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異世界攻略のススメ  作者: 渡久地 耕助
運命と因果の旗

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神眼のクレア

お久しぶりです。

執筆時間が取れるようになりました。

活動再開します。

  ---アキラ 視点---


 勇者の因果律を操作する固有スキル【旗製作】


 今回は敵対者の言動から死を誘発させる呪い、魔法、いや魔力を用いず運気を用いた攻撃だった。


 しかしこの程度のスキル、攻略するのは容易い。


 そう、勝負は時の運とか、主人公補正とかそういったものでこの世の出来事は左右できない。

 運など実力の一部に過ぎない。

 単なる一要素でしかない事を俺は夏の野球拳で体験していたのだ。


 回避、破壊が可能なら後は簡単だ。

 【挑発】で不特定多数の俺の死を引き起こす存在をカグヤに収束させ、

 死亡フラグをわざと誘発させ、正面から攻略する。


 【魔改造】で運気を操作する事も考えたが、揺り返しが酷いから、物理攻撃を無効化できる【精霊化】

 カグヤがあのタイミングで使うであろうスキル、狙う場所も予測できたから回避は容易だった。


 そう、全ては運命を克服し、超越する為の行動だ。

 式を挙げるとかそういうのはジョークだったんだ。

 関係各所に土下座外交を慣行。

 いや、話せば分かってくれたね。


 因みに当事者というか、俺の息子の殺害未遂を行なった狐仮面、ヤマトレディーは笑いながら許してくれたのだが……


「じゃあ、これであいこですね~」

「おお、流石は…大和撫子……実に慈悲b…」


 ……でも次は許さないカラ~ と、怨嗟の声というか巨大な釘が刺された。


 目の前にいたのは大和撫子じゃなかった。

 傾国の女だった。


 いや、東方諸国、滅ぼして統一国家にした女帝でした。


 うん、怖い、すごく怖い。

 だって目がマジだもん。

 私だって人間だもの。


 狐の仮面では隠し切れない熱気と殺気を感じた。

 だが、死亡フラグが建つほどでは無い。

 これが俺にとって通常業務、挨拶みたいなものだ。


 早朝ランニングで地雷原をマラソンする位、日常風景だ。

 日常といっても差し支えないな。

 なんだか、泣けてくるな。


 

 それに今回の件に関しては保険もあった。

 俺も自分の力だけで解決できると自惚れている訳ではない。


 策が通じなかった際の備えも行っていた。


 どういった策かって?


