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異世界攻略のススメ  作者: 渡久地 耕助
集いし英雄

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召喚者の目的?

 

「カカカ、異大陸で鍛えられた猛者二人に完勝するとは・・・これは評価を改めるべきかの?」


ゴウタロウとニノの二人に睨まれてなお、余裕の笑みを浮かべる壮年の召喚者。


「しかし、惜しい、惜しいのぅ 主らは儂の話に耳を傾けるか、そこの今代の勇者の小僧の忠告どうり、逃げるべきじゃった。」


「は? 誘拐犯の上に、戦争を企ててるクズの言葉に耳を傾けるかよ。」


「それよ・・・主らは儂らが、どういった目的で戦争を起こし、何故、態々、異世界から主らを呼び出して戦わせ合うという無駄な過程を踏んでいるかに疑問を持たず、何も知らずに、自身の正義感や理不尽に怒りを覚え、矛を此方に向ける只の童に過ぎん。」


「大仰な口を叩くな爺さん。どんな大義名分があろうとお前らがやっているのは許されざる悪行だ。」


「カカカ、世界の真実を教えてやろうというのに、イキナリ襲いかかったから身を守っただけじゃがの? まぁ良い、屈服させてからゆっくり調教するとしようかの」


 言葉が終わると同時に、老人の傍に控えていた護衛二人の姿が掻き消え、一人はゴウタロウを組み伏せ、もう片方はニノの首筋に短剣を突きつけ、動きを止める。


『な!?』


 二人は一瞬、何が起こったのか理解できなかった。


 臨界者・・・その中でもトップクラスの実力を誇る七英雄と番外位の二人の知覚出来ない速度と膂力で押さえ込まれるなど、完全に理解の外にあったのだ。


 黒いフードを深くかぶった護衛・・・・・・召喚者の護衛が只者では無いとは思ったが、真逆自分たちより強い存在とは思えなかった。いるとすれば此処にはいない他の七英雄だけだ。


「カカカ、たかだか、一年数ヶ月でこの世界の頂点に立てたと思ったか? 東方やお主らの国の言葉では『井の中の蛙大海を知らず』という奴じゃ。それとも主ら英雄と祭り上げられた者達は『猿山の大将』といった所かの。」


一瞬で形成が逆転した・・・・・・いや、初めからこの戦いは詰んでいたのだ。


これほどの化物が相手側にいたとは・・・完全に認識を誤っていた。


「これ程の手駒を持っていて何故、俺たちを呼び出した!? 何のためにこの世界で殺し合わせようとする!!」


 組み伏せられ、身動きの取れないゴウタロウが壮年の召喚者を睨み、怨嗟の叫びを挙げる。ニノも頚動脈に短剣を押し当てられ、身動きがとれずにいるが考えている事は同じで目で訴える。


「カカカ、じゃから其れを教えてやると最初から言っているだろう? この世界の真実、そして是れを聞けば、主らはもう儂等の忠実な駒になる他ないがな。」


 そうしてカカと笑い、年老いた召喚者が世界の真実が語られた。


 そして彼らは世界の真実を知った。


 


■ □ ■ □ ■


 ~ガリア 別荘~


アキラside


【精神同調】【分霊】で集めた大量のスキル情報を【魔改造】で纏め上げ、この世界からの帰還方法が完成したこと、その為に召喚者を捕まえる必要があること、その障害となるのが、鉄人、海賊王、駆除屋、勇者の他の四人である事を告げた。


 さっきまでオタク談義に花咲かせていた面々も神妙な顔をしている。


「・・・・・・正直、驚いたで・・・元いた世界の帰還するスキルをこんな短期間に編み出してまうなんて。始めてナベやんとあって一年でここまで来るとは・・・」



「いや、コレは田中と佐藤の協力があってこそだ・・・俺ひとりだったらもっと時間がかかってた。」


 実際、諸国外周でスキルや古代遺産の発掘、古文書などでスキルを集めるはずだったのだ。


 佐藤の【精神同調】で俺と田中、佐藤の三人のスキルを共有し、【魔改造】で元いた世界へ帰るスキルを編み出した

 


「帰れるんスね! 直ぐには無理にでも家に帰れるんですね!?


