花嫁衣裳?
俺たちがフェンリルを求めてルーシに向かい、フェンリルの主を決めるために馬鹿やっていた頃、居残り組の七英雄の二人、人形師 田中ヨシツグと伊藤カグヤは下準備というか水面下で動いていた。
これだけ聞くと
A・他の七英雄や諸外国、召喚士達の対策をとっている。
B・サプライズパーティかドッキリの企画
C・お前もかブルータス
この3つなのだが、この二人に限ってはそんな展開は無い。
あの二人が起こす問題は常に最悪の事態を想定するべきだ。
奴らはそれの少し斜め上に行く!
と、某異星人の護衛隊長が言っていた。
七英雄中、最も多くのスキルと戦力を保有し医学知識にも精通する【人形師】
七英雄中、最強の攻撃力と武術、カリスマ、不死性を備える【戦女神】
こんな肩書きや戦歴に騙されてこの二人の本質を忘れてはいけない。
俺はいかに、優れた技能、容姿、才能があったとしてもこの二人の人格とか嗜好、行動力に目を向けなければいけなかった。
何故、フェンリル相手に俺が出向く必要があったのだろう……
今となっては後悔の念が多い……
マリア一人でも十分にフェンリルに勝てたし、そこにアニとアデーレという強大な戦力がいた筈だ。
普段は止める立場に居るはずだったファン宰相とビビちゃんが、この二人の背を押したのも大きいし、うちの女神達まで加わったのも大きかったのだろう。
過去をやり直せたらなんて、日本にいた頃、体を故障した当時でも思ったことはないのに、俺は今、まさに後悔している。
「イヤ~ ガリア服飾店のおっさ……もとい、店長が手伝ってくれたおかげで思いの他、いい出来になったわ~」
「あらん♪ こんなことならいつでも呼んでくれていいのよん♪ ヨッシーちゃんにはいつもマネキンを大量に作ってもらっているし、カグヤちゃんには、何時もいいアイデアをきかせてもらえるものん♡」
「ふふふ、依然は話だけで悔しい想いをしましたから、コミケの出店させるためにアニさんとは違った意味で招待していたんですよ。」
「………罰当たり者に死を罰当たり者に死を罰当たり者に死を」
七英雄という、個性が強い異世界人に加え、呪詛の念を吐きまくる人工聖女がいる中でも薄まることのない、異彩の空気を放ち、筋肉でパッツンパッツンになった半袖、半パンのタキシード服を纏いカマ言葉を使いこなし、クネクネと動く生き物の幻覚が見えた。
というか、一刻の女王をちゃん付けで呼ぶな。
夢や幻だったらいいのに、何度頬をつねっても夢はさめず、目を擦っても幻覚は消えない。
そう、俺にとっての鬼門 薔薇宮殿の店長、オカマスタイリストとの三度目の邂逅だった。
女性専門店に男一人で入るとか、そういうシチュエーションじゃ無ければ、俺もあの店長にここまで苦手意識を持たない……
だが、時期が悪かった……
なんていうかその……
「さぁ~てん♪ あきらちゃんの為に用意した花嫁衣装……楽しみだわ~」
……女性化している時に会いたくなかった。
だがいくらなんでも罰ゲームだったとしても……コレは酷いんじゃ無いか?
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