 俺の死を願う敵は多い。

 だが俺が生きる事を願う味方はもっと多い。


 今回は彼女(・・)にも助けてもらった。

 もっとも彼女は俺を助けた自覚は無いだろうが。


  ---クレア視点--- 


 夏が終わり、お父様から兄弟子のアキラさんと姉代わりのテファさんが勤める学園に入学する事になった。


 別に今更王立学園で学ぶ事はないと思う。

 今でもアキラさんとテファさんは週に1~2度は教会にやって来るし。

 【源呼吸】を体得してから、飛躍的に強くなった。


 生き物を殺めずに魔力を大気のミストや食物に含まれるソイルの魔力を吸ってレベルが上がっていく。

 レベルも100の大台を超えるがこれではB級どまり。

 だけど足りない。


 入学の目的は兄弟子の作った修練場にある。

 色々と焦燥感を感じていた。 


 昔は士官、英雄クラスのA級とはレベル差はあるけどそれを覆すスキル固有スキルが二つもある。

 昔の私ならレベル上げはこれ位でいいとも思っていた。


 経典でも強さを限界以上まで魔力を鍛えた英雄達の末路は悲劇ばかりだ。

 戦争や災禍に呑まれるか権謀術数に利用されるだけだ。

 神として祭られるか魔として討伐されるか……そこに幸福など無い。

 しかも、聖人の血を引く私は、彼らと同じ運命を辿る確率が高い。


 だけどその舞台に乱入し、幸福になる為に私はアキラさんのいる学園にやって来た。

 恋敵は多い。


 アキラさんを手に入れるには、圧倒的な力がいる。

 基礎能力は鍛えた。


 さぁレベル上げ開始だ。


 一年前の私が、この光景を未来視したら、とてもじゃないけどその光景を信じられないだろう。


 ◆◆◆◆


 一年半前


 異邦人(アキラさん)が初めて私の前に修業に来た時、憐憫の眼差しを向けた。

 私の【眼】が彼の能力、素性、そしてそこから彼の未来が見えたからだ。


 固有スキル【神眼】

 あらゆる事象を見透す力。


 その眼が彼の運命は儚く数ヵ月もせずに死ぬだろうという事が分かった。


 聖女である私が願えば、或いはこの身に宿った加護が彼を救うだろうけど。

 だけど私は助けない。

 異邦人だったからだ。


 命短し人生で次々と行き急ぐように過去を解き明かし術理を理解し再現する異邦人。

 異邦人特有の異世界の文化、知識の恩恵。


 だけどこのままでは彼は、その知識、実力を吸い取られ、利用され世界の運命に取り込まる。

 眼は彼が健康そのものだと私の脳裏に伝えるので、病で死ぬのでは無い。


 恐らく戦争か暗殺か同郷の人間に殺され、死んでしまうのだろう。 


 だけど私は傍観する。

 彼に懐いた振りをしつつ、目を背けた。 


 聖女である私が死ににくいと同時に異邦人の運命は生きるか死ぬかにおいても強い運命に支配される。


 だから無駄なのだ。

 兄妹弟子という妙な縁が出来たが、その縁も直に切れる。


 一月という短い時間だが、掛け替えの無い一月にしてあげよう。

 そう思って彼と修業した。


「うわ~クレアちゃんは筋がいいなぁ 才能の格差に全、俺が泣きそうだ。」

「そ、そんな事無いですよ。」


 神眼の恩恵で魔力の流れを見切り、才能や術理の仕組みも見切れるのだ。

 誰よりも習得が早いのは当然だ。


 私が彼が再現した失伝スキル【源呼吸】をお父様の特異体質と古文書、絵本をヒントに再現したのは驚いた。

 恐らく彼が保有している【魔改造】と呼ばれる万物の魂に干渉し改竄する固有スキルの力だと私の【神眼】が見抜いた。


 彼もその力は自覚しているようだ。

 これなら短期間で強くなり、増長するか戦争の駒にされて生き急ぎ死んでいくのだろうと思った。


 なのに、彼は黒魔法・白魔法の初級を習得した後、お菓子作りや薬品調合にばかり手を出すようになる。


 何故?


 弱いままだと死期が早まるでしょう。

 強さは不幸を招くが、弱いままよりは遥かにマシだ。


 私が戯れに修業に付き合ったのはせめて彼が少しでも強くなって長生きして欲しい為だ。

 憤慨した。


 この程度か。

 これでは短命なのも当然だ。 

 強力な新薬や保存食を考案しても、これでは商人や権力者に利用されるだけだ。

 そしてそのまま陰謀に巻き込まれ死ぬだろう。

 

 だから、何を怠けているのだと言外に文句をいうつもりで話しかけた。


「あの、修業に来たんですよね? 何故、皆と?」

「んん? 子供の本当の笑顔が見たいが為だけど?」


 その返事に面食らう。

 笑顔の仮面が崩れかけるのを必死に抑える。


 一瞬、見透かされと思う。

 だけど違った。


 この鷹の様に鋭い目を持つ異邦人は貴重な時間を子供達の笑顔の為に使ったのだ。


 そうして修業期間が終わる。


 結局、彼がおとうさまから学べたのは格闘術と初級の魔法のみ。

 

 逆に此方は料理と医療薬品のレシピ、遺失スキルの【源呼吸】、到底つりあえる物ではない。


 むしろ此方が教わったのだから、授業料は此方が払うべきだ。


「これで、子供達にもっと旨いものか新しい服でも買ってやって下さい。」

 

