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異世界攻略のススメ  作者: 渡久地 耕助
新学期

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間話 ライラ

暗黒大陸の魔王軍がアップを初めました。

2014/10/28 修正

 

 初級コースの担当講師。


 彼女に関して語らねばなるまい。

 後々のフラグが、今まで避けていたフラグがとうとうやって来たというか。


 結果から云おう。

 俺の同僚として新しい体術講師の前職は元・魔王軍。


 魔族側の人物が勇者や魔王、女神、七英雄が跋扈する魔窟の様な学園に赴任して来たのだ。 


 彼女の名前はライラ・(アキレウス)(セイフィート)・シンクレア


 うん、ツッコミ所のある名前だし、聞き覚えがある響きの名前だ。


 彼女との出会いは面接からだった。


 ◆◆◆◆◆


 ~数日前、王立学園 面接室~




 体術訓練を担当していた初老の退役軍人の講師(マッケンジーさん)と俺だけでは人手が足りない為、講師を一人、外来から公募する事にしたのが発端だ。


 今までは一人で十分賄えたが、3コースに分かれる為、もう一人体術講師を補充する事になった。


 体術を教えれる人材など軍隊やギルド、国内から幾らでもいた。

 我先にと様々な人員が騎士団、ギルド関係者から募った。


 あまりにも多かった為、採用試験をする事になる程だ。


 書類選考でレベル、スキル、出身地、経歴を見て選別し終わった。

 そして二次審査の面接と実技に立ち会うことになった。

 因みに面接官はマッケンジー講師、俺、理事長(リン)の三人。



 面接か~

 入試面接や就職面接を思い出すけど、まさか面接官をする事になるとは…

 へましない様に無難な質問で済ませよう。


 そう思っていた時代が私にもありました。


 手元に配布された履歴書に目を向ける。

 騎士やギルド団員で構成される駐屯兵団はギルドカード等で既に情報がこっちにある。


 内容もゲームのステータス表に志望動機とかを加えられた程度。

 兵団以外の人員は自己申告のステータス表を履歴書として提出してもらっている。


 

 いやステータス看破できるスキルを持つ俺とリン

 加えてギルマスでもあるリンが持っている情報と照らし合わせる事ができる以上、経歴詐称とか無駄だろう。


 だが、隠れた人材はギルドカードに登録される情報を隠蔽できるスキルを持つ。


 固有スキルの恩恵で強力な霊視、透視ができるリンと俺が面接官として当たる。


 そして面接はちゃくちゃくと進む。

 騎士や兵士、ギルドメンバーは書類にも偽りがないし能力や性格に問題は無い。

 ガコライみたいに体術と剣術を両方鍛えている冒険者もいた。

 

 流石、ガリアというべきか粒ぞろいである。


 因みにガコライは体術講師に応募しなかった。

 アニの目付けという名目で教職には就かず、ギルドの仕事にある臨時職員の『清掃員』として学校で働いている。

 

 合格者も絞られていったが、誰を採用するか、次の実技が楽しみだと思っていた最中……


「それでは次の方。どうぞ、お入りください。」

「は! 失礼します。」


 ……最後の受講生が現れた。


 ◆面接風景◆


 受講生は女性だった。


「ライラ・(アキレウス)・セイフィートであります!!

 階級は元・軍曹 魔王軍ゲリラ部隊 隊長を務めていました。拳系であります!!」

 

 彼女の第一印象は、正に危険な女だ。

 危険といっても性的にとか、生物的にではない。

 政治的に危険という意味だ。


 俺は勤めて平静を装い彼女の書類と彼女を交互に見比べる。


 ◆ステータス◆

 名前 ライラ・A・S・セイフィート

 種族 淫魔

 クラス 遊撃兵(ゲリラ)

 レベル 202(A+評価)

 暗黒大陸 イシス出身

 取得スキル

【拳闘術】【総合格闘技(パンクラチオン)】【柔術】【剣術】

 

 書類と【透視眼・Χ】の情報に齟齬は無い。

 

 容姿はナミやリンと同じく夜色の髪

 肌は小麦色で顔立ちはアラブ系美女?


 ここまではいい。


 羊の様な角が生えていた。

 腰から蝙蝠の様な翼が生えていた。

 悪魔の様な尻尾ってもう、完全に悪魔系の娘です。

 彼女は悪魔系の魔族だと俺の透視眼(スキル)が俺の網膜に表示される。


 魔王軍って自分から名乗ってるよ。

 とうとう暗黒大陸から魔王側が来ちゃったよ。

 何で、書類審査を通ってるんだよ。

 本当勘弁してくださいよ。


「それで、ライラさん特技は?。」

「主に拳と剣を使って敵を倒す事です!!」

 

 生徒は倒さないでね?


「尊敬する人物は?」

初代魔王(アキレウス)様と先代魔王(セイフィート)様。

 真祖の吸血姫(テレサ・シンクレア)様です!!」


 何か聞き覚えのある名前が大量に出ましたよ!?


