賢者対賢者 その2
まとめました。
アキラside
普段から効率重視の為に、省エネモードにしている現呼吸の気の出力を上げて白兵戦で勝負を決める。
概念崩壊の法則(銀の弾丸)は使わない。
ゴーレムには石化解除、魔法体には退魔の剣アンデッド系には回復薬といった存在を崩壊させ、一撃で葬る俺の18番、【銀の弾丸】(概念崩壊の法則)は対象を特定し弱点をしらなければ使えないということは俺が学園で公表したため対抗手段は広まっている。
故に正確には使えないというのが正しい。
エレノアは俺との対戦経験、情報をまとめ、対策をとってきているから、弱点を絞らせない様に召喚する魔物のレパートリーがあるとみていいし、尚且つ一瞬しか現れるなら当てることはできない。
全能力を底上げして【縮地】でエレノアの眼前に飛び込む。
【拳闘術】で連打・・・想定以上の速度と攻撃力を持って力技で勝負を決める。
加速した思考の中、エレノアの周囲に空間が歪み魔物の腕が出現する。
今度は、部分召喚で剣山のような鋭い体毛を纏った魔物の両腕。
正面に殴ったら痛そうなものだろうし、普通はひるむ。
拳での攻撃対策に用意した魔物だろうが・・・
構うか!!
「ラァァァァァァァァァァ!!!!」
「ハァァァァァァァァァァ!!!!」
剣山の様な拳と俺の拳の打ち合いが始まり、拳による弾幕、拳圧がぶつかり合う。
俺の争奪戦の時、暴走した俺の生徒と弟子が引き連れたガリアの近衛騎士隊を全滅させた拳によるノータイムで放たれる暴力の嵐が吹き荒れる。
出力を極限にまで上げた現呼吸の気で強化された俺の攻撃力は精霊化時の攻撃力に匹敵する。魔物風情の両腕やエレノアの対物理障壁毎、打ち抜き勝負が決まるはずだったが、どうやらまだエレノアのターンは続くらしい。
「あたた・・・俺の源呼吸の気で強化された俺の拳に傷を付けるなんて・・・」
「有名になるのも考えものですわね・・・今迄弱点を突かれて貴方に葬られた魔物に弱点を突かれる気分はどうですが?」
腕を組みあふれる巨乳を腕で抑える余裕顔のエレノア(ご馳走様です。)
だが、そんな彼女の双子山を注視できないものが彼女の周囲と召喚されている魔物の腕から立ち上っている。
「へ~【源呼吸】・・・体得していたんだ。」
「切り札を不用意に使いすぎましたわね。以前の国境での戦いに、ガリアでのバカ騒ぎでカグヤ様だけでなく、ユイ(ユイファン宰相)の前で幾度も其れを使いすぎました。」
成程、彼女達経由で習得したのか。
「このスキルは魔法使いのスキルより、気の使い手である東方の武術、仙術側のスキル・・・武神、戦女神の二つ名をもつ、カグヤ様と龍脈を読む気の最高峰の使い手にして、精霊巫女のユイである二人にとってこのスキルの仕組みを理解し会得する事は容易でしたし、元々賢者である私が会得できるのも容易というものです。 私たち、帝国最強の戦乙女をあまり侮らないことですわね。」
あ~確かにこれは失態だった。確かアリシアもいつかの【カグヤ、学園ダンジョン乱入事件】でカグヤと交戦経験があったし、その時にアリシアが使っていた(だろう)【源呼吸】を見ていた(筈だ)し、俺もカグヤとデートという名の殺し合いの際にも何度か使用した。ユイファンもクラリス同様、シン国の皇女にして精霊因子を持つ【火の大精霊】の【精霊巫女】、尚且つ東方の【仙術】、龍脈の概念を知る人間なら体得もそう難しいものではない。
故に戦力強化か、知識欲の高い賢者のエレノアがこの技術を知り、短期間で習得したのも納得がいく。
見たところ、エレノアは【源呼吸】を応用して契約した魔物に源呼吸の気を補助魔法としてかけることで俺の猛攻に耐えれる高位の魔物(恐らく、人狼か雪男)を更に強化したということか・・・マグドレア親娘は気を物質化して【剣の鎧】にしていたが、彼女は【源呼吸】の気を他者に補助魔法として掛ける事ができるのか・・・
状態異常を無効化し、人間の限界点を超える【源呼吸】の使い手は俺にとっては天敵になりうる。
