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【書籍化】魔王を討伐した豪腕勇者、商人に転職す -アイテムボックスで行商はじめました-  作者: 柊遊馬


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第75話、タルボット商会本店にも行ってみた


 タルボット商会の一般向け販売店の奥に積まれた品を、ソウヤは眺める。


 グレイグは買い手が蒸発して持て余している商品だと言った。他は、売れると思って仕入れたが実際には売れなかったものもある。


「買い手が来なかったとはいえ、その人も売れると見込んで注文したのだから、どこかに需要はあるはずですよね?」

「おっしゃる通りでございます。他の商人にも話してみたのですが、心当たりがないものは、そのままなんですよ」


 初老の紳士は答えた。一応、販売店のほうでも並べてお客の反応を見たりしているのだという。


「じゃあ、そういう余っている品を少し、うちが買い取りましょうか? どこに需要があるか探しますよ」

「それは、我が商会としてもありがたいお話です。……よろしいのですか?」

「ええ、行商ですから、色々巡っているうちに当たりが見つかるかもしれません」


 ソウヤの言葉に、グレイグは少し考える。


「無礼な質問ですが、銀の翼商会さんには在庫を置いておける倉庫はお持ちで?」

「倉庫? ああ、行商と名乗りましたからね……」


 移動することが多い行商だから、あまり大規模な倉庫など持っていないことが多い。個人や複数人程度でやっているので、大荷物を運ぶのは困難。あまり大きな荷は扱わず、必然的に倉庫もさほど大きくない。


 もちろん例外はある。


「ご心配は無用です。こちらはアイテムボックスがありますから」

「アイテムボックスですか。なるほど、行商向けの魔道具ですね」


 グレイグは納得した。世の商人の中にはアイテムボックス持ちがいる。大変希少なもので、市場に出せば高値で取り引きされるが、それを用いて仕事をしている者もいるので、グレイグもさほど驚かなかった。


 ある程度の品を吟味した後、契約は本店で、という話になり、ソウヤたちはタルボット商会本店へ移動する。紹介状代わりに、何故かグレイグがついてきた。


「私がいたほうが、話が早く済みますから」


 そう紳士は穏やかな笑顔を浮かべた。……この人、実は相当偉い人なのでは。


 内心怪しみながら、やってきた本店。大きな建物は、一瞬ソウヤに、学校の体育館を思い起こさせた。大きな倉庫と併設されているような外観だ。


 入り口にいた商会の人間が、ソウヤたちを見て、頭を下げた。


「お帰りなさいませ、商会長」

「やあ、ご苦労様」


 グレイグが鷹揚に応じて、ソウヤは目を丸くする。――商会長だって?


「グレイグさん、ひょっとして――」

「はい、グレイグ・タルボットと申します。このタルボット商会の商会長をしております。どうぞ、お見知り置きを」


 紳士はイタズラが成功した子を思わす笑みを浮かべて、頭を下げた。その差し出された手を、ソウヤは握り返す。


「こちらこそ。いっぱい食わされました」


 何とも茶目っ気のある社長さんである。そしてこの人が、醤油作りのタルボット、マークの父親だろう。

 そう言われてみれば、息子と似ているような気がしないでもない。


 ――タルボットは、母親似なんだな、こりゃ。



  ・  ・  ・



 タルボット商会本店のほうを、商会長自ら案内されたソウヤたち銀の翼商会。


 セイジが田舎者丸出しで、キョロキョロしているのはいつものことだ。だがこれでも彼の観察力は中々のもので、今後の仕事にも役立つのはわかっているので、ソウヤは特に指摘しない。彼の吸収力は乾いたスポンジの如し。


 ミストは適当に品を眺めているが、大方、何か魔力再生でコピーできないか吟味していると思われる。黙って品定めする美少女の姿は絵になるが、誰もコピー中だとは思わないだろう。


 貿易商だけあってあって、他ではお目にかかれない珍品もあるが、一番目についたのは、コショウを始めとした香辛料の数々。それらが袋ごとに山積みなのだから、これだけで果たしていったい幾らに化けるのか、空恐ろしい。


 ただ、香辛料系は、ほぼ買い付けにくる商人たちで在庫もなくなるので、新規参入は、最初のうちは少量しか扱えないという話だった。……ご心配は無用。うちはコショウは、あまり興味がないので。


 その後、事務所で商会長のグレイグ氏とソウヤは商談。


 銀の翼商会は保有している、ヒュドラ素材一部――鱗や爪、歯や意外なところでは骨を販売。


 一方、タルボット商会からは、余剰品など、他の商人が手をつけていないものを中心に格安で購入。格安なのは、どこで売れるかわからないものを引き取ってもらったことと、ソウヤたちがそれらで需要開拓に成功したら、銀の翼商会が得をするように、という理由だ。


 売れるものは今後も仕入れが必要になる。次から正規の価格で扱うことになったとしても、タルボット商会も新たに開拓された市場で商売することができるのだ。


 商談の後、少々のお話をして、解散となった。タルボット商会本店を出たソウヤたちは、マーク・タルボットの醤油蔵へと戻った。


 そこで、ソウヤはタルボットとお話。


「どうでした?」

「まあ、ボチボチかな。グレイグ・タルボットさんと直接話した。……彼、お前のお父さん?」

「ええ、父です。……そうですか、会ったんですね」


 十年前の勇者時代のことを思い出すと、ソウヤは、グレイグに関して、印象が残っていなかった。会ったような気がするが、直接話したことはなかった……はずだ。商談などは仲間たちがやっていて、ソウヤはといえば若きマーク少年と船や倉庫を見て回ったような。


「それで、ショーユの話はしましたか? 僕のことは何か?」

「いいや、お前のことは何も」

「……何も、ですか」


 肩透かしを食らったような微妙な表情になるタルボットである。


「ただオレのほうで、今後、コショウほどではないが醤油は大規模な市場になるから、その素材を押さえておくと儲かるよ、と言っておいた」

「大豆ですか」

「そういうこと」


 ソウヤ自身、全てではないが王国で大豆を作っているか調べたが、今のところ輸入したものしか見つからなかった。


「タルボット、お前の醤油って大豆を……」

「ええ、もちろん使ってます。友人に頼んで、実家で輸入しているやつを買ってます」


 なるほど、とソウヤは首肯した。


 ――オレのなんちゃってステーキタレと違って、ちゃんと真面目に醤油なんだな。


「それはいい。ステーキタレで思い出した。お前のところで作った醤油をブレンドすることで、オレのステーキタレはより完全な形に近づく――」

「ステーキタレがさらに完全にッ!?」


 蔵にいたはずのミストが、物凄い勢いで駆け込んできた。何という地獄耳だろうか。


「お、おう。オレの作ってるのは有り合わせで作ったなんちゃってタレだからな。醤油を加えることで、本来の味に――」

「すぐに! すぐに作りなさい!」


 ミストが勢いよく叫んだ。


 ――うわぁ、ブレないなー、このドラゴン。


 さすがに引く。


 それはともかくとして、何の話をしていたっけ――ソウヤは、タルボットと顔を見合わせた。

親父殿とケンカしにいったわけではないので、平和的に済むならそれでよし。

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