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異世界攻略のススメ  作者: 渡久地 耕助
新学期

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190/238

恋は戦争

3連休の為、一日早く更新します。

 ガリア王立士官学校は戦闘スキル【格闘術】【体術】の習得を推奨している。

 剣士や騎士は言わずもながら、治療師、魔術師にとっても必須科目である。


 ガリアは騎士やB-ランク以上の冒険者以外は市街での武器の装備に制限が掛かる。

 この法律も治安維持の為に武器を取り上げるだけが目的では無い。

 【精霊化】と【悪魔化】この両スキルを習得するのが真の目的である。


 起源は王立学園の母体となったクルト民族の戦士団にまで遡る。

 彼等は己が体に悪魔や精霊といった高位の霊的存在を召喚、使役するだけでなく自らの体内に召喚・憑依させて爆発的に戦闘力を高めて戦う民族だった。


 人に許された力の領域を超える秘術である。


 しかしリスクもある。

 術者の精神力、霊力、肉体の器が未熟であれば、体内に召喚した精霊、悪魔の因子が残留し後遺症が残る。


 瞳や髪、肌が変色する。

 猫耳や角が生え、耳が長くなる。

 性別が変わる。


 酷い例では体の因子が暴走して衰弱していき、魔素となって消える。


 故にクルトの戦士は心身ともに鍛える事ができる体術・武術の習得が好まれた。

 現代のガリア王国でも武器やレベルに頼るのではなく、

 元々の肉体を強化する為に法律として市街での武器の携帯に制限をかけた。


 いわば、国は総出でスキルの習得の為の下地を作っているのだ。


 他国の様に魔素を取り込みレベルを上げるだけでは魔に近づくだけ。


 ガリアは人である為には上位の魂に肉体である器と霊力高める為に鍛える。

 その理念がこの科目にある。

 心身共に鍛えあげ、装備に依存しない強さを身に着けるのが目的である。

 人でありながら、精霊魔法を行使できる民族、クルトの民の強さはここにあった。


 ――そして現代


 レベルアップ、スキルが体系化されていき。

 ダンジョンも人で管理できるようになった。


 効率を重視する余り、時代遅れの体術となっていった。

 一部の騎士や暗部、クルトの民の血族は今でも時代遅れと揶揄する体術の心得はある。


 しかし、国民はそれ程、体術の習得に熱心では無い。

 魔法を習得していれば市内での武装制限もなんとかなる。


 王立学園での体術授業には治安維持の為に体術を学ぶ為だと真の目的は忘れられつつあった。


 授業内容も護身術、捕縛術、それらを生徒のみで組み手を行なうだけ。

 教師はサボるものがいないか監視するのみ。


 座学でスキルの仕組み、創造理念を学び、

 それぞれが木偶や的に向かってスキルや魔法を放って錬度を高め、

 ダンジョンでレベルを上げて総合的な実力を測る。


 これが、今のガリア王立士官学校である。

 そんな形骸化していく伝統ある体術は失われていく筈だった。


 千年前の英雄の再来とも言える男が失伝したスキルを習得をしなければ、


 ――そして、時は動き出す。


 ガリアは再び、千年前の姿を取り戻そうとしていた。


 ◆◆◆◆◆


 学校の理事長がダンジョンの更新作業は魔改造でコアを弄った為、後は自動で組みあがる。


 急激な改造も【魔改造】なら可能だがそれはしない。

 無理な改造はダンジョンの寿命が変わったりバグが発生するからだ。

 こういう所を見れば、ダンジョンも魔物の一種だと改めて分かるな。



 後は、勇者対策の悪巧みをするだけだった為、理事長室に入り浸る日々を過ごしていた。

 リンの書類作業も手伝い、一緒に茶を飲んだり、週に一回の異世界学を教えるだけ。


 そんな俺にある日、リンが切り出した。


「王立学園の入学者と体術の受講者を増やす為、体術の授業を受け持って欲しいんです。」


