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【書籍化】魔王を討伐した豪腕勇者、商人に転職す -アイテムボックスで行商はじめました-  作者: 柊遊馬


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第344話、ソフィア、快進撃


 破竹の勢い。魔法大会初日の、シューティング系競技が進むにあたり、ソフィアの活躍がドンドン注目を集めた。


 突如現れた無名の魔術師。


 火属性の魔法競技を完全勝利で収め、ソフィアは、優勝者に与えられる『炎の魔術師』の称号を得た。


 つまり今年の火属性最高の魔術師として、エンネア王国の魔術師の歴史に名を刻んだわけだ。


 それだけでも名前に箔がつくのだが、魔術師界隈で、いわゆる天才と呼ばれる類いの魔術師は、ひとつの属性だけでなく、複数属性を制していたりする。


 ソフィアもまた、それら先人の例に倣い、複数属性にエントリーし、観衆を大いに驚かせた。


 水属性部門を制して、二属性の制覇。


「水炎の魔術師だ!」


 観客席からはそのような声が上がった。


「グラスニカ家の娘らしい」

「宮廷魔術師もいる貴族の……」

「秘蔵っ子というわけか」


 物知りな連中が話している。名前は公表されているし、優勝時に会場全体に知れ渡るから、そこから想像したのだろう。


 ソウヤは、串焼きと水を販売しながら、ソフィアの活躍に目を細めた。


 ――頑張ってるな。


 これはイリクも観覧席から見て、鼻が高いことだろう。


 競技は進行する。続く氷属性部門にもソフィアが参加すれば、どよめきとなる。


「三属性を制覇するつもりか!?」

「もし、そうなったら――」


 天才魔術師の登場に、観衆のボルテージは上がっていく。


 氷属性シューティング。アイスブラストの魔法を使った的当ても、そつなくこなすソフィア。氷属性は、遠くへ飛ばそうとすると重量の影響が出てくるため、魔力量の消費も大きくなるが、彼女の射程をほぼ無視した魔法は、その消費を抑える。


 ソフィアの試合展開を見ていたのだろう。参加する魔術師の中には、彼女を真似て、飛距離を伸ばす者も現れた。現地で魔法をカスタマイズできるというのは、中々高度な魔術師であるが、結果的には、ソフィアには勝てなかった。


 氷属性各競技を制覇。氷の魔術師の称号も獲得。三属性を制したソフィアの一挙手一投足に注目が集まる。


 これには師匠であるミストもにっこり。


「もう会場は、あなた一色よ」

「気持ちいいですね」


 極力平静を装っているソフィアが、師の前だけで相好を崩した。


「自分でもこんなにできたんだ、って驚いています」

「むしろ、他の連中がヘボい?」


 皮肉るように笑みを浮かべるミストに、ソフィアは首を横に振る。


「そういうの、よくないですよ、ミスト師匠」

「いいのよ。ドラゴンから見たら、人間の魔術師なんて大したことないんだから」

「私も?」

「あなたは別よ」


 ミストはソフィアのおでこに自分のおでこを当てた。


「度肝を抜いてきなさい」

「はい、師匠」


 次の属性は、土。


 観衆は、『ソフィア・グラスニカ』は出るかを興味深く見守った。そして当然のように参加する彼女を見て、どよめいた。


「マジかよ!? 四属性!」

「さすがにそろそろ魔力量やばくないかな?」」

「過去に四属性を制した奴って、一人か二人じゃなかったっけ?」


 もしかしたら――その期待が、周囲に生まれる。


 同時に、土属性参加の魔術師たちも色めき立つ。さすがにグラスニカ家の秘蔵っ子とはいえ、ここまで無名だったソフィアに、すべてを持っていかれるのは、彼らのプライドが許さなかった。


 土属性魔術師たちに限らず、この大会で称号や名誉の獲得を目指して研鑽(けんさん)を重ねてきた者たちが集まっている。


 その成果を披露する場であり、自分が主役だと思っている者も多かった。


 自分の将来が掛かっている者も少なくない。故に、何としてソフィアに勝たねばと考えるのだ。


「――土属性は、氷属性とよく似ている」


 そう表現したのはジンである。


「もちろん、氷と土や石は違うが、こと魔力から魔法として具現化する場合は、共通点も多い。そしてそれを理解してしまえば……」


 会場でのソフィアが用いた魔法に、客席からどよめきの声が上がる。


「氷属性と土属性、双方を制するのも難しくはない」


 個数や大きさなど、比較しようとすると、ソフィアの作り出した土属性のそれは、周囲を凌駕していた。その差をたとえるなら、子供の中にひとりだけ大人がいるような感じだ。


 土属性魔術師たちの健闘もむなしく、ソフィアは土属性でも優勝を掻っさらった。



  ・  ・  ・



 観戦していた王族一行――アルガンテ王は、普段なら中だるみから観戦がおざなりになってくる頃だったが、今回ばかりはそうはならなかった。


「貴様の娘は、どこまで魅せてくれるのだ、イリク」

「はっ……」


 魔法大会ということで、王のそばで観戦しているイリクである。


 参加魔術師が使う魔法の解説を担当するのが彼の役目でもあるが、今は実の娘であるソフィアの活躍をじっくり見ることができた。何せ、王も三属性、いや四属性制覇に挑んでいたソフィアを注視していたからだ。


「これで、炎、水、氷、土の称号を得た。あと残すは、風と雷か。……イリク、貴様の娘は、これに挑むのだろうか?」

「は、ソフィアの魔力量次第ではありますが、大会前に話した感触からすれば、全属性を獲るつもりでしょう」

「なに、全属性か」


 アルガンテ王は獰猛(どうもう)な笑みを浮かべた。


「貴様も天才魔術師として謳われたが、娘はそれ以上のことをやってのけようとするか」

「はっ。彼女を導いた師が、やってみせろと発破を掛けたようで」

「それでできるというのなら、大したものよ。彼女を鍛えた師とやらも」

「はい。あれほど優れた魔術師を見たことがありません。魔術師、いや賢者と呼ぶにふさわしい人物と、そしてドラゴンから指導を受けました。正直うらやましく思います」

「ソウヤめ。よくもまあ、そのような人物やドラゴンを従えたものよな」


 アルガンテ王は苦笑する。


「普通なら王国に何が何でも引き入れるべきなのだろうが――」

「陛下、恐れながら……」

「言わずともよい。ソウヤの仲間だ。俺も無理は言わんし、まして命令も強制もない」


 ただ――王は皮肉げな顔になった。


「惜しいな。……それくらい愚痴るのは許せよ」

「はっ……」


 イリクが頭を下げると、アルガンテ王は視線を会場に戻した。


「これで四色の属性持ち。果たして、五色の魔術師となるか。それとも――」


 全属性を手中に収めてしまうのか。光と闇属性の競技がないのが惜しまれる。それらさえ制してしまうなら、さしずめ彼女は、オールエレメント・マスターか。


 アルガンテ王は心の中で呟いた。

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