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【書籍化】魔王を討伐した豪腕勇者、商人に転職す -アイテムボックスで行商はじめました-  作者: 柊遊馬


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後日談184話、老魔術師の説教


 近いうちに会おう、そう約束してソウヤはセイジと分かれた。

 クレイマンの浮遊島に戻ると、ミストがブラムと遊んでいた。


「随分とゆっくりだったわねぇ。ドワーフに報告しに行っただけだったはずよね?」

「……まあ、帰りにセイジにバッタリ出会ってな。それで遅くなった」


 三年分、つもる話もあるわけで。ミストは目を回した。


「セイジに会った?」

「偶然にな。ロッシュのところを訪ねてきたところで」

「そう……。元気そうだった?」

「元気だってさ。背も伸びてた」


 ソウヤが微笑すると、ミストは高い高いしているブラムに向き直った。


「それで、時空回廊の件は話した?」

「いいや。ガルたちを復活させるって言ったら、あいつも仲間集めてついてくるだろうと思って」


 人間が行く場所ではない。守護者たちと戦いになれば、人間の命など北風に吹き飛ぶ葉のようなものだ。

 ミイラ取りがミイラになる、ではないが、復活させる仲間の数を増やすだけになるのはきつい。ソウヤ自身、無事に切り抜けられる自信があるかと言われると、即答できない。それだけ復活のための試練とは厳しいのだ。魔王を倒した勇者でさえ、確信がもてないのである。


「まあ、それが無難よね」


 ミストは感情を込めずに言った。

 ソウヤは黙する。ミストやドラゴンたちが一緒に行くというのも、正直に言えば不安でもある。この世で最強種属のドラゴンの上級揃いともなれば、普通はこれほど頼もしい援軍もいないが、場所が場所だけに、それさえも確実ではなかった。



   ・  ・  ・



「いよいよ、目指すは時空回廊か」


 偉大なる魔術王、ジン・クレイマンは彼の私室でソウヤに告げた。


「すでに浮遊島は辺境の火山島へ向かっている。まあ、ゆっくりだがね。その間に色々準備もできるだろう」

「そうだな」


 ソウヤは答えたが、魔術王の部屋をゆっくりと見渡す。

 オリエンタルな内装。よくわからない魔法道具や装飾品が棚の上などに置かれていた。赤いカーペットにアンティークじみた机や椅子。貴族や王族の部屋といっても通じるが、雑多な品がゴチャゴチャした雰囲気を与え、台無しにした。

 メイドたちが掃除をしているので部屋自体はとても綺麗であるが。


「そういえば、君は私の部屋に来るのは初めてだったかな?」


 ジンは奥へ来るようソウヤを招く。そこには(たたみ)が敷いてある一角があった。靴を脱いで座敷に上がる老魔術師。


「ちょっと話そうじゃないか。最後かもしれないんだろう」

「……最後にするつもりはないんだけどな」


 ソウヤも座敷へと上がる。座布団の上であぐらをかく。何とも日本的であった。


「しかし君は、それも覚悟しているのだろう?」

「守護者たちがどれくらい強いかわからないからな」


 見た目、雰囲気、感じ取れる強さ。これらから恐ろしく強者であるのはわかる。それが一体どころではなく、複数いるのが時空回廊の守護者である。


「そんな自分でも敵わないかもしれない相手が跋扈する場所に行く。……興奮しているかね?」

「緊張はある。ただ、最近はオレも安定を取っているから、言うほど興奮はしていない」

「若者特有の向こう見ずさは薄れてきたか。それも大人になるということだ」

「オレは爺さんほど達観していないぜ?」


 苦笑するソウヤである。老魔術師は自身の髭を撫でつけた。


「そうだろうな。こういう言い方もなんだが、私と比べるのは実におこがましい。比べていいのは神か、私より長生きをした者くらいだろう」


 たかが数十年生きる人間が、不老不死者と比べるのがそもそも間違いなのだ。物差しの長さが違う。


「なんだ、お説教で呼んだのか?」

「それもある。まあ、聞いてくれ。永遠の時を生きる者として、問わねばならない」


 ジンは背筋を伸ばした。それだけで、ソウヤはひどく緊張した。年配者から叱られるような気分になったのだ。


「まずは簡単な問いからさせてもらう。君はこれから時空回廊に行き、神竜にガルたちカリュプスメンバーの復活を願う。……そうだな?」

「ああ」

「それは、果たして正しいことだろうか?」


 ジンは言った。


「君はドラゴンブラッドの影響で、おそらく寿命が伸びた。不老不死ではないが、周囲の者たちよりも長生きをする」

「そうなのか?」


 それは知らなかったと思うソウヤ。もしかしたらどこかでそういう話があったかもしれないが、彼はおぼえはなかった。


「人生が長くなれば、周りの者は君より早くこの世を去るだろう。もちろん、ドラゴンの仲間となった君ならば、同等の寿命を持つドラゴンたちと過ごすならばあまり気にならないかもしれない」

「何が言いたいんだ?」


 ソウヤは問うた。ジンの目が光った。


「君は、親しい人間が死んだ時、その都度、神竜に復活を願うのか?」


 いきなり話が飛んだが、それこそジンが確認したい核心であった。


「友人の死は辛い。これまでもそうだったし、これからもそうだろう。愛する者を失えば、取り戻したくなるのは自然のことだ。それが、理不尽に奪われたものであれば、特に」

「……」


 天寿をまっとうした。当人が納得し精一杯生きたのならば、それを尊重する。だがそうでない場合、ここで死ぬべきではなかった、死んでほしくなかったという思いが吹きあがり、何とか戻ってきてもらえないかと思ってしまう。

 喜びも幸福も分け合って共に生きていきたい、そう思える者ならば。


「君は、魔王との戦いで命を落としそうなものをアイテムボックスに入れて延命させた。死なせないように、助ける方法を見つけて救い出す、と。実際、死んだ者以外は回復して第二の人生を送っている。それはいい」


 ジンは言った。


「だがガルたちは死んでしまった。かつて魔族との戦いでは死んだ者たちは復活させていない」

「……」

「遺体がないというのもあるのだろうが、今回は君が命をかけて復活させようとしている。そしてそれに味を占めれば、今後、似たような死者が出た場合、安易に復活させようとしてしまうのではないか。……私は、それが心配なんだよ」

※毎週日曜日の更新です。どうぞよろしくです。


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― 新着の感想 ―
本来タヒ者蘇生は本来は禁忌だからな
確かに知り合いには生きていてほしいって考えそうですね。 今回の守護者相手も自分達が負ける可能性も高いのに突っ込んで行くことは確定してるし。
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