 彼女は何だか、嬉しいような悲しいような、断腸の想いの様な複雑な表情で切り出したのが気になったが……


 まぁいい。 


 リン曰く、体術訓練はやはり魔術師や女生徒に敬遠されるガチの授業だそうだ。

 暗部や騎士を目指す生徒は必ず覚えるが年々、縮小傾向にある。


 そこで、武器を素手でへし折る体術を持ち、

 ただのパンチが大砲並みの威力を持つ俺がこの授業を受け持つ事に。


 ダンジョン実習と異世界学の二つに加えて三つ目の担当科目【体術訓練】が増えた。

 仕方ないので俺は今まで秘伝にしてきたスキルの触りを教えるのを解禁する事にした。


 やるからには本気だ。

 異世界オタク連盟で、まチャンネルで連日宣伝、広告文句を相談、作成。 


 広告を国中に配信。

 校外からの講義の参加もし、授業料を徴収。

 アニの食費も解決するミラクルな案。


 これが、その広告だ。



 ----


 若さ、美容、育毛、力、無詠唱魔法。


 人々の夢と希望が詰まった秘術【源呼吸】。

 このスキルを生み出した七英雄の言葉が人々を学園に駆り立てた。


「俺のスキルか? そんなに知りたきゃ、教えてやる。 

 学べ!! この世の全てを学園(ソコ)に置いてきた!!」


 美を求める女性、頭が寂しくなった男性は皆、王立学園の門を叩いた。

 世は正に、大武術時代!!!


  (七英雄、アキラと共に伝説のスキルを学ぼう。次代の栄光と美貌はアナタの手に!?)


 授業料 ■■■■

 連絡先 ガリア王立学園 総務部

 ガリア国内 ギルド各支部


 ---- 


 結果、生徒数、受講者数、激増。

 後になって思う……馬鹿じゃないのか?


 ◆◆◆◆◆


 ---ナミ視点---


 ~王立学園 第二演習場~ 


 魔法訓練、戦闘訓練を行なう広い演習場(グラウンド)

 ソコに私とアキラがペアルックのジャージを着て生徒達に夫婦ぶりを見せ付けていました。


「はいダンジョンが工事中の間、体術訓練も受け持つ事になりました。

 ダンジョン実習と異世界学担当講師の渡辺アキラです。」


「同じく、渡辺ナミです♪」


 ふふふ、流石は魔女の称号を持つアニさんです。

 我に秘策アリの言葉に嘘偽りなし。

 理事長に自分の食費を賄える提案としてこの体術講座を提案。


 理事長のリンとここでは一教師のアキラのいちゃいちゃ空間を邪魔しつつ、

 私とアキラさんの時間を増やすこの作戦。

 完璧です。


 アニさんは遠慮なく、学食で無双。

 リィーンさんは臨時収入が手に入る上に、伝統を守れます。

 私はアキラさんの時間が入る。


 三位一体!

 正に完璧な作戦です。


 交渉の際は渋っていたリンですが、アニが耳元でボソボソと呟くと了承。

 向日葵スマイルで返してきましたが、私も女神スマイルで応戦。


 女の無言の戦いはしばらく続きましたがアニさんの言葉が決め手になりました。


「……この国の女神であるナミも加われば、より生徒は集まる。」


 こうしてアニさんのお陰でアキラと一緒にらぶらぶ仕事が出来ます。


 あの後、アニさんに奢った料理の請求書を見てアキラに怒られましたが、そんな事は瑣末な事。

 ふっふっふ、一番、厄介なカグヤはシンという国外。


 これは来ましたわ。

 私のヒロインの時代が戻ってきたんじゃないかな?


「始めに云っておくけど、俺の真似をしても10という臨界者の強さは得られない。

 君達の元々持っている1や2の力と技術を6、7と10に近づけるように教えるから。」


 おや、これはリンさんの妹であるアリシアさんとこの国の王女のクラリスさんにも云ってた言葉ですね。

 個性や素質を改造したりできる固有スキル【魔改造】を持っていながらそれを使わず、本人の資質を伸ばす。


 これがアキラさんの教育方針ですね。


 ああ、やはり教師をしている姿は輝いてます。

 そしてそれを支える良妻な私!!


「ええ、私も見学させてもらいますよ。理事長として。」


 ……何故、ここに理事長(リィーン)がいるのでしょうか?


