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【書籍化】魔王を討伐した豪腕勇者、商人に転職す -アイテムボックスで行商はじめました-  作者: 柊遊馬


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後日談152話、ソウヤ、武器を求める


 死者を蘇らせるために、自分の命をかける。

 それだけの覚悟がなくては、死者を復活させるなんてことはできない。


 しかしそう考えたところで、単に神竜は来訪者に時間をとられたくないだけであると思い出し、ソウヤは苦笑するのである。


 見方によっては、死者復活の試練ともとれるが、誰でも行けたら願いを叶えたい者が殺到し、自分の時間がとれなくなる。いくら神竜が温厚でも、無礼者を相手して煩わされるのは嫌というものだ。

 時々やってくる相手には寛大なドラゴンではあるが、誰彼構わずということはない。


 時空回廊の守護者たち。侵入者を阻む、強大なる存在――


「疑問なんだけど」


 ミストは、やたら深刻ぶっているソウヤに尋ねる。


「その守護者とやらと戦ったわけではないのでしょう? まして何かと戦っているところを見たわけでもないのに、どうして強さがわかるわけ?」

「わからないよ」


 ソウヤは正直だった。


「だが見ただけで、『強い』ってわかる存在はいるだろう? 自分の経験や勘みたいなものと照らし合わせるわけだけど、今まで見てきた中でかなりヤバいやつと同じ雰囲気を感じた」


 それに――


「これまで神竜に会おうとした奴らが、ことごとく帰ってこなかったって、アースドラゴンが言っていた」

「あの火山島がファイアードラゴンのテリトリーだったからじゃないの?」


 ミストは皮肉る。

 凶暴なるファイアードラゴンは、眷属ともども時空回廊のある島にいて、近づく者はドラゴンであろうが排除してきた。

 だから、誰も帰ってこなかったのではないか、というのだが――


「アースドラゴンの爺さんは、ファイアードラゴンより古株なんだぜ?」


 火のドラゴンたちが火山島をテリトリーにする前から生きていて、時空回廊に、死者復活の望みをかけてやってきた者たちが大昔にごまんといたのを知っている。


「そのファイアードラゴンのせいで、神竜と復活伝説というのは伝承でも途絶えてしまったみたいだけど、その前は、割と有名な話だったらしい」


 頻繁に来客があれば、神竜だって守護者という名の門番を置きたくはなるというものだ。

 復活伝説が、人々から忘れ去られ、さらにファイアードラゴンがテリトリーとしたことで近づく者さえいなくなった火山島。守護者の出番もほぼなくなったのだから、その役目を終わらせればよかったのに、大らか過ぎる神竜は、守護者たちをそのままにしている。


「拍子抜けしないといいんだけど」


 戦闘大好きなミストは言うのである。油断するなよ、とソウヤは言いたいが、実際に見たほうが説得力があるだろうから、この場で深くは告げなかった。

 彼女とて、戦闘歴は長く素人ではない。百聞は一見にしかず、守護者を見て強さを連想できないほど節穴ではないだろう。


「装備がいるなぁ」


 ソウヤは呟いた。

 自分が全力で当たらなければいけない、そう感じさせる守護者。それと戦うためには、しっくりくる装備が必要だ。

 地底城に乗り込んだ際、ハンマーを使ったがこれは壊れてしまった。どうにもソウヤにとってしっくりくる武器がない。


「いっそ、ドラゴンの姿で戦ったら?」


 ミストは薦める。しかしソウヤは首を横に振った。


「オレはハーフドラゴンだぜ? ミストたちと違って、ドラゴン形態はまだまだ素人の域を出ていない。それで守護者と戦うなんて、自殺行為だ」

「素人、ねぇ……」


 ミストは意味深に笑う。


「あんたのような初心者なんていないわよ。ドラゴン形態だって自信を持っていいのよ?」

「オレ自身が納得していないんだよ」


 比較対象の問題である。ソウヤの周りにいるドラゴンが、揃いも揃って上級揃い。クラウドドラゴンやアクアドラゴンなどという四大竜という最強格を目の当たりにしてしまえば、大抵のドラゴンは格下ということになる。

 そんな高すぎる周りを見れば、ソウヤがドラゴン形態に自信が持てないのも無理はなかった。


「まあ、戦うのは自分自身。どんなスタイルでいくかなんて、個人の勝手なんでしょ」


 ミストは自身の腰に手を当てた。


「でも、今のあなたに振り回せる武器、あるの? お爺ちゃんの武器庫のやつ、使いこなせないんじゃないの?」

「使いこなせないというか、全体的にドラゴンが使うことを考慮されていないから、脆いんだよ」


 ソウヤの反論に、ミストは首をかしげる。


「そもそも人間が使う武器でしょ。ドラゴンが使うなんて想定されて作られているわけがないじゃない」

「それはそうなんだけど……」

「自分で作るしかないんじゃない? ワタシや影竜みたく」


 人型形態でも使える武器。ミストは爪を利用した竜爪槍を使い、影竜もまた爪を応用した武器を使う。


「専用武器か……」


 そのフレーズに内心ワクワクしてくるソウヤである。彼もまた、武器にある種のロマンを抱く男の子である。

 そして専用武器と聞いて、浮かんだのがドワーフの武器職人であるロッシュヴァーグのこと。

 ……そろそろ、会いにいってもいい頃合いではないだろうか。


「元気にしているかな、あのおっさん」


 あれから三年。世間では死んだことになっているソウヤである。リハビリは終わり、人の姿でも不自由なく生活できるレベルになっている。

 再会のハグで相手を潰すことはないから、ぼちぼち仲間たちに挨拶してもいいだろう。


「よし、ロッシュヴァーグに会いに行く。いい武器を探して、なければ新しく作ってもらおう」


 斬鉄が懐かしい。あれくらい思い切りぶっ叩けて壊れない武器が欲しい。


「じゃあ、行ってくる」

「いきなりねぇ……」


 ミストはまたも苦笑する。


「お土産、期待してもいいのかしら?」

「遊びに行くんじゃない」


 しかし土産で思い出す。さすがに旧友に会うのに、手ぶらというのも様にならない。


 ステレオなイメージだと、ドワーフは酒が好物だが……。基本ハズれのない定番の土産というべきか。


 ソウヤはアイテムボックス内に土産になりそうな酒がないか探した後、クレイマンの浮遊島から飛び出した。

※毎週日曜日の更新です。どうぞよろしくです。


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― 新着の感想 ―
ここで646話に繋がるのか。 大好きなエピソードだから、 再会したあとのロッシュヴァーグの反応が見えるのは凄くたのしみです。
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