 先生凄いっス! 約束して1週間も経たずに帰える方法をここまで形にするなんて!」



「佐藤さん少し落ち着きましょう。召還者を捕まえるのがこの作戦の肝でしょう。 その辺はどうなのですか? アキラさん。」


 カグヤが冷静に今の状況を分析する。 


 そう、何処にいるかもわからない召還者を捕らえる事、いや見つけ出すのがこの作戦の肝だ。


 障害になるだろう七英雄、国家など瑣末な事だ。


 慢心では無く、そう言い切れる為に俺は今迄この世界であがいてきたし、その準備も整えてきた。


「帰ることに関しては問題無い策もある。 だけど、帰ることと関係は無いと思うが、召喚者の目的が気にかかる。」


「召喚者の目的・・・ですか?」


「ああ、この世界に俺たちを召喚しなければ戦乱は小規模な小競り合いだけで、カグヤの様に周辺国家を併合して世界統一に近づくような事もなかった・・・なのに戦乱の芽になるような俺たち異分子を各国に振り分けたのは戦争の起爆剤として大規模な戦争を起こす事が目的だと思っていた。」


「・・・でも私たちは文化や技術発展で世界に貢献してきてるっス。戦争なんて起こす気もなかったス!」


 マリアが居たたまれず、俺の意見に噛み付く。


 確かに俺たちは生きるためとはいえ、拙いながらもこの世界には無い、文化、技術、思想を持ち込んだ。 ソコに戦いを誘発させるような意思など無い。


 だが・・・


「技術の発展は戦争の引き金に変わんねん。 新兵器を作らなくても技術が発達し、其れを悪用すれば戦争の被害は拡大するし、新しい思想を持てば現在の支配や統制を疑い、反乱を起こすものも出てくるんや。 またその逆で戦争によって技術が進歩することの方が大きい、医学や兵器なんてその際たるもんや・・・」


 田中が俺の言わんとすることをマリアに噛み砕いて解説する。


 医者である田中の言葉には説得力のある重みがあった。  


 戦場という巨大な人体実験場で医学は発達した過去があり、人をより効率的に殺すために数々の兵器が生み出されたし、様々な技術が人殺しの道具へと姿を変えた。


 事実、俺たちの世界でも技術の発達が戦争に流用されてきた事は歴史でも証明されている。


「話がそれていますね。アキラさんは彼らが私たちを喚びだして戦争を起こすのは過程や手段に過ぎず、本来の目的が戦争の後にあるのでは無いかと懸念しているのですね?」


「ああ、この戦いが召喚者達の争いで俺たちが駒だとしよう。


 だが戦争がしたいだけならこの世界の住人でやればいいだけだ。


 事実、ロマリアには臨界者がいたし、刺客として俺を殺しにも来たし、洗脳することも可能なら俺たち異世界人を呼び出さずに洗脳で国家間で戦争を起こせば事足りる。


 何か俺たちを召喚して成長させて戦わせる理由がある筈だ。」


 思えば、初めからおかしかった。


 何故、大精霊の契約なんていう機会を残す?


 千年前の焼き直しになる大精霊という反乱要素をそのままに残す理由なんて無いだろう。ロマリアの様な組織、宗教でもなんでも使って封印していればいいのだ。


 それに千年前の最後の戦いはガリアとロマリアの勇者。 それもこの世界の住人・・・正確にいえば大精霊の番である闇の大精霊(イザナミ)光の大精霊(ルー)の兄達、人の形をした召喚獣だ。


 召喚獣であり、人の戦いに参加した以上、マリアの様に、召喚する契約者が二人存在した筈だ。


 そしてアキレウスは敗れたが、ロマリアの軍勢がガリアに攻め込む前に、先代の闇の大精霊、アキレウスとイザナミの父が光の召喚獣(ルーの兄)を軍勢毎封印したことで戦争が集結してしまっている為、最低でも二人、当時召喚された異世界人が生き残っているはずだ。


 つまり千年前の戦争は決着がついていない事になる。


 では、その契約者である当時の異世界人達は何処に消えた?


