後日談162話、待ちに待った武器の完成
大地の力と一体になる――アースドラゴンとしての能力開発に余念がないソウヤ。大地から力を得たり、鉱物を生成したり、金属を作ってみたり。
好奇心の塊であるフラムがちょくちょくちょっかいを出してきて、じゃあ一緒に集中してみるかと誘って、気分を落ち着かせたり、新たな能力開発を進める日々。
表面上は穏やかに。しかし時々湧いてくる友人たち――ガルとカリュプスメンバーの復活のための時空回廊、そしてそこの守護者たちを突破する方法をイメージし、準備も進めていた。
そして、ついに、その日がきた。
ロッシュヴァーグから、武器が完成したと知らせがきた――とジンが報告した。
「そろそろかと思ったけど、完成したんだなぁ」
ソウヤは予想より若干早い完成に素直に感心した。
「それにしても、爺さん、いつの間にロッシュと連絡できるようになったんだ?」
「通信機を提供したんだよ。この間、設置しに行った」
「いつの間に……」
ソウヤの知らないところで、ジンは動いていたという。この老魔術師は穏やかに言う。
「世間では死んだことになっている君と違って、私は自由に歩き回れるのでね」
「そうなのか? あんたは銀の翼商会でも俺に継ぐ顔だと思っていたんだけど」
意外そうな顔をするソウヤに、ジンは苦笑する。
「商会を外から見たら、君の知名度が断トツであるが、私はそうでもない。中から見れば重鎮ポジションにはいたけどね」
「魔術師としては?」
「ソフィアが活躍したから、彼女の方に皆の注目が集まったと思う。師匠なんておだてられたところで、スター性があるのは彼女の方だからね」
失礼ながら、老いた術者と若い術者、どちらが華があるかと言われればそうかもしれない。
「そんなことはどうでもいいから、行ってくるといい。……船はいるか?」
「自分の翼で飛んでいくよ」
ソウヤは伝言ありがとうとジンにお礼を言い、ドラゴンになると浮遊島を後にした。
・ ・ ・
「それで……これはどういうことだ……?」
ロッシュヴァーグの工房に行ったら、何やら騒ぎになっていた。表の入り口は壊れていて――というより破壊されていて、中も荒らした後。
「ロッシュ! 無事か!?」
弟子がいて、ロッシュヴァーグは腕に包帯を巻いていた。
「怪我をしたのか!?」
「かすり傷じゃわい」
ロッシュヴァーグは答えたが、元気がなかった。
「いったい何があったんだ?」
「強盗です」
そばにいた弟子が首を横に振った。
「バァ金属があるというので、それを狙ってきたみたいです。残りの金属と、あと完成したばかりの剣を盗まれました」
「剣……?」
「すまん」
ボソリとロッシュヴァーグは頭を下げた。
「お前さんのために作った新作も、奴らは盗んでいきおった……」
バァ金属でこしらえた武器だ。市場に出回っていない超金属であれば、それも高額で売れると盗んだ奴は考えたのだろう。
「だがこの世に一点しかない武器だ。盗んだ奴もバァ金属の溶かし方や製錬の仕方も知らないだろう。それを直接売ろうとすれば足がつくんじゃないか?」
「盗んだ奴らが何を考えているかなぞ知らん」
ロッシュヴァーグは鬼のような形相になる。
「はっきりしておるのは、奴らがわしの工房から盗みをしおったということじゃ!」
「親方、落ち着いて――」
「落ち着いてなぞ――」
「傷が開きますよ!」
「お、おう……」
すん、となるロッシュヴァーグ。弟子も弟子で、はっきりいうタイプのようだ。
「奴ら、か」
犯人は複数。盗賊団というと大げさかもしれないが、いや案外そうなのかもしれない。武器工房に侵入して貴重金属を強奪など、そこらの物盗りの思考ではない。
「どこでバァ金属のことを知ったんだろう……」
「未知の新金属を使った武器を作っている、という噂が広がっていたみたいなんです」
弟子はソウヤに告げた。
「我々弟子の中に、つい顧客や業者から『あの見慣れない金属は何だ?』って聞かれた時にバァ金属だって答えてしまった者がいて……。すぐに公言しない、見えない場所に移したりしたんですが、遅かったようで」
申し訳ないです、とロッシュヴァーグの傍らにいた弟子も頭を下げた。
「まあ、起きてしまったことは仕方ないよ」
ソウヤは近くの席に座った。文句を重ねて戻ってくるならそうしてもいいが、現実はそれを言ったところで盗まれたものが帰ってくるわけではない。
「何をしているんじゃ?」
「瞑想。盗まれたものの場所をちょっと探ってみる」
大地竜の力を舐めるなよ――盗んだバァ金属については探知できる。
「……見えた」
「は?」
「ちょっくら、盗まれたモノを取り返してくるわ」
ソウヤは立ち上がった。ロッシュヴァーグも弟子も驚いている。
「え、もう見つかったんですか!?」
「ソウヤ、お主の魔法か!」
「そんなところだ」
ロッシュヴァーグも立ち上がる。
「これから踏み込むのか? それならわしも――!」
「親方! 無理しちゃいけませんって!」
「じゃかしぃ! 盗まれたのはわしらの責任じゃ! 依頼主に頼っては――」
「まあ余分に金属置いて、狙われやすくした原因はこちらにも一因があるからな。気にするなよ、ロッシュ」
ソウヤは手を振った。
「大体、あんたは職人だろ。こういう荒事はオレに任せておけって」
「ソウヤ……」
「取り戻したら武器の説明をしてくれよ。それまで養生してろ」
ソウヤは工房を出る。
「さてさて、人様の上前をはねるとは、お天道様が許してもドラゴンは許さないんだぜ」
覚悟しろよ――
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