表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】魔王を討伐した豪腕勇者、商人に転職す -アイテムボックスで行商はじめました-  作者: 柊遊馬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

788/837

後日談139話、理不尽な差


 アクアドラゴン?


 ガルの困惑は大きかった。地底城の外でドラゴンが暴れているという話は、混乱する魔族兵たちの声で聞こえてきてはいた。

 まさか、と思っていたら、アクアドラゴンとクラウドドラゴンだったと聞いて驚きもした。


 だが状況を利用し、城への侵入を進めていたから、ガル自身はドラゴンたちを見ていなかった。だから実際目の当たりにして、懐かしい姿に感じ入るものがあった。


 一方、この状況で取り乱したのは、吸血鬼のカネールの方だった。歩国の地下で、竜玉を巡る場での邂逅した青髪ツインテール少女――の姿をしたドラゴン。初見では手も足も出なかった。


「何故お前がここにっ!?」

「喋るなと言ったぞ、ヴァンパイア!」


 グンと床を蹴ったその瞬間、石で作られたそれが吹き飛んだ。あっという間の加速。カネールはギリギリで突撃を躱すと、後ろの壁と床が砕けて弾け飛んだ。


「ひぇぇぇぇぇっ……!」


 あまりの威力に声が出る。だが次の瞬間、切り返したアクアドラゴンがカネールの懐に飛び込んできた。


「避けるんじゃないぞ、ヴァンパイア」

「理不尽!」


 とっさに後退しつつ、腕でガード。すさまじい衝撃に両腕が粉塵にまでバラバラとなり、なおアクアドラゴンの手がカネールの体に迫る。


「え……?」


 蝙蝠(コウモリ)分身。寸でのところで、カネールは自身をコウモリに分かれてなければ、致命的な一撃を食らっていた。


『ひとまず、た――』

「逃がすかい!」


 アクアドラゴンが追いかけてくる。一回の跳躍が距離などないかのように縮めてしまうので、カネールは逃げるので精一杯となった。


 これが理不尽なまでの個体差、種族差か。吸血鬼が人間のそれと体が異なり、強さの格が違うように、ドラゴンもまた吸血鬼との間に隔絶たる力の差を持っている。

 生物の頂点と言われるドラゴン。その前では、吸血鬼もただの雑魚か。


 室内はしんと静まり返る。ガルは一人取り残されて呆然とするが、倒れている仲間に気づき、駆け寄った。


「グリード!」


 吸血鬼に挑み、思い切り顎を蹴飛ばされ、吹っ飛ばされていたグリード。顎が割れ、血が流れ、そして彼は息をしていなかった。脈も確認したが、もはや動いていない。


「……兄さん」


 吸血鬼の本気の力をぶつけられれば、人間など卵のようなもの。あまりにあっさり命を奪っていく。理不尽なまでに。種族の差は対等ではない。

 しばし佇む。


 ――ひとり、か。


 とうとう一人になってしまった。カリュプスの仇、ブルハへの報復で動いた組織の生き残りたち。

 ここまで来る道中に、ある者は倒れ、ある者は魔族幹部との戦いに残った。


 オダシュー、ニェーボ、アズマ、アフマルは生きているのか。もしかしたら彼らも――ガルは不吉な予感に苛まれる。

 トゥリパ、そしてグリードの亡骸を見やり、ガルはほんの僅かだが瞑目した。


「仇はとる」


 ここは敵地、長く感傷に浸っている状況ではない。吸血鬼はアクアドラゴンから逃げ、もはや眼中にない。

 報復のターゲット、ブルハを目指したガルは一人、塔を登った。



  ・  ・  ・



「いやはや、もうね。どうしてアナタは、私を目の敵にするんですかねぇ……?」


 カネールは、追撃してくるアクアドラゴンに思う。


 ――そこまで恨まれるおぼえは、ないのですが……?


 思えば、初対面から鉄拳制裁。突然の暴力にさらされ、恨みを抱くなら普通は、殴られたこちらの方だろうと思う。


 ――思えば、最初から狙われてましたね、私は。


 どうしてだろうか? カネールが憶えていないだけで、あのドラゴンの恨みを買ってしまっていたのか。

 いや、そもそも、あの場以外で会ったことはないはずだ。他の吸血鬼と間違われたのではないか。


 ――あ、あり得ますねぇ。同族の阿呆があのドラゴンに喧嘩を売り、吸血鬼全体のヘイトを買ってしまったとか……!


 ドラゴンとは、まことに勝手な生き物だ。力を持つ者は傲慢であり、自分勝手である。本来関係ないはずなのに、同じ種族というだけで攻撃をしてくる。理由は、前に嫌なことがあって、恨んでいるから。


 ――あぁ、本当に理不尽の塊だ。


 今から逆転する方法はないのか? カネールは目まぐるしく動く状況で、思考のリソースを割く。

 だが、どう足掻いても勝ち筋が見えなかった。


 ――そういえば、我ら吸血鬼の間で、ドラゴンの血を吸った者の話、聞いたことありませんねぇ。


 竜の血は不治の病すら治すとか、不老不死になるなどといった言い伝えが、広く分布している。ドラゴンの神聖性――クソがつくほど暴力的の間違いだろうが、それを知らしめるエピソードの一つた。


 ――もしその血を吸うことができれば、私にもまだ勝ちの見込みがある……?


 しかしドラゴンの血を他の生物が取り込むと異常進化が起きて、体がそれに耐えきれず絶命に追いやられるとも聞いている。

 制することができれば、圧倒的な力を得られるが、逆に自滅する可能性もある。二つに一つ。どうせこのまま追い詰められてやられるくらいならば、人生を賭けた一勝負で逆転を狙うのもあり、だ。

 カネールは覚悟を決めた。


「いざ、勝負――!」

「存在自体がうるさい!」


 圧倒的な水のブレスが迫った。あ、これは――


 逃げられない。コウモリ分身を使おうとも、全コウモリごとブレスで吹き飛ばされる。


 ――りふじーーーーん!


 トマトのように潰れ、吹き飛ばされ、跡形もなく裂かれて、吸血鬼幹部は果てた。

※毎週日曜日の更新です。どうぞよろしくです。


「魔王を討伐した豪腕勇者、商人に転職す-アイテムボックスで行商はじめました-」書籍・コミック、HJノベルスより発売中!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ドラゴンからしたら吸血鬼達は蚊と同じ扱いに
カネール、 彼は頑張った。 凄く頑張ったと思う。 ただ、結果は「――りふじーーーーん!」に集約されただけで。
カネールさんにちょっと同情しました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