第379話、新人、全員合流
ゴールデンウィング二世号に来客があった。
アルガンテ王とペルラ姫と、その護衛ご一行である。事前通告が当日だったので、発着場は大きな騒ぎになったが、これでも一応お忍びということなので、仰々しい式典などはなかった。
なお、よりにもよって不採用者の敗者復活、もといミストたちドラゴンの洗礼が行われている最中だったりする。
銀の翼商会に入ることになった新人たちは、王様ご一行の到着に緊張した。ソウヤは出迎えたものの、簡単な礼で挨拶した後は、さっさと船へと王と姫を案内した。
「突然のご訪問でしたね。何かありましたか?」
「なに、新人を入れると聞いて様子見をな。……いやはや、もう少し早くついていれば、ドラゴンの威圧を目の当たりにできたのだが」
ミストの竜の威圧で、敗者復活グループはほぼ壊滅である。
「面倒なことにならなくて幸いでした」
護衛の人たちが殺気立って王と姫をお守りするなんて騒ぎにならなくてよかった。
「昨日、報告が入ったが面接をやったそうだな」
「希望人数が多かったですからね。王国からも有望な魔術師が来ることになっていましたから」
ソウヤは、ちらと王族一行の後ろのほうにいるイリクと魔術師たちを見た。
「その魔術師を連れてきた。将来を期待する者たちだ」
「王国を守る未来の戦士たちですね」
魔王軍の影がちらついている。戦力は多いほうがいい。
「ただ、うちの商会で修行する以上、そっちでも働いてもらいますが」
「こちらから頼む立場だ。魔術師たちには私からも伝えてある」
王の言葉を軽んじる者は、王国の魔術師にはいないだろう。
「しかし、彼らは商売についてはほぼ素人だ。大丈夫なのか?」
「道中の護衛や探索など、警備や安全面での人員と考えれば、やることはいくらでもありますよ。荷物運びも魔法でやらせます」
「結構。期待している」
アルガンテ王は鷹揚に頷いた。ペルラ姫はどうしているかと見れば、レーラやリアハと会って挨拶をしていた。
――あっちは任せていいか。
「ソウヤ殿」
声をかけられた。ソウヤは頷く。
「イリクさん」
「お世話になります」
ソフィアの父であり、宮廷魔術師であるイリクはお辞儀をした。
「まさかイリクさんも、こちらに?」
「いえ、引率です。まあ、本音を言えば、私もジン殿やミスト殿の指導を受けたかったのですが……」
娘から魔法バカと言われるイリクのことである。おそらくその本音に偽りはなかっただろう。
しかし、王国に仕え、王の側近のひとりである彼が、要職を離れて修行というわけにもいかないのだ。
とても名残惜しそうな顔をしているイリク。それを見たアルガンテ王はため息をついた。
「イリクよ。そんなに入りたいなら、よい。許可する。お前もソウヤについていけ」
「ほっ、本当ですか!? 陛下!」
冷静沈着を絵に描いたような人物に見えるイリクが顔を綻ばせた。何だかんだ言って、死ぬほどこちらで魔法指導を受けたかったようだ。
「うむ、イリクはここに来るまで、散々自分も参加したいと言っておってな」
アルガンテ王が困った顔をしながら、ソウヤに言った。
「一時は宮廷魔術師を退くなどとも言いおった。何とか説得はしたが……」
「なるほど」
笑顔になっているイリクを見やり、ソウヤも苦笑するしかなかった。――どんだけ来たかったんだ。
「娘が伝説を打ち立ててしまったので、父としては何とも締まりがないのですが……。よろしくお願いいたします」
「心得ました」
今回やってきたのはイリクの他に5人。イリクはひとりずつ紹介した。
栗毛で二十ぐらいの男、アーチ。
金髪碧眼で、どこかの貴族を思わせる男、リッシュ。
黒髪ストレートの二十代女、ジェミー。
眼鏡をかけた十代後半くらい少女、ソワン。
そして――
「サジー。私の息子です」
「ソフィアのお兄さんですか」
見た目は5人の中で最年長。三十代くらいに見える。魔術師というより戦士を思わせる長身がっちり男である。
「はじめまして、サジーです。妹がお世話になっております」
無骨だが、声は意外にも温厚そうだと感じた。外見では堅物そうだが、話してみれば意外と印象が変わりそうだった。
「どうも。ソウヤだ、よろしく」
しかし妹には似ていないな――ソウヤは率直な感想は心に留めた。天才魔術師の仲間入りを果たした妹がいる職場にきた兄の心境やいかに。
――グラスニカの家ってことは、ソフィアとの関係はどうなんだろうか……?
魔法が使えないから、冷遇されたとソフィアは言っていた。今では冷遇と感じていたのは自分にも責任があったと言っていた彼女だが……。
ともかく、これでひと通りの人員が揃った。王国派遣の6人も入れて、新人が19人。かなり大所帯になってきた。
・ ・ ・
19人と言ったが、20人になった。
不採用宣告された中で、ミストらドラゴンたちと対峙したうちのひとり、ナダという東方風戦士が合格となったからだ。
竜の威圧に耐えられたのは大したものだ。それだけで即戦力と感じるだけの逸材である。
そんなわけで、新人たちと元からいたメンバーで自己紹介が行われるのだが、その前にソウヤは挨拶した。
「国王陛下から話を聞いているかもしれんし、聞いていないかもしれないが、いずれわかることなのでまず言っておく。オレはソウヤ。十年前に魔王と戦った勇者だ」
「!?」
新人たちが例外なく全員驚いた。
――勇者の知名度、すげぇ。
「勇者ソウヤ……!」
「いや、しかし勇者は十年前に――」
「魔王と差し違えた、になっていたんだっけか? まあ、その辺りはオレより皆のほうが詳しいだろう。実際のところ、死にかけたがこうして生きている。十年間、たっぷり寝たからな」
ざわつく新人たち。ソウヤは構わず言った。
「これまでは勇者マニアの別人を名乗っていたが、あえてお前たちの前で言ったのは、この商会の活動に魔王軍残党との戦いも含まれるからだ」
「!!!」
「王国からの求めもあり、お前たち将来性や能力を見込まれた者を受け入れた。その理由は、近いうちに起こるであろう魔族との戦いに備えてのことだ。ここで学んだことを古巣に復帰した際、仲間たちに伝え、魔王軍との戦いや、自分の大切な者たちを守るために役立ててほしい」
新人たち――それなりに経験のある魔術師や冒険者たちでさえ、緊張をみなぎらせている。
初っ端から重い話であるが、大事なことなので最初に伝えるのだ。
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