審問会
修正しました。
※は引用文です。
誰にでも黒歴史というものは存在すると思う。
この世界は確かに現実ではあるが、幻想の要素が強い。
鈴木氏の時もそうだったが、俺の技能、【魔改造】や工夫を凝らして創作した【裏技】は中二病患者が大好物な要素が多々あり、この世界というか、国の人間にとっては尊敬や畏怖を集めるが、同郷の人間が其れを見ればどうなるだろうか?
~宮廷内 会議室~
会議室の入口には【審問中】と達筆で書かれた看板がかけられ、中庭に仕掛けられた監視カメラの役割をなす映像記録石(魔石加工品)に録画された映像が会議室のスクリーンに映し出され、俺の勇姿?が映し出されている。
「ナベや~ん?さっきの技、漢字にルビ振ってるやろ? どんな漢字で書くの?おじさんにだけ教えてくれへん?(笑)」
「み、皆さん、そのくらいにしてあげて下さい(笑) せ、先生ののライフはもう零ッスよ(笑)」
「これは有用な証拠物件ですね・・・被告人 渡辺アキラを中二病と断定し精神病院に入院することを推奨します!」
「なんでだよ! 議題がすり替わってるぞ、オイ!」
ニヤニヤしながら痛いところを突く包帯ぐるぐる巻きで重症なフィギュア造形師(何があった?)
笑いをこらえて俺を庇う、同人作家
裁判官のコスプレをして笑いをこらえながら判決を下す、レイヤーに俺は抗議の声を挙げる。
笑うオタク三人衆、騒ぐ中二病 容疑をかけられた俺に同席しているエレノア、公聴席にいるルー、テレサ、ナミ、セイラ、ビビ、アニは異世界人達は何が面白いのかと揃って首を傾げる。
何この状況? 公開処刑か?
◇◆◇◆◇◆◇
エレノアとの決闘騒ぎは、俺が本気一歩手前のアウタースキルを使った事で決着がついた。(本気は魔改造使用時)
だが決闘の経緯を聞き出し、禍根を残さない様に動いたところで、カグヤが乱入し、遅れてユイファン宰相、大正女学生服のテレサと疲れた様子のルーが来て、遅れてビビと彼女に引きずられる様にヨシツグ(のように見えなくもない血みどろの肉塊)がやって来た。
「経緯は兎も角、私の来賓相手に決闘を仕掛けるのは許しません。」
と、執務をサボる口実を見つけたカグヤが審問会を開くことになったのが事の始まりで、急遽、関係者が集められて審問会が開かれたのだが、証拠品である記録映像の決闘の終盤当たりで俺が使った裏技の場面で見事にオタク三人衆の琴線に引っかかたようだ。
「カグヤさん? アキラはその、チューニ病という病気はどういった病ですか? 察するに精神的な病?のようですが」
ナミが首をかしげながらも病と精神病院という単語を聴いて心配そうな顔つきでカグヤに問いかける。
「ええ、かなり重い病です。私たちの世界では、思春期、多感なお年頃の少年、少女がかかる病気で初期症状は意味もなく、奇行な言動をとったりして、腕を抑えたり眼帯をつけたり、包帯を巻いたり、芝居がかった口調をするなんていう症状がでる重病です。 残念ながら、アキラさんの年で発症する人は・・・クッ」
「そ、そんな」
オイ止めろ。ナミとテレサが、なんだか癌を告知された患者の身内のような悲愴感を秘めた表情になっているぞ。
二人は真剣に思いやんでいるが、完全にカグヤの悪ふざけの賜物だぞ。
というか七英雄のオタク三連星が笑って俺をからかってる時点でそんな深刻な問題でないことは察せるはずだろうに、相当冷静さを失っているな。
「わ、妾の主は大丈夫なのか? わ、妾の血を飲めば、治るんじゃよな?」
「そうです、それに闇の大精霊たる私の蘇生術、死霊術をもってすれば!」
「いえ、お二人だと逆に悪化するのでは?」
吸血鬼の真祖と闇の大精霊にカグヤはバッサリと答える。
確かに彼女達は存在自体が中二病の代名詞だし二人の治療法だと俺は吸血鬼かリッチに転生してしまうだろうから確かにあらゆる意味で悪化するだろう。
「うう、契約者、それも再び愛する人を失うなんて、私、私は・・・」
「そ、そんな妾は無力なのか?」
無力感に打ちひしがれるナミとテレサ。
「あ~ナミ?テレサ? 本当に何でも無いから。 カグヤ達のいつもの悪巫山戯だって。」
「隠さないで下さい! アキラ! 私を気遣ってくれるのは痛いほどわかります。でも正直に話してください。 限られた時間の中でも私、精一杯アキラの事を!」
「アキラ様! 無力な私を許してください(泣)」
どうやらナミとテレサの中では中二病とは死につながる不治の病になっているらしい、確かに黒歴史を暴かれるのはある意味、自己嫌悪で死にたくなることもあるが、不治でも死の病でもないからな?
