リスク
田中家とカグヤがいる理由。
~海水浴、出発前夜 自由の槍 事務所内~
何故、家族水入らずの海水浴に部外者の田中家とカグヤがいるのか説明せねばなるまい。
「美人居るとこにワイ、在りや!」
「義父のお守りです。」
「この世でアキラさんとユイファン以外に私を止めれる人なんていませんよ~」
うん、カグヤを止められるのが俺と、宰相のファンだけなのは知ってるし、神出鬼没の彼女に今更驚かない。田中は、花粉症(本当にそうなのか疑わしいが)を克服したのか最近、本体で来るようになったので、ウザさが増した。コイツは要らないので、抹殺するか……でも何時ものノリで頭を潰す訳にも行かないし……
「あががが、割れる!頭割れちゃう!脳みそがズルンってでちゃううう 美人の細腕でなんちゅう握力を……でも、この隙に、その胸を揉ませt ぎゃああああ出る!出ちゃううう!!!!」
「あきらさん、義父の不始末は私が着けますのでこのあたりで……御勘弁を。」
「……悪い、無意識で何時も通り握りつぶすとこだった。」
習慣って恐ろしいね。
「あ~死ぬかと思た……ちょっとワイの扱い、最近酷くない!?」
「ッチ、未だ生きていたか。」
「あ、あのナベちゃん? いま舌打ちしませんでした?」
「ッチ、未だ生きていたか。」
「まさかのリピート!? い、いや確かに下心はあるけど!ちゃんと理由があるんやって!教会が動き出しとるやろ? せやからワイが加勢せなアカンと思って……」
「独身貴族同盟の筆頭が何をほざいてやがる。」
「マジやって! そらテレサちゃんの件は恨んでるし今でも憎い!でもワイは去勢はしても殺しはしな……ひじの関節がオ折れるように痛いぃぃぃぃぃ!!!!」
カグヤがいつの間にか背後にまわり、田中のひじ関節を極めている。 痛そ~
「田中さん? 私とアキラさんの最強の子づくり計画を邪魔する気ですか~?」
え? 何その計画? 初耳なんですけどカグヤ?
「ちょ! カグヤン!? 腕は勘弁して! この両腕にはまだ見ぬ患者の命が掛かって、膝の関節が折れ曲がるように痛い!? タップタップや!」
おお、流石カグヤ、殴って良し、投げて良し、締めて良し……サブミッションもお手の物だな。
「ロープ、ロ~~~~プ!!」
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「ハァ、ハァ……と、とにかく、最近ロマリアが動き出したんは、アキラの言う召喚者の差し金やろ?あのアホ共、自分らで手出しはせんけど、この世界の住人を扇動するか、教えを使って千年前みたいにNPC……いい方悪いな……一般人を使って攻めてくるかもしれんやん! それにニノ君やったか?新キャラが出てもうてワイの影がうすなるかも知れんやないかい! それに新キャラが男やぞ!男!!ワイの影が薄なるやろ! それに何で美少女やないねん!ここはそろそろ萌えキャラやろ!妹属性!」
コイツは何時も何を考えて生きてるんだ?
それと安心しろ。お前は十分濃いから、薄くなる事はない。
「脳内の煩悩を垂れ流すな……一般人は問題ない。それより大精霊の契約者か精神系のスキルを持たない、鉄人、海賊王、勇者、駆除屋が敵に回る方が厄介だ。」
俺、戦女神、人形師、悪魔使い vs鉄人、海賊王、駆除屋、勇者という8人の異世界人の殺し合いか……千年前の悪夢再来だな。
「カグヤ、鈴木氏とニノは自分とこの傘下だろ? 大丈夫か?」
そう敵勢力の内、二人はカグヤの帝国……ルーシとゲルマニア州に所属している異世界人の筈だ。
「う~ん 二人とも私に忠誠を誓った訳でもないから~反骨精神も強いし……今まで力で抑えつけてたから二人が手を組んで反逆したら正直不味いかも……」
「手加減出来ずに殺っちまうからか」
「さっすがアキラさん!分かってる~。田中さんみたいに灰にする訳にも溶かす訳にもいかないし~」
「うわ~あの二人に同情してまうわ。」
七英雄最強の火力と剣術を持つ彼女に勝てる奴は早々いないしな……
この前、彼女に勝てたのは街中だったからだ。
彼女が本気で戦えば、国一帯が焦土と化す。
マリアも本来、災害の化身とされる召喚獣を意識的にサイズを小さくして被害規模を俺一人で済むように抑えてたしな……
「それに、ナベやん。あんまし無茶はすんなや。【魔改造】にも限界はあるし、回復や蘇生魔法で肉体を超回復させてきたかも知れんが……寿命を削る荒業やろう。男の目から逃れるなんて言うとるけど、精霊化で身体を休めなアカンほどのダメージを受け取る筈や……」
! こいつ!!
