次元が違う。
ちょっと短いです。
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有難うございます。
夜も更け、静まり返ってアキラ達が眠る別荘に向かう、影がいた。
単独で七英雄三名+αと大精霊二柱を相手取る実力を有する刺客……
昼間にしくじった第四位の暗殺者を超える怪物が其処にはいた。
「ええ、夜やな…そうは思わんか?お嬢ちゃん。」
人形師・田中 七英雄切っての技士が別荘の屋根の上で、侵入者を迎えた。
「……」
彼女は答えない。
昼間、自分の同僚を赤子の手を捻るが如く、葬った男を前にしても彼女は全く揺るがない。
標的の一人がいた。
只それだけだ……
「わかっとると思うけど、此処は私有地や、お嬢ちゃんを傷つけたないから、帰んなさい。」
対して、田中は内心、驚いていた。
霊視、透視の特性も併せ持つ固有スキル【診察眼】を持ってしても、彼女のステータス、弱点などが看破出来ないのだ。
田中が知る由もないが彼女が来ている白魔道士の制服は歴代、聖者、勇者、聖女の遺体を包む【聖躯布】で編まれた聖遺物なのだ。
強力な結界を発するアースの最高峰の防具。
外界からの攻撃を完全に遮断する為、透視能力もこの聖躯布の結界に阻まれたのだ。
昼に現れた男とは桁を超えて次元が違う……
油断無く、構え……彼女が中庭に踏み出した瞬間、彼女の姿が掻き消えた。
「……は?」
瞬間移動!? 転移!? それともステルスか!?背後、足元、上、全方位を人形を通して死角を消している。
ステルスだとしたら、自分の【診察眼】では捉えきれない……糸を全方位に張り巡らそうと考えに至ろうとした時、少女が消えた場所に穴があいていることに気付く……
「あ、あの穴はまさか……」
「チッ 田中の為に端正込めて掘った落とし穴だったのに。」
田中の隣にいつの間にか、パジャマ姿のあきらが腰かけていた。
「え、え~……」
一触即発の空気を落とし穴という古典的な罠で勝負をつけてしまう男。
その名も外道王 渡辺 アキラ。
「主人公にあるまじき外道やな…」
「俺は戦うのが好きなんじゃない!勝つのが好きなんだよ!!」
「どこの軍団長やねん、彼女もいろいろ用意してきたやろうに エゲツナイな……」
「落とし穴の底は【混沌の沼】を仕込んだドラム缶だ。 さ~て海に沈めるか浮かすかどうしよ。」
「完全にあっち側の思考やん。 ん?待てよ俺の為に仕掛けたって?」
「……さ~て楽しい尋問の時間を始めるとしようか」
「オイ! 流すなや!」
強さとは別の次元にいる男アキラ。
手段を選ばない男。
自分の親友?が敵に回らなかった事に感謝しつつ、召喚者と他の四人の七英雄の未来に冥福を祈る田中だった。
ただ、強いだけではアキラに勝てません。
アキラを上回るセコさが必要です。




