真打ちみたいな…ね?
確かに御神刀を打つ際、複数本、打って、一番出来のいい真打ちを納める。
他の者は影打ちとして死蔵するか誰かに譲るものだ。
だが、この日立に限っては真打ちか、影打ちという括りは無い。
「いや、普通の霊剣・日立だ。」
さっき、複製と魔改造の話したばっかだろう。
複製品に差は全くない。
完全同一品だ。
「なんなら、聖水と木があれば何本でも作れるぞ?」
「そ、そうですか……」
目に見えてがっかりするアリシア。
おいおい、源呼吸が乱れてるぞ。
やっぱ未だまだだな。
仕方ない、ちょい甘な師匠としてはフォローも入れてやろう。
「だが、その気になれば、どんな最強な武器にもなれる気になる木の剣だ。」
「え…?」
あ、寒かった?
でも、言葉遊びでは無い。
この木剣は唯のお土産屋にある木刀とは違う。
王家御用達の武器に恥じない性能を秘めている。
「振ってたら直に判る……まぁ楽しみにしてな。暫くは王家御用達だしな。。」
照れ隠しで激励する。
すると、暫く、木剣を手に持ったアリシアが俺の激励に気づいて頬を紅潮させた。
「分かりました。期待に応える為、必ず優勝します。本日はありがとうございました!!」
「ああ、大会での活躍、楽しみにしている。」
「はい!」
嬉しさのあまり、駆け出すアリシア。
「っておい、未だ隠蔽空間解いてな――」
「あっ――!?」
隠蔽空間で白い空間だったが、この場所は講堂だ。
見えない、机、椅子にぶつかり、転けるアリシア、急いで手を伸ばして支える俺!!
「あたたた」
「おいおい、大丈夫か?」
咄嗟に、伸ばした俺の左腕がアリシアの腕を掴み、空いた手で更に彼女の腰を支える。
「悪い、未だ空間、解けてなかったな。」
「すすすす、すみません、私――」
隠蔽空間を得く。
机と椅子が倒れたが、アリシアに怪我は無い。
「いや、俺が悪いんだって、兎に角怪我が無くて良か――」
バササササッ
背後で、教材を落とす音がした。
続いて、聞き覚えのある、しかし、聞いたことも無いような底冷えした同僚の女神の声がした。
「――誰も居ない講堂でステルスでナニをしているのかな?」
父さん、この状況だと誰も居ない教室で――
教師が女生徒の手首を掴み、腰を支え、キスしようと迫っているように見えなくも無いわけでして……
――死亡フラグが立ちました!
――アリシアのフラグが建ちました。
いや、ほんと勘弁して下さい。
アキラ現在 死亡フラグ数 10