「名前に尊敬している人物の名前がついていますが?」

「我が国は人族の様な家名をつける文化はありません。

 最も尊敬する魔王様か両親の名を後につけるのが魔族の文化です。

 私は前者で、歴代の魔王様の名前を頂戴いたしました!!」


 あ、やっぱアキレウスは魔王扱いなんだ。

 という事は知り合い二人も魔王を尊敬している口なのだろう。

 アリアもノエルも暗黒大陸出身の剣士らしいしな。

 

 テレサも親が魔王に肖かって同じ名前を付けたとかそんな所だろう。


 そうだと信じたい!!

 

「体術訓練なのだが、書類だとレベルと心得はある様だね。」

「格闘術と剣術には自信があります!!」


 マッケンジーさん、貴方も片眼鏡に手を掛けて質問してますが、

 もっと突っ込む所があるでしょう?


「わ~とてもお強いんですね。それでは、前職の事をお聞きしても?」

「は! 栄誉ある魔王軍として武者修行の冒険者や勇者一向、ロマリア軍を強襲! しかるのち、所持金の半額を奪い去った後、近くの街に送り届けていました!!」


 魔族とはいえ、士官しているだけあって紳士的だな。

 いや淑女な所があるんだな。

 

 騎士道精神でもあるのだろう。

 ちょっと意外。


「その心は?」

「キャッチ&リリースであります。

 小物は逃がした後、金を貯めて魔族領に来たら再度、収穫します。」


 あ、ちがうわ。

 釣り人精神だ。

 思考が黒いぞ、魔王軍。


「わ~、淑女なんですね。ライラさんは。」

「恐縮であります!!」


 さっきからリンは好意的だな。

 どう見ても魔王サイドだよねその人。

 勇者一行が生徒にいる事知ってますよね?


「それで、志望動機は?」

「は!初代魔王(アキレウス)様、そして人と魔族を分け隔てなく診察するヨシツグ殿。彼等と同じ職場で働きたく志願しました。」

 

 そして俺に熱い視線を向けるライラさん。

 勇者目的では無く、魔王目的なのは間違いないようです。

 

 彼女の視線をポーカーフェースでやり過ごす。

 ウインクして応えようものなら俺は死ぬ。

 俺の本能とスキルが警告音を最大音量で発している。

 下手な言動は命取りだ。

 

 俺は【源呼吸】で息を整える。

 今は面接だ。

 

 ……というか、ヨッシーの名前が出てきたな。


 普段はあれだが、医者としての筋と仁術、徳がある奴だ。

 

 あいつは一人国境無き医師団みたい真似が出来る奴だ。

 医療技術を持った自立型自動人形、遠隔操作型人形を世界中に配置している。

 以前、本体は花粉症対策とかで暗黒大陸のイシスにいたからか、魔族軍にも顔が広いようだな。


 しかも亜人や魔物、魔族に偏見が無い。

 むしろ吸血鬼であるテレサがストライクとかいう奇特な奴だ。


 様々な種族・人種に似せた自分の人形(ぶんしん)を医療用人形として配置し、患者は敵味方、老若男女、人も魔族、魔物問わずに行う世界最高峰の医者だ。


 こういう偉業や人徳から七英雄にも数えらるのだから本当は凄い奴なのだ。

 実物を見ないで、医者としての側面、偉業を伝聞だけで聞けば、本当に尊敬すべき奴なのである。


 普段はアレだけど。


「自由の槍には来なかったのか?」

「私の任務は主にゲリラ戦と新兵の訓練です。あの部隊には必要ないと判断しました!!」

 

 

 まぁメンバーが七英雄と大精霊二柱、

 他の構成員は殆どルーが集めた精鋭中の精鋭だからな。

 確かに訓練の必要は無い。


 そして質疑応答が済み、最後の質問をする。


「生徒には魔族と敵対する種族や国家の生徒もいますが?」

「人も魔であっても生徒に代わりはありません。

 学園に配属された瞬間、私は軍人では無く教師となるのです。

 ―――故に問題はありません。」


 俺の質問に彼女は即答した。


 彼女の志は立派だった。

 彼女の瞳に曇りも無い。

 種族の壁を越え、尊敬すべき人達と働きたい。

 加えて能力もある。


 こういう人間は切るのは俺の主義にも学園の方針にも反する。


 なら、俺も腹を括ろう。


 リンやマッケンジー氏も反対はしそうに無い。

 まぁ魔王や魔女、女神達が採用されたり編入したりする学校だ。

 魔族くらい今更といったところか。


 必要ならフォローもしていこう。

 俺も魔族を滅ぼそうとか考えてないしな。

 偏見も無い。

 生徒も魔王と噂される俺に対して風当たりも無い。


 そして面接が終わり、実技試験で彼女は他の受験者との組み手で無双した事を此処に記しておく。

 結果は聞くまでも無いだろう。


 ―採用。


 目出度く彼女は保健体育教師として王立学園に赴任した。

 実技の体術の初級コース、座学で保険体育の授業を行なう。


 こうして俺は新たな同僚と共に、勇者攻略(じゅぎょう)に乗り出した。




他の魔王三名は自分が魔王だと自覚してません。


次回 11/3 19時更新



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