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【書籍化】魔王を討伐した豪腕勇者、商人に転職す -アイテムボックスで行商はじめました-  作者: 柊遊馬


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後日談78話、ペルスコットの後継者


「ガルさんがいなくなった?」


 レーラは、オダシューからそれを聞かされ、驚いた。


「どういうことですか?」

「わかりません。仲間たちに言って探させたんですが……」


 オダシューは申し訳なさそうに頭を下げた。


「特に魔獣に襲われたとか、何かと戦闘になったとか、そういう形跡はないんですが、ガルの姿がどこにもありません」

「……」


 レーラは、すっと息をついた。

 どうして彼はいないのか? ここのところ、表情に出さずとも思い詰めていたように見えたガルである。魔族への憎悪を滾らせていた彼だが、とうとう……。


「ここを出て、魔王軍の残党を探しに飛び出した……ですか?」

「いえ、たぶん違うと思います」


 オダシューは否定した。


「確かにあいつは、コソコソ探っていたようですが、仲間のうちの誰にも知らせず飛び出すような真似はしません。必ず伝言を残していきます」


 誰も知らないとなれば、心配してガルを探し出そうとする。魔王軍の残党討伐が目的であるなら、それは個人の理由だから、それを知らせず離れて団に迷惑をかけることはないのがガルという男だ。


「その伝言は……なかったと?」

「一応、部屋も探しましたが、特に奴の持ち物がなくなっているとかもなかったので、準備していた、というわけじゃあなさそうです」

「……そうなると、どうなります、オダシューさん」

「考えられるのは二つ」


 オダシューは指を二本立てた。


「一つ、村の近くに危険な魔物なり、賊がいて、それを単独で追尾している。二つ、ガルが何者かと接触し、それについていった……」


 捕まった、あるいはさらわれた可能性もあります、とオダシューは告げた。レーラは考え込む。


「ガルさんが捕まるなんて、ちょっと考え難いですけれど……」

「そうですなあ。ただ、あいつも人間ですから、絶対ないとは言い切れません」


 オダシューは言った。


「捜索は続けます。今んところ、手掛かりは何もありやせんが」



  ・  ・  ・



 ガルは、今ほどペルスコットの名が面倒に感じたことはなかった。

 数日の移動で、とある深い森に辿り着き、そこにひっそりと立つ古びた屋敷が、目的地である。


 ペルスコットの庭。


 そこは、その暗殺一族の者たちからそう呼ばれている。

 広間に集められたのはガルを含めて8人。他にペルスコットの戦士たちが複数。その広間に、外見五十代ほどの男が登場する。

 灰色の髪、目つきの鋭い、長身の男――彼の名はハミット・ペルスコットと言う。


「諸君、よく集まった。動乱渦巻く世界にあって、未だ健在であること、ペルスコットの名を持つ者として嬉しく思う」

「微塵も嬉しそうな顔をしていないぜ、ハミットの旦那」


 若手組8人のうちの一人、赤毛で軽薄そうな青年が言った。猫背で陰気な空気を纏う魔術師風の少年も口を開いた。


「むしろ、ここにいて当たり前、って顔をしている」

「容易く死んでは、ペルスコットの名が泣くってもんだ」


 ペシクが皮肉げに言った。短い黒髪にパンクなメイクをした女が、小馬鹿にするような顔になる。


「おいおい、ペシクよぅ。それって、御曹司が雑魚いって遠回しの皮肉かぁ?」

「静粛に」


 ハミット・ペルスコットは重々しく告げた。相変わらず表情はピクリとも動かない。


「我らペルスコットの次期当主だったフェンライト・ペルスコットは死んだ――」

「けっ、あいつが本物だったわけか」


 赤毛が言えば、陰気魔術師が眉を吊り上げた。


「は? 今更?」

「一番上の兄貴って、そういうことだったろ。知らなかったのか、トリーン?」


 ペシクがたしなめるように言えば、赤毛の青年――トリーンは顔を歪めた。


「はあ? そうだっけ?」

「こいつバカだ!」

「馬鹿だ!」


 何人かから笑い声が上がり――その瞬間、最初に馬鹿と言った一人が、脳天を吹っ飛ばされて死んだ。


「は? 馬鹿じゃないが?」


 トリーンは人差し指を、死んだ青年に向けていた。しん、と周りが静かになる。しかし誰もビビっている様子はない。むしろ、死んだ者に侮蔑にも似た目を向けた。

 ハミットは口を開いた。


「一人減ったな。トリーン、お前は一回戦突破だ」

「やっりぃー! ま、こんな初歩の攻撃も躱せねえ雑魚が、ペルスコットの後継者は継げねえわな」


 トリーンは笑った。何人かが不快さに眉をひそませたが、ハミットは冷静そのものだった。


「話を戻そう。我らがペルスコットの後継者が亡くなり、残っている者から次期当主が選ばれる。方法は、お前たち若手世代8人、いや残る7人の中の最強――そのトップとして生き残った者が次期当主だ」

「……」


 重苦しい空気。しかし7人の表情は変わらない。


「運の悪いことだ。貴重なペルスコットの名前持ちを一人まで減らすということだからな。我らペルスコットは暗殺者であり、強き者の名だ。弱き者は屍を晒すのみ」


 ここに、ペルスコット家の当主を決める争いが勃発した。後継者だったフェンライト・ペルスコットの死によって、同世代のペルスコットの名を持つ者の中から後継者を選ぶことになったのだ。

 当然、そこに拒否権はない。死ぬか勝ち残るか、二つに一つのみ。


 逃げれば死。隠れれば、自分が所属している組織がペルスコット家の攻撃対象となり滅ぼされる。

 銀の救護団、さらには銀の翼商会にも手が回るかもしれない。そう考えれば、ガルはこの戦いに参加するしかなかった。

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