後日談179話、ソウヤ 対 黒の結社幹部
ソウヤが叩き込んだ二回目の剣で、グナーの防御結界を破壊された。
これには黒の結社幹部たちは恐れおののく。
「そんな……!?」
「馬鹿なっ!」
老魔術師ワイスは驚愕する。
「ただの剣で神聖魔法が破れるなどっ! あってたまるかっ!」
「残念だが、ただの剣じゃないんだ」
ソウヤは軽く大剣を振るう。それだけで風が巻き起こった。
「厚みがあるだろう。これは斬ることはできるが、そのためにはパワーが必要だってことだ」
斬れなくても鈍器のように使える。これはそういう武器だ。
「ええーいっ! 雷打!」
ワイスは超短縮呪文を唱えて、無数の電撃弾を放った。そこまで距離が離れていない。いかに魔法を弾く剣でも、多数の電撃すべてを防ぐことはできない――
できていた。
ソウヤは大剣を軽く立て、あるいは傾けて電撃に当てるとそれらを全て弾き返した。
「なっ、何という……!」
あり得ない――! ワイスは目を見開き、今起きたことの意味がまったくわからなかった。
魔王を倒した勇者は、ただ力があるだけでなく、剣においても達人だったのか。あのような大型の武器で、手数を凌げるなど何と繊細な剣捌きか。
これには味方のミストもビックリ。
「ソウヤ、アナタってそんなに剣、上手だったっけ?」
「練習はしていた」
そっけないソウヤに、ミストは首を傾げる。
「してたっけ?」
「してたよ。この三年間」
リハビリの中で。握れば剣を壊してしまう、力調整が上手くいかず苦労していた中で、力を入れず剣を振るう――壊さないようにするため――訓練をずっとしてきた。
その結果、力に頼る戦い以外の、器用かつ繊細な剣の使い方についても習得できた。教材は、あの異世界トラベラーであるジンがいくらでも提供してくれた。
「だから、こういうこともでき――」
「雷打!」
ワイスがさらに電撃弾を追加した。ソウヤはバァ金属の剣を振り回して、それらを弾き、最後の一発を剣先に受け止めた。
「!?」
「なんとっ!?」
幹部たちが驚愕する。魔法が霧散せず、その場に残っている。ミストは口元を緩めた。
「今度はどんなトリック?」
「魔力操作だ。これはアースドラゴンの力の継承して、砂粒を覗いた時に閃いた」
正確には閃いたというより、魔力について悟ったというべきかもしれない。
「このバァ金属の剣、どうやら魔力を通さないらしい。だから魔法も弾けるみたいなんだが、その剣の周りをオレの魔力で覆ってみた。だから――」
ちょんと剣を動かし、ギリギリ触れていなかった電撃弾に触れさせた次の瞬間、電撃が真っ二つになった。そして切れたそれは霧散した。
「こういうこともできるわけだ」
深淵を覗いた結果、力以外のところで大きく伸びた。周りはバァ金属の剣で魔法を弾く云々で驚いているが、そんなものは序の口に過ぎない。
「おのれぇっー!」
ワイスが激昂した。
「サンダー!」
雷鳴が轟き、老魔術師の手から雷が放たれた。ソウヤはとっさに剣を動かして防いでしまった。これは日頃の鍛錬から来る反射であった。
ソウヤは右手で剣を持ったまま、左手を剣身に近づける。魔力を操作して雷の一部を左手人差し指に移す。剣を覆う魔力がそちらに吸い寄せられ、人差し指の先の雷がボール状になって大きくなる。
ワイスの雷は続く。場に圧倒されていた貴族風幹部のシャールが、ガクガクと震え出す。
「いったい何なのだそれはっ、いったい何だ?」
「雷だろう」
ソウヤは人差し指にためた雷を、幹部たちに向けて放った。ボール状だったそれが、不意に拡散し、幹部四人を貫く!
「うおおっ!?」
衝撃に全員がしびれて膝をついた。ミストが皮肉げな顔になった。
「なんだ、生きているんだ。案外、しょぼい雷だったのね。ソウヤの方で威力加減した?」
「いいや。オレは何もいじってないよ」
ここに来る前に見た黒の結社の実験やら生贄やらの痕跡を見た後では、同情心はまったく感じなかった。
「威力は悪くない。生身だったらたぶん危ない威力はある。きっとこいつら魔法耐性の装備を身につけているんじゃないかな?」
跳ね返った雷で、死なずに麻痺で済んでいるというのはそういうことだろうと、ソウヤは推測した。
「ば、化け物……」
ワイスがソウヤを睨んだ。ミストがハッと笑うと肩をすくめる。
「自分の雷にやられるおじいちゃまが何か言ってるわ」
「まあ、人間ではないというのなら、そうかもしれない」
開き直ったようにソウヤは言う。
「しかし、ドラゴンに対して化け物は、果たして褒め言葉のうちに入るのか」
「褒めてないわよ、絶対」
ミストが前に出て、竜爪槍を向けた。
「さて、運良くまだ生きているから、少しお喋りさせてあげるわ。本当は全員ぶち殺すところだったのだけれど、ちょうどいいから聞いてあげる」
その瞬間、ミストが竜の威圧を発動させた。
「うちのソウヤを殺そうと言い出したのはお前たちの誰?」
今の威圧発動の衝撃は、先のワイスの雷よりも雷に等しい音を感じた。近くで雷が落ちたような、人を根本から引き裂き、鼓膜を破壊する類いのそれ。潜在的な恐怖を呼び起こす大音響に等しい。
ソウヤでさえ、そう感じて片耳を押さえたのたのだから、威圧を至近で浴びせられた四人はもっと凄まじい衝撃を受けただろう。
実際、ワイス以外の三人は白目剥いて気絶していた。鼓膜が破れていないといいな、とソウヤは他人事のように思った。
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