「り、理事長?お忙しいのでは?」

「いえいえ、今回の講習とシン国から多額の寄付金が送られたので、仕事は消化しました。」


 く、しまったアニさんの食費が浮いた事で事務仕事という枷が外れてしまった。

 加えてアニさんはシン国の五将であるエレノア嬢と親しい。

 彼女の事だから研究費とかでアニさんの職場に送るくらいするでしょうね。


 おのれぇぇアニさん。

 さては、理事長とも取引していましたね。

 あの魔女めぇぇぇ……


 勝ち誇った顔(向日葵スマイル)で私を見るリンに向かって念話をしながら話しかける。

 

 クルトの民の末裔である彼女ならナミの思念を受信できる筈だ。


「そ、それはよかったですねぇ。でも、他に会合とか仕事とかは。」

(私の甘美な時間を邪魔する気ですか?)


「理事長が講師の仕事ぶりや生徒の見回りをするのも仕事の内です。」

(抜け駆けできると思わないことですね。暗部の女は狙った獲物は逃がしません。)


「あらら、それは仕事熱心ですね~」

(千年待った恋なんですから引っ込んでなさい。私の信徒ですよね?)


「いえいえ、ナミさん程では」

(恋は戦争ですよ? また地下深くに封印してさしあげましょうか? 女神様(笑) )


「まぁ理事長ったら。理事長の鏡ですね~うふふふ」

(いい度胸ですね? 月の無い夜道は気をつけなさい?)


「当然です。あはははは」

(アナタも、月夜だけだと思わないように。その時は暗部は全て敵に回るからな?)


「うふふふふふふ」

「あはははははは」


「あ、姉上? ナミ殿? ど、どうか落ちちゅ、おちけちゅいてーーー!?」

「こえぇぇ、ナミさんとシアちゃんのお姉さんが怖いっす。」

「な、なんという邪悪な波動! 暗黒大陸の魔王以上です。 

 やはり魔王の末裔と邪神!! やはり早く、あの男を滅し、ルー様を救い出さねば!!」


 何だかアリシアさん、マリアちゃん、ロマリアのシスターが騒いでますね。

 貴女達も邪魔をすると容赦はしませんよ?