「何度も言うが俺は中二病じゃ無いっつってんだろ! というか議題がすり替わってるっての!! 見ろ!!被告人席のエレノアがあまりの急展開な事態においてけぼり食らってるから!」
本来の審問所の被告のエレノアが呆然として事の成り行きを見ている。
「そんな、私は死に瀕した重病者相手に私は・・・私は!」
「お前もか?お前もなのか天然娘?」
クソ! 天然暴走列車のエレノアが違う意味で自分の行いを悔いている!
「いい加減に認めたらどうですか? さぁ、中二病末期患者に堕ちましょうよ~」
「俺は中二病なんかじゃない!」
「ナベや~ん?そんなラノベのタイトルのようなセリフで言われても説得力ないで?」
やかましい!
「体は大人、心は中二ってのもいい響きッス~」
何処が!? 最悪じゃ!!
「ま、このへんで前フリは置いておいて」
カグヤのその言葉に頷くヨシツグとマリア
「前フリ!?」
アレ?何?もしかして俺って振り回されてた?こういう役どころってガコライかルーじゃ無かったか?
「エレ? アキラさんは友人の手柄や知識を奪うような卑劣漢ではありません。寧ろあなたがアニさんの名誉を奪ったと思って奮起した様に、アキラもアニさんがそんな目に合えば同じ想いに成ったはずです。それに他人の手柄を奪ったり、名誉を汚すようなつまらない人間と私が付き合うと思いますか?」
おお、普段の戦闘狂でもヤンデレでも、セクハラ大魔王でもないカグヤが真剣な眼差しで、それも子共を諭すような雰囲気で部下に語りかける。
「どうですアニさん?アキラさんにそのような事をされた覚えがありますか?」
「……無い、アキラにはレシピや調合薬の意見交換はしても知識を奪われた覚えはない。 寧ろアキラの新しい知識(主に料理面)は非常に助かっている。 それにアキラはまだ駆け出しの頃から自身の体で治験を行っていた。 ガリアの秘薬と呼ばれる栄養剤兼治療薬は私と出会う前から露天で出しいていた物。アレは私の作品じゃない。」
おお、無口なアニが料理の話題以外でこんなに話すなんて珍しいな。
「エレ、友のために七英雄に立ち向かう姿、研鑽した魔法技術は映像でも分かりましたが、勘違いとはいえ、あなたがとった行為はアキラの名誉を汚す行為です。私の客に対する狼藉よりもそのことが私には残念でなりません。」
「へ、陛下。」
自分のしでかした事に気付いたのだろう。
完全に俯くエレノア。暴走しがちだが根は真面目で友達思いの少女だ。
この世界、時代においても珍しい貴族の義務を体現する彼女はいかなる厳罰も受け止めることだろう。
反省し、打ちひしがれたエレノアの姿を見ると、どれだけ鍛え上げてきたか?魔法関係でマリアに見学させようなんてことを思って安易に決闘を受けた俺も悪い気がしてきたな。
「申し訳ありませんでした。ワタナベ卿。 私のような者が謝罪を口にしても赦されざる事は分かっております。 いかなる裁きを受けいれその身を持って償わせてください。」
俺に向き合い、心底反省し、謝罪するエレノア。
だが、俺の言葉は審議がどういう結果になろうと決まっていた。
「その謝罪、確かに受け取ろう。 だけどアレは決闘だったろう?どういう経緯があったにせよ、両者、合意の元に技や神秘を出し命と誇りを賭けて闘った。 決闘とは法の元に行われる両者合意で行われる行為だから、こう言っては矛盾するかもしれないが、あの戦いで負けていてもゴネる気はなかったよ。」
自分の罪を懺悔する者に『気にするな』とかいうセリフや態度はある意味残酷な事だから彼女の謝罪は受け取るが決闘とは本来、ジャンケンやコインの様に揉め事に対する一つの決着のつけ方だ。
決闘で決着がついた以上俺もそんなに気にしていない。大体、このカグヤ主催の審問会事態、俺の黒歴史発掘会の体をなしている。
決闘で決着がついた以上、あれこれ物言いする事自体、無粋だろうに。
「ワタナベ卿……」
「でも、ちゃんと決闘の報酬は頂くけどな?」
勝ったら相手の言うことを聞くという報酬。 忘れたとは言わさんぞ?
*「上げて、落とすとか、ほんまにナベやんは鬼畜やな ソコにしびれる「憧れる(っス)~♫」」
「あ、あの結局、アキラの患ってる病というのは命に別状はないのでしょうか?」
変な空気に名言をハモるヨシツグとマリアのセリフに未だに俺の中二病疑惑に混乱するナミの言葉がかき消されながらも審問会はお開きになった。
◇◆◇◆◇◆
「さて、カグヤ様? 執務室から離れる大義名分の決闘騒ぎも解決したことですし、執務活動に取り掛
かってもらいますよ? 終わるまで執務室に拘束しますのでそのつもりで。」
「アキラさ~ん! お願い!決闘の報酬の『何でも言うことを聞く権』をエレノアに私の仕事を代わってもらう様にお願いして~!!」
*「だが、断る! この渡辺・アキラの一番好きな事は自分が強いと思ってやるやつにNOと答えてやることだ!」
次回からチャクチャクと話を進めていきます。




