とある迷宮の数奇な運命 壱
新章 学園迷宮&暗部編
更新再開します。
この世界の迷宮は魔力をせき止めるダムみたいな役割がある。
通常なら拡散していく魔力を森林や城壁、地下迷宮、神殿で魔力を閉じ込め場の魔力濃度を高める。
濃度が高くなれば中にいる生物や器物は魔物や、魔法道具に変異する。
その中で特に魔力を持った核(魔物、魔法道具)は更なる進化の為に地下から魔力を汲み上げ、周囲から魔力を吸収しはじめる。
核となる魔石は効率よく魔力を吸収し自分を守るためにボス個体を生み出す。
外から経験値やアイテムや名声を求めてやって来る冒険者の命や魔力を奪い更なる魔力を収集しようとする。
こうして世界各地に魔力を咳止め、迷宮と化した建造物、領域が出現する。
人々は経験値や希少な道具に惹かれて死んだり、生きたり躍起になる。
そして世界は魔力と命は今日も世界中を循環していく。
中には天災規模の戦闘の余波で灰燼になったり、闇に喰われたりする運の無いダンジョンもある。
これはそんな数奇な運命を辿った迷宮の物語である。
◆◆◆◆◆
ボクはダンジョン・コアです。
名前はまだ無い。
――物に心が宿るなんていう、そんな逸話はどこにでもあると思う。
長年、大切にする
ナニカが憑りつく。
崇拝する。
切っ掛けは多々あるだろうがボクの場合、きっとドレでも無い。
ボクは文字通り弄られた事で生まれた。
ボクは人の集落から離れた魔の森という天然ダンジョンだった。
まぁ森は魔力溜りだし、魔の森なんてすごい安直なだったんだけど。
今は名前は無い。
というか魔の森って正式名称じゃないよね?
世界各地には迷宮化した森なんていっぱいあるんだから。
むしろ種族名?
ダンジョン目、森科?って感じかな。
森の中にある長寿な樹木に魔力が宿って地下から魔力を汲み上げていく内にダンジョンとなったって在り来りな出生。
木々や沼、蟲や鳥、小動物がジワジワと魔物かした感じだった。
普通なら直ぐに狩り尽くされるのが落ちなんだけどボクは運良く国境に位置していた。
その為か人の手で伐採も乱獲もされず、調整され続けた。
戦乱が続くから魔物や迷宮を防御壁にしたみたいだ。
結果、長々と時間が経ちBランクのダンジョンに認定された。
でもその時は召喚獣や精霊は住んでいない。
人が寄らないから強欲な人間の魔力を取り込めない。
中の魔物は生態系が出来てしまった為、地下から汲み上げる分でしか成長できない。
勢力を伸ばそうとすると伐採される。
でもボクは満足だった。
何せ、他の迷宮と違って冒険者や馬鹿な魔物に核を狙われる危険も少ないしね。
退屈だけど何時かは召喚獣や大精霊を生み出して世界を練り歩く。
そんな事を思いながら平穏な時間を過ごしていた。
だけど……平穏なんて直ぐに崩れさった。
それと言うのも今の僕の主が諸悪の根源だ。
主の名前は渡辺アキラ
この主は相当、変わり種の人間?です。
例えといえば腐るほどあります。
というかそのすべてがボクの受難なんですけど……。
◆◆◆◆
その日はボクの上を強力な人間や幻獣が幾重もボクの上を飛んでいった。
――ああ、何人か落ちこないかな~
――こっちの沼の水は甘いんだけどな~
――来ないだろ~な~
魔力にボクの思念を込めて呪詛を飛ばしたり、濃霧を出してで飛行を妨害するけど、落ちてこない。
――うん、全員A級以上の実力者だね。Bランクのボクじゃ干渉できないね。
何時もと違い物々しい気配を感じるも、手出し出来ない。
仕方なく蟲や子鬼を使って森の外を偵察する。
すると森の外にある砦の前に一人の男が東から森を超えてきた軍隊を相手に無双していた。
――え、ものすごい禍々しい魔力なんだけど。
眷属の魔物たちが恐怖に震えている。
男の足元から黒い手が何本も生えて空を飛ぶ乙女たちを捉えて闇に引きずり込まれていく。
幻獣や戦乙女の悲鳴、そして、この悪夢の体現したであろう術者の高笑いが木霊する。
『止めろぉぉぉぉぉ!!!』
『ハハハハハハハ! さすがの私も、 こいつは食いきれんかもしれんなアッ!』
――うわぁ、人がしちゃいけない魔物サイドの顔をした人間が高笑いしながら蹂躙してる。
うん、この時は未だボクは未だ危機感が足りてなかった。
『剣弾!』
『正拳突き!!』
風圧が森の一部をなぎ払い、飛翔する魔剣のうちの一本が大樹に向かって突き刺さった!!