  ---ナミ視点 end---


 ◆◆◆◆◆


 こうして体術の訓練は始まった。

 予定通り、固有スキルに匹敵する【源呼吸】を学ぼうとする一見さんが多い事。


 まぁ本当に健康の事を考えるなら太極拳や武術を学ぶよりラジオ体操でも広めたほうが効果的だったりする。


 武術は空くまで相手を殺す、壊す為の技術だからな。

 太極拳をやるより効果的だったりする。


 創造理念や思想から健康の為だけに開発された運動との違いだな。

 美容目的、健康の為にと来た人には準備運動と称してラジオ体操、後はヨガを伝えていく。


 人数も多いし、俺が集団の前に立ってそれを生徒が真似していくから教えやすい。

 加えて、実際効果のある運動だ。

 その後は空手の拳の握り方から、あらゆる武術の型を一通りやって見せる。 


 裏技【複製】と固有スキル【魔改造】で身に着けた技能。

 知識とヨッシーの【分御魂】で得たスキル。

 マリアの【精神同調】で共有した記憶とスキルがあれば大抵の格闘技は教えられる。


 後は、生徒が元から覚えている武術を通じて教えて伸ばしていく。


「腕を大きく伸ばして、背伸びの運動~♪」


 一挙手一投足を逃さないとする生徒達の必死さが感じられる。

 この授業に失伝し、七英雄の強さの秘密に繋がる。

 皆、真剣に集中して俺の技を盗もうという意欲を感じる。


 まぁ【源呼吸】自体、一種の悟りか呼吸による集中状態になれる。


 本来、相反するエネルギーを混ぜ合わせ、同時に使う高等技法だ。

 (HP)魔力(MP)を呼吸という運用で混ぜ合わて霊気(SP)を発する武術だからな。

 意識的に使うのが難しい。


 それでも霊的素質が高ければ、無意識にでも使える奴はいる。

 ガリアは立地的にも国民の血統的にも霊的素質の高い人間もいる。

 それでも現在、習得しているのは極端に少ない。


 高位の霊的存在と契約関係か血の繋がり、加護、祝福を受ける。

 加えて武術か魔術の素養が高いと発現しやすい。


 七英雄で習得しているのは俺とカグヤ、あとマリア。

 ガリアでは俺の格闘術の師匠に当たるグレアム神父と妹弟子のクレアちゃん。

 俺の一番弟子であるアリシア。 


 それ程に難易度も高いのが【源呼吸】だ。

 実際、俺が習得したのは【魔改造】という固有スキルのゴリ押しと

 白魔法と黒魔法を同時に習得しようとしたのが大きい。


 まぁ平和にダンジョンが完成するまで体術の訓練だ。


 よく見れば生徒の中に勇者一行が混じっている。

 組み手とか申し込んでくるのかな?


 挑むなら相手位しよう。

 今なら体術のみなら百人組み手でもいけるぞ?


 いや、カグヤが混ざったら流石に不味いけど。

 うん、この考えは危険だ。

 フラグでしかない。


 うん、切り替えよう。

 それに剣を持ってこそ真価を発揮する【神剣】の勇者だから挑んではこないだろう。


 まぁ、暢気にラジオ体操してる分には問題は起きない。

 でも、やりたければ何時でも掛かってきなさい。

 俺は逃げも隠れもしない。


 となると、組み手を挑んでくるのは仲間の三名かな?

 武器狩りの魔女。

 王天虎の末裔の猫耳少女。

 それとも十字教会のシスターか?


 あれ? シスターが何か震えてないか?

 見回せば、アリシアとマリアも震えている。


 一体、如何したんだ?


「アキラさん 少々、模擬戦をしません? リンさんと私で?」

「生徒に見本を見せるのも教育者の務め、私は構いませんよ?」


 はい、原因、分かりました。

 後ろの二人ですね。


「やれやれ」


 ◆◆◆◆◆


 ◆おまけ1 


「アニちゃん、今日は羽振りいいね?」


「……うん、今日は請求先は理事長宛じゃなくていい。」


「へぇ~珍しいね。 あ、そうそうこの間まで食材が枯渇しかけてたんだけど、

 なんか、帝国から食材が転移便で大量に届いたからな。食材の貯蔵は充分だぜ?」


「……それはよかった。ここの学食は水準が高くていい。」


「ハハハ、俺もアニの嬢ちゃんが、これだけ旨そうに残さず、食ってくれりゃ気持ちがいいね!!」


「……それで御代は、ここに請求して。」


「え~と……シン国 ゲルマニア領 知の戦乙女(エレノア)様……え?」


「……私の友達。」


「嬢ちゃん、本当に何者だ?」


「……只の魔女。それじゃ、お昼にまた来る。」


「え、あれだけブランチ食べて未だいけるの?」


「……私を満腹にしたければあの三倍は持ってきて。」



 食堂の魔王は後、二回、変身を残しているぞ。


 早く来い、食堂の勇者。

 学生達を飢えから守るために!!


 

 ◆おまけ2


 怯えた人、念話が聞こえた人達。


 ◆マリア(七英雄・悪魔使い)

 ・固有スキルでナミの念話が聞こえる人。

 コメント「このガッコ、怖い事考える人の割合が多いっす。」


 ◆アリシア(リンの妹、アキラの弟子)

 ・元・暗部。

 ・姉の心情を笑顔や圧力からある程度、察せる。

 コメント「あ、姉上、相手でも私は引きません!!」


 ◆クレア(ロマリアの異端審問管3位)

 ・暗部の為(以下略)

 ・勇者サイドの巫女、神官でもある為、信託のスキルでナミの念話が聞こえる。

 コメント「私は彼女の無念を晴らす為に来ました。退路はもうありません。」


 ◆ヨッシー(七英雄・人形遣い)

 ・マリアと同じく固有スキルで保健室にいながら察知。

 ・コメント「リア充、爆発しろ若しくは、nice boatしろ」

次回 明日19時更新

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