 

 仮にこの戦いを召喚戦争と呼称して、この戦いの真の目的はなんだ?


 只の召喚者達のゲームや賭け事なら問題無い、当初の目的通り、ぶん殴るだけだ。


 だが以前、マリアの協力の元、【精神同調】のテレパシーを使っての宣戦布告をした時、一人の召喚者が言っていた言葉『手駒どもは生贄だ・・・死にゆく際にあの膨大な魔力を解き放ってもらわねばならんのだ。』この言葉が気にかかる。


 俺たちは生贄らしい・・・・・・そして死ぬ際、魔物が放出するのと同様に魔力が四散するらしい。それも膨大な量で。


 ・・・七人の英雄と同じ数の七柱の大精霊。


 これは偶然か?


 うまくいけば、異世界人全員が反逆する危険性がある。 


 その不安要素に目をつぶってまで大精霊の契約の機会残す理由はなんだ?


 目的が俺たちが死に際に放つ膨大な魔力それも英雄として祀られた者や大精霊の契約者の精霊化の恩恵で得られる破格の魔力が目当てなら・・・

 

 そして外から俺たちを呼び寄せる必要性・・・


 死んだアキレウスが何故、異世界である地球へと渡って転生した?


 これらを統合して導き出されるのは、召喚者の本当の目的は戦争の後にある。


「・・・ナベやん? どうした顔、真っ青やで?」


「・・・いや、何でも無い。 取り敢えず、召喚者の目的を抉くためにもこの世界を脱出しないとな。


 そのスキルも佐藤と田中の協力の元、完成したから後は刺客を撃退しつつ、召喚者を燻りだして捕獲しよう。 そうすれば、地球へと帰る為の座標位置を佐藤の【精神同調】で調べ出す事ができる。 元いた世界、時間に帰れるぞ。そうすれば俺たちは元いた世界に帰れるし、召喚者達の思惑も崩せて一石二鳥だ。」


「そうっすよね! では刺客を全て返り打ちにしつつ、その時を待ちましょう! そしてコミケを開くっす~♬」


「・・・ま、探せ言われても見つけようが無いしな・・・銀冠穴熊の状態・・・ワイらが固まっとれば刺客も返り討ちにできるし、しびれを切らして向かってくるやろ・・・いっそかぐヤンのとこに引っ越そか?」


「あら♬ それは歓迎です。 ただし、田中さん、あなたはダメですよ?」


「なんでや!?」


「私が盛りの付いた野犬の前に餌を放り込む愚か者に見えますか?」


「あ~ あの時の事はカットなってやりました。今は反省しています。」


「カグヤ。 俺からも頼む。 このバカが暴走しないようにこの人形を渡しておくから。」


そう言って、藁人形と五寸釘をカグヤに渡す。


「まぁまぁこれは♪ そういうことでしたら入国を許可しましょう。」


「ちょ! そんな!! ナベヤン!一番渡したあかん相手に其れを渡さんといて!! ワイらマブダチやろ!?」


「・・・え?」


「え? や、あるか━━━━!!」


 とにかく、情報不足の現状ではこの考えは俺の憶測に過ぎない、今は戦乱の芽を極力つぶして、召喚者の一人でも捕獲に専念しないと。


 この夏はしばらく、カグヤのところの帝国に世話になるとするか。


 田中の魂の叫びを聞き流しながら、俺は不安を打ち消した。


 しかし、この時、既に事が大きく動き出していた事に俺は未だ気づいていなかった。


アキラside end



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