【精霊化】と違って契約している精霊の弱点が反映されない上、非常にやりづらい・・・それが基本スペックが人間の其れを大きく上回る高位の魔物が纏うとか悪夢以外でも何者でもないな。
「詰めですわ!」
「クックック、詰めだって? この程度では詰が甘いぞ?」
突然、笑い出す俺に、少々引くエレノア。
いや、本当に笑える。
俺自身、本来の在り方を忘れていたのだから、自分は最強では無いと自覚もしているし、自重もしていた。
そうじゃあない。
「忘れたり(俺自身もだが)勘違いする奴が多いが・・・・・・俺の強さは【銀の弾丸】のような【一撃必殺】の攻撃力でも【臨界者】でも【固有スキル】でも、【大精霊の契約者】でも無いし、【源呼吸】や【古代魔法】のような【遺失技能】でもないぞ?」
俺はこの世界の理を、物語の謎を解き明かし、どんな難関や強敵をも知恵と熱意で踏破してきた。
「第一Rは魔法戦、第2Rは格闘戦・・・・・・だったら最終ラウンドは頭脳戦かな? 七英雄【攻略者】アキラ推して参る!」
宣言とともに【縮地】でエレノアの背後に移動する。
音も無く、背後からの奇襲攻撃、だが空間が歪み部分召喚魔法でキメラの両腕が現れ【源呼吸】で強化された腕力と爪の斬撃が俺に襲いかかる。
だが、その攻撃は全て空振りに終わる。
まるで、すり抜けるかのような絶対回避、そしてそこからゼロ距離攻撃魔法。
「裏技【名古屋撃ち】!」
掌を背中に軽く押しあて、大地を踏みしめてそのエネルギーを腕の引き手、溜めずに放つ【寸勁】、【無拍子】【無詠唱魔法】のコンボによる掌打がエレノアの華奢な体を吹き飛ばす。
並みの使い手が相手ならこの瞬間に勝負が決まるが相手は帝国の戦乙女の一角。
吹き飛ばされながらも風魔法で空気のクッションを作り上げ、衝撃を逃がし、即座に回復魔法で体を癒す。
「裏技 【魔法反射万華鏡】」
俺の魔法を跳ね返す白魔法【反射】の障壁を俺の周囲に万華鏡の様に展開し、自身に光属性黒魔法【光線】を放ち、エレノアの魔王障壁と現呼吸の気を貫き彼女の肩を光線が貫く。
「━━━━!!!!!!」
声にならない悲鳴を上げるエレノア。
悲鳴を上げないのは流石と評価するね。
この状態の俺に魔法は通じず、全て何倍、何乗もの威力になって跳ね返る。
某幻想のゲームを参考にした攻撃魔法を反射させ、魔法障壁を貫通する攻撃魔法。
反射する特性を万華鏡の様に光を閉じ込め一点に収束して何倍もの威力を持たせて放ち、魔法障壁をも貫く裏技だ。
本来なら白魔法の【反射】と黒魔法の攻撃魔法を同時に使用する為、二人以上のコンビ魔法で行うのだが多重障壁、それも万華鏡の様に反射する配置を行い、それも無詠唱魔法で即座に何枚も張って行った攻撃手段。
たとえ、無詠唱で威力が落ちようと、レベルが低かろうと開放するまで、何度も反射し続け無限に威力を上げ、魔法障壁を打ち破る程に高めた高等技法だ。
内側から焼け付く痛みを源呼吸の治癒効果と回復魔法で治癒を続けるエレノアに近づき声を掛ける。
「まだやるか?」
「・・・・・・当たり前ですわ!」
召喚攻撃の射程範囲内に入った俺に先の格闘戦に挑みかかるエレノア。
物理攻撃なら通じると思ったのだろう。
空間が歪み攻撃がくるより早く、俺は後の先を取る。
「遅い!【魔法施錠】」
魔物の攻撃が召喚される前に先の魔法戦で使用した魔法開錠の鍵を虚空に突き刺し、鍵を通常とは逆に右回しに回す。
「鍵ってのは開錠するだけじゃない、施錠する役割もある。術式を施錠して召喚獣を閉じ込めて封印した。」
彼女のアドバンテージである魔法、格闘術を封じる。
「な・・・・・・」
「チェックメイトというのはこういう事を指すんだよ 賢者さん? それとも悪あがきに格闘戦を挑むか? あまりオススメはしないが。」
手刀で魔法剣 【氷結剣】を作り出して彼女の首に突きつける。
今度こそ、自身の敗北を悟ったのだろう。
「私の負けですわ・・・」
エレノアは俯き、敗北を認めた。
さて、このあとはお楽しみの罰ゲームだったな。
彼女に請求する勝利報酬をどうしたものかな。