 そう言っておとうさまに授業料に色を付けて渡していたのを私は知っている。

 皆も知っている。

 彼は顔は怖いけど、本当は優しい人だってことを。 


 荷車に子供達と一緒に作ったクッキーとポーションを大量に詰め、

 代わりにそれらを纏めたレシピを渡して彼は帰っていった。


 神眼が彼はあのまま、危険なダンジョンに身を落とし死ぬ事になる。

 そう、訴えた。


 だけど私では助けられない。

 死を連想する黒い、呪いの様な魔力が彼の体に纏わり付いている。

 いよいよ今生のお別れの時なのだろう。


 懐いた子供達の彼との別れを惜しむ声が胸に痛い。

 彼らは知らない。


 これが永久の別れになると。


 神様はどうして私に見える力と運命を与えたのだろう。

 私では干渉でいないほどに彼の死の運命は強い。


 だからもう、会うことは無いと思っていた。

 

「また笑える土産話でも持ってくるよ。」

「絶対だよ、オッサン!!」

「私、恋話がいいー」

「また遊びに来てね!おじさん!」 

「おっさん、いうな、おにいさんだ!! 

 あと恋話もこの顔で恋人つくるの至難の業だから!! それもひどいなおい。」


 そんな彼らの挨拶を聞いてられず、私の視界がぼやけて来る。

 おかしい。


 この眼はこの世界の誰よりも見通せるのに。

 今は見えないよ。

 神様。


「ちょ、おいおい? どうしたクレアちゃん? また会えるって」


 目頭を押さえながら、私はコクコクと頷く。

 悟られちゃダメだ。

 

 周り子達に気付かれる。


 笑って見送らないと。


「うん、アキラさん。また会いましょうね?」


 守れるはずの無い約束を私はしてしまう。


 なのに年相応に涙を浮かべる私をみて、アキラさんは、怖い人相を精一杯細めて笑顔て答えてくれた。


「ああ! また会おう。」

  


 ◆◆◆◆◆


 一年前


 闇の大精霊を従え、臨界者となった彼と再会した時、己の眼を文字通り疑う事になる。


「おお、みんな久しぶり!!」

「あ、おっさんだー」

「おっちゃんが来たーーー」

「ああ、となりの人っておじさんの恋人ーー?」


「誰がオッサンだ!?お兄さんだ!!」

「「「「きゃーーーー!」」」」


「やだ、この子達、正直者です!!

 丁度、ここ教会ですし、このまま挙式挙げます? アキラ様?」


「……おお、クレアちゃん久しぶり。」


 其処には子供達の笑顔の為に死線を乗り越えた勇者の姿がいた。


「何故?」


 それは神の眼ですら見ることが叶わない景色、事象だったらしい。

 彼が生きている理由、運命を克服したその答えを私の眼は教えてくれない。

 分からない。


 いや、知っていた。

 眼の情報ばかり信じて彼の事を信じていなかった。

 その疑問の答えを彼は何時も口にしていたのだ。


 子供達に笑顔を

 

 何時も怖がられ、泣き顔にさせてしまう彼だからと冗談めかして口にしたその言葉。

 

 もちろん、顔が原因だけでは無い。

 きっと簡単に口にする程、軽い話ではない。

 無粋な眼でその真実を覗かなかった。


 彼が子供達を泣かせない為に、笑顔を守る為、ただそれだけの信念、意思で死を乗り越えた姿がまぶしすぎたから。


 今、思えば、この時からでしょう。

 私の中の価値観が代わり、兄弟子への気持ちが変わり始めたのは。

 子供だった私が早く大人になりたいと願いだしたのは。


 そして未来が変わるものだとアキラさんに教えられたのだ。


 

固有スキル 神眼

視力系、眼力系の全スキルを保有する。

○○眼と名の付くスキル全ての総合眼力。 


見えるすごく良く見える。


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