――ぎゃああああああああああ、刺さった!!
伝説の剣みたいに大樹に刺さったよ!!
痛い、ものすごい痛い!!
高純度の魔力が染み込んだ剣、いや剣の形をした魔力がボクに突き刺さる。
取り込もうにも、Aランク以上の魔剣の為か、逆にボクの魔力を吸い上げようとしている。
あ、大樹に刺さった伝説の剣って絵的にいいかも……でも痛いものは痛い!!
地下から組み上げた魔力に含まれる情報からそんな物語があるのは知っている。
でも剣が刺さると痛い!!
というか現在進行形で吸われている。
念願の核となりうる魔剣だけど痛いものは痛い。
慌てて森の眷属の中でも手が使えるゴブリン達に剣を抜く様に命じる。
でも、非力な彼らが力を合わせて抜きに掛かるが全く抜けない。
(だめゴブ、まだまだ剣は抜けませんゴブ)
ゴブリン達が一族総出で集まっても抜けそうにない。
――く、所詮ゴブリンは何匹集まってもゴブリンだというのか!!
こうなったら投げた本人が回収に来てくれるか、都合よく武者修行の冒険者を思念で呼び寄せるしかない。
なのに、今日に限って森から見える砦に駐在する兵士が居ない。
今、戦っている人達だけだ。
ちょ、早く来て剣を抜いて勇者様!!
王様でも可!!
伝説の剣がここに刺さってますよ~~!!
そんなボクに更なる悲劇が襲う。
「あらあら~こんな所に如何にもな剣が刺さってますね~」
――!?
大精霊? 人間?
いやとてつもない王気を感じさせる女性が何時もの間にかボクの側に立っていた。
ん?いつの間にか魔物たちが居ない……
あれ、何処に行ったの?皆?
いや、それより都合のいい事に剣を抜きそうな人が現れたんだ。
思念を飛ばして抜いてもらわないと。
――勇者様!? 女帝? 何方にせよ助かりました!!
神はボクを見捨てなかった!!
ホラホラ、如何にも伝説な剣がボクに刺さってますよ?
勇者になれますよ?
刺さったのはついさっきだけど!!
「ま。そんな事より、少しまずい状況ですね~死神がこれ程とは。」
――そんな事!? 結構な魔剣だと思うんだけど!?
――あれ? 思念が弾かれてる?
え?
効いてない?
届いていない!?
な、なんで!?
混乱するボクに気にかけることなく彼女の周囲の魔力が炎の様に立ち上っていく。
ちょ、熱ッッ!!
何だか急に温度が高くなってる、近くの沼が干上がってくぅぅぅ!!
「うふふ、このセリフ……一度言ってみたかったんですよね~」
感覚を研ぎ澄まして女の人の拳を見ると魔力と熱気が収束していくのを感じる。
――え? この霊力……、魔力強度……まさか。
『火球!!』
どう見ても初級魔法とは思えない火力と規模の炎が生み出され、えいっと可愛い掛け声と共に煉獄が再現された。
突き出された拳の直線上に青い炎が悪人面の青年に向かって飛んでいったのだ。
……ボクの魔の森を燃やしながら。
――ぎゃああああああ!!!
――山火事だァァァァァァ!!!!
――自然を大事にしてぇぇぇぇ!!!!
突如放たれた火球で森の三割を焼き尽くされた。
そこからはもう思い出したくない。
次々と剣の流れ弾?はボクに突き刺さり、火炎の余波がボクを焦がした。
次第にボクの知覚能力も燃え尽きていく。
最後の記憶は熱かった事と、闇かった事……
太陽と夜暗が戦うという馬鹿げた戦いが繰り広げられ、……ボクの意識は、闇に堕ちた。
――ああ、孤独がドンドンと感じる。
――これが死か。
冒険者の手でも無く、強力な流れの魔物に喰われる訳でもなく、唯の戦闘の余波で死ぬなんて……
――次に目覚めるときは、あの天災の様な人間が来ないダンジョンになりたい。
それが魔の森としてのボクの最後の記憶。
まぁ、その願いは叶わず、恐ろしいのはこれが始まりに過ぎなかった。
そしてボクは思い知る事になる。
主となった人間の非常識さを……そして世界の広さを…




