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【書籍化】魔王を討伐した豪腕勇者、商人に転職す -アイテムボックスで行商はじめました-  作者: 柊遊馬


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第315話、彼女には従姉妹がいたらしい


「セリア・グラスニカ。ソフィアの従姉妹らしい」


 カーシュは、尋問で得た情報を、ソウヤに報告した。


 なお、それとは別に、屋敷を焼け出された住人たちには、豚汁を配り、喜ばれていた。


「夜に温かい食事は助かるなぁ」

「具も多くて、そこらの宿のスープよりいいな、これ」


 好評のようでよかった。ソウヤは自分の分のスープに口をつけ、ホッと一息。


「ソウヤ、続けても……?」

「ああ、頼むよ」


 話を戻そう。


「それで、そのセリアって娘が、今回の屋敷に火をつけた犯人らしい」


 カーシュは真顔で言った。


「犯行をソフィアになすりつけるために、メイドのメアリーと庭師のザックに嘘の証言をさせた」

「何故その、セリアってのは、ソフィアに罪を着せようとした?」


 従姉妹とはいえ、関係はよろしくなかったのだろうか。

 レーラが軽く手を挙げた。


「そのセリアさんって、どのような方なのですか?」

「聞いた話によると、優れた魔術師らしいです」


 カーシュは答えた。


「歳は、ソフィアと同じだそうで。幼少の頃より魔法に才能があって、ソフィアが魔法を使えないというのもあって、グラスニカ一族の筆頭魔術師の候補なのだそうです」

「筆頭魔術師?」

「一族を代表するエリート中のエリートという称号らしいよ。今はイリク氏がそれ」

「なるほど」


 しかし、よくわからない。ソウヤは首をかしげる。


「何で、セリアは、ソフィアに罪をなすりつけようとしたんだ?」

「さあ、そこまでは」


 カーシュは首を横に振った。


「メアリーもザックも、ソフィアがやった、と証言するよう言われただけらしいから」

「言われただけで、嘘を発言するのか」


 呆れるソウヤ。特にメアリーは、ソフィアの専属メイドだったわけだ。嘘を仕込むには彼女の協力は不可欠なのだろうが、ソフィアとしてはたまったものではないだろう。


 個人的に恨みでもあったのか? お金か? それとも何か弱みでも握られていたのか。


「ソフィア曰く、セリアとは特に親しくなかったらしい。というよりも、年に数回、実家に顔を見せにくるらしいけど、馬鹿にされているようで、むしろ会いたくないくらいだったとか」

「それはソフィアが一方的に嫌っていたって意味か? それとも両方とも?」

「ソフィアの口ぶりからすると、セリアにかなり見下されていたらしいよ」

「つまり、罪を着せられるなんてあり得ない! という仲ではなかったわけだ」


 ソウヤはため息をついた。家に火をつけられた上で、犯罪者に仕立て上げられようとしていた、とは……。


「ソフィアも気の毒に」

「本当に」


 カーシュとレーラは同意した。


「ソフィアさんは、大丈夫ですか?」

「いま、リアハ姫がそばについていますよ」


 ソフィアとリアハは親しい。こういう時、仲がいい人間がそばにいるのはいいことだ。


「となると、セリアって娘を探して、とっ捕まえる必要があるな」

「捕まえないといけないけど、探す必要はないみたいだよ」

「なんで?」


 ソウヤは目を丸くした。


「放火して逃げてるんだろ?」

「ソウヤ、セリアは火をつけたけど、別に逃げているわけじゃないんだ。ソフィアが放火したって、報告するために彼女は王都に――正確には王都にいる予定のイリク氏のもとに現れる」


 放火魔が、いけしゃあしゃあと報告に来る。


「何だそれ」

「犯人はソフィアって言うことで、一族に追わせて自分は容疑から外れる……そういう魂胆なんだよ」


 カーシュの言葉に、ソウヤは眉をひそめた。


「これ、完全にセリアってソフィアのこと恨んでるんじゃないか?」

「そう思えるね」


 ソフィアが言うには、魔法が使える彼女が、冷遇されている自分を恨む理由がわからないと言っているらしいが。


「恨みは、魔法関係じゃないかもしれない」

「かもね」


 カーシュは同意した。


「とにかく、セリアはソフィアを一族の敵に仕立て上げようとした。ひょっとしたらグラスニカ家の魔術書の盗難騒動も絡んでいるんじゃないかな」

「魔術書を盗んだのは、ソフィアだってことか?」

「罪を着せて犯罪者にしたのは、もしかしたら魔術書を盗んだ犯人にするのが目的だったからじゃないかな」

「でも、カーシュさん。一族の方々の認識では、ソフィアさんは魔法が使えないとなっていました。魔術書を盗んでも魔法を使えるとは……」

「冷遇した一族に復讐するため、魔術書を盗難。そうしたらその魔術書の力で魔法が使えるようになった。その力で屋敷を燃やして、復讐の狼煙をあげた……という筋書きはどうでしょう?」

「それ、お前が考えた?」

「僕なりに推理してみたんだけど、どうかな?」

「割とそれっぽく聞こえた」


 ソウヤは笑った。


「でもソフィアは屋敷にこもっていたことになっているだろう? メイドさんがそう証言するわけだから。王都にあったグラスニカ家の魔術書を盗むのは不可能だぜ?」

「……うーん、そこは、うーん……」


 カーシュの推理は行き詰まった。


「割と当たっているような気がしたんだけどなぁ」

「もしセリアが、お前の推理したように考えて実行したとしたら、かなり杜撰な計画だよな。ソフィアはアリバイがあることになっているんだからさ」


 屋敷が燃やされた時の嘘証言だけで騙し通せると思ったのだろうか。


「じゃあ、魔術書盗難は、今回の放火とソフィアに罪を着せるとは無関係?」

「さあな。何でセリアがソフィアに罪をなすりつけたか、それにもよるんじゃないか?」


 正直、無関係とは思えなかったりする。ソフィアが屋敷を放火したことで、グラスニカ家から追われる。さらに実は魔術書を盗んだのも彼女だった、となれば、本当に盗んだ犯人にとっても都合がよい。何故なら、容疑者から外れられるわけだから。


 実際のソフィアは実家にいなくて、行方不明だったわけで、なおのこと犯人にとっては好都合。一族が彼女を追い、もし見つかれば始末される。自分は犯人ではないとソフィアが主張しても、家を飛び出していた彼女を逃走犯と思っている一族は、聞く耳を持たないという寸法だ。


 もっとも、ソフィアに罪を被せようとした犯人の目論見は、犯行時間にソフィアとイリクが一緒にいたという、これ以上ないアリバイによって潰えたが。

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