「どういう事!? アキラさん! 田中さん!?」
田中が何時ものふざけた空気を霧散させ、医者の顔になって忠告してくる。
「ワイは医者や【診察眼】ちゅう固有スキルで人間や物質の状態を手に取るように知ることが出来る。 それで、ナベやんの身体を見てんけど、まぁ酷いもんやったわ。
ワイの見立てやと魔改造は本来、長い時間を掛けて鍛えたり覚えこませる肉体、技能、知識を一瞬で覚えこませる固有スキルの筈や……自身の実力以上の強化は身を滅ぼす……肉体は崩壊するし、膨大な量の情報を瞬時に脳に送り込めば脳が焼き切れる。 武器かて、余りにも能力を詰め過ぎることは出来ん……武器としての形を保てなくなる。 だからナベやんも武器は形状変化に留めてるし、ガコライ君やったか……彼の持ってる稲葉も、頑丈さと、鞘も道具袋の効果位に留め取る。余りに能力を詰め過ぎると、パンパンの風船みたいになった内からボン!や。 今まで使わなかったもんをよくもまああんなこと使ったもんや……なんや?召喚者共の牽制か?」
コイツは馬鹿な様で、本質を見る目を持ってるから厄介だな。
「ああ、【裏技】と【魔改造】は諸刃の剣だ……魔法やスキルの様なある程度下準備……知識や技量が有るものならリスクは無いが……マリアの様な精神感応が無い状態で武器に込められた情報を一気に読み取れば脳が焼き切れる危険があるし、身体の破壊と再生を瞬時に繰り返す【魔改造】の身体強化は寿命を削る。 俺がこうして生きているのは【源呼吸】と【回復魔法】【蘇生魔法】そして【精霊化】の恩恵だ。 あまり多用できるスキルじゃないし、この前の騒ぎでこれを使ったのも俺の情報を公開することで、諸外国に俺の対策の時間を取らせるためでもあった。」
まぁノリ半分でやったとはこの空気では言えない。 そういう事にしておこう。あながち、間違いでは無いし。
肉体強化と憑依経験はかなり疲れるし、精霊化と併用して初めて使えるスキルだ。
「せやから、暫くは精霊化で身体を休めとき……ドクターストップや……ムカつくけど患者を治すのがワイの仕事で、使命やからな。」
「……私もアキラさんの代わりに戦います。 私が守るから……」
神妙な面持ちの田中と泣きそうな顔のカグヤにそう言われ、俺は首を縦に振るしか出来なかった。
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そして、今に至る。
いらぬ嫉妬や暗殺者の目をかいくぐる為……そして俺の護衛と言う事で、田中とビビ、カグヤを同行することを許可し、俺も精霊化でこの場にいるのだが……
「きゃ~ん♡ アキラさんもいいけど、やっぱりあきらちゃんも可愛い~♡」
「なんちゅうもん を拝ませてくれるんや……ここがワイの桃源郷や~~~!!!!」
「義父さん。 鼻血が……」
本当に俺が心配だからか? この二人欲望100%じゃないのかオイ!
七英雄の中で自分の欲望の忠実さに定評がある二人だぞ。
大丈夫だろうか?
「ウフフフ、こうなったら周りの者全て灰燼にして~あきらさんをお持ち帰りして……」
「おふぅ 鼻血の出し過ぎで貧血に……」
……やっぱ駄目かも知れん
魔改造は使いすぎると破滅の一途を辿る諸刃の剣です。
肉体強化、情報読み込みは肉体、脳の崩壊のリスク
物質強化は質量保存の法則、エネルギー保存の法則を超える改造は出来ません。




