第277話、墓標とお宝
クレイマンの遺跡と思われる地下遺跡を捜索するソウヤたち一行。大半は朽ち果てた廃墟なのだが、保護魔法のかけられた箱が残っていたりと、成果がないわけではなかった。
「何だか、墓標のようだな……」
巨人が通れるような高さ二十メートルほどの通路があって、何やら地下迷宮の中を進んでいるような気分になる。
長い長い階段が続いていたり、崖のように意味不明な切り立った壁があったりと、通路自体は一本道なのだが、上へ下へと、とにかく真っ直ぐ進ませてくれない。場所によっては水路が引かれているところもあった。
「都市、というわけでもなさそうだな。……どう思うライヤー?」
「さあ、おれにもわからん」
ライヤーは首をひねった。
「ただ、分岐はねえんだ。このまま進めば、最深部まで行けるんじゃね?」
「だとしても、相当広いですねぇ、ここ」
ダルは携帯している水筒に口をつけた。
「クレイマン王は、何を思ってこんな意味不明な形の大きな通路を作ったんでしょうね?」
「地上を歩く分には大変よね」
ミストは遠くへと視線を向けた。
「下りかと思えば、崖のような登りがある。階段はあるのだけれど、登るのは大変そう」
うげぇ、とソフィアが令嬢らしからぬ声を発した。ミストは続けた。
「でも飛んでいくと、なかなか面白そうな道よね」
「飛んでいく……ああ、なるほど」
ソウヤは一息ついた。
何故か既視感があったのだが、ミストの言葉で合点がいった。
昔遊んだテレビゲームの、飛行タイプのレーシングゲームのコースのような感じだ。高低差があって、障害物をかわしていくのだが、確かにこの大きさの通路なら、小さな飛行する乗り物があれば、飛んでいくに充分の広さがあった。
壊れた人形やゴーレムの残骸が、ところどころにある。そんな中、水路などに濁った水が目立つようになった頃、魔物が現れるようになった。
ライヤーが魔法銃を構えた。
「おいおい、人形どもの見張りはどうした!?」
「この辺りは、見回りも来ないんでしょ」
ダルは杖を掲げ、浄化の魔法を放った。ゴーストタイプやスケルトンといったアンデッド、ほかに黒いスライムなどが現れた。
「――かの者を焼き尽くせ! ファイアボール!」
ソフィアが火球を放ち、スライムを焼き払った。ソウヤは斬鉄を軽く振う。
「なーんか、殴った気がしないんだよな」
軽く振っただけで、スケルトンが砕ける。放っておくと再生するので、治癒魔術師にして神聖魔法の使い手であるダルが浄化する。
しばらく進んでいくと――
「……アンデッドが湧くわけだ」
墓地というべきか、墓標が並んでいる場所に着いた。ここでもアンデッドを浄化。ひと通り蹴散らしたところで、コソコソとアンデッドが使っていた武器などが落ちていたので回収する。
「やたらと豪華というか、これ、ミスリルの剣か?」
「この盾もミスリルじゃない? さっきわたしの魔法が弾かれたわ」
ソフィアが唸る。スケルトンの戦士、いや騎士が使っていた武器が、魔法金属製だった模様。
「ゴーストの持っていた杖も、上物のようですよ」
ダルが、拾った杖を見せた。
「これ、たぶん伝説の世界樹の枝から作られた杖ですよ。故郷で、伝説レベルの杖って見せられたのですが、それと同じ素材でできているようです」
「さすがクレイマンの遺跡、出てくるものが半端じゃねえな」
ソウヤは感心する。その時、リアハの慌てた声が聞こえた。
「ちょっと、ライヤーさん! 何をやっているんですか!?」
「調査」
棺の形をしたそれを開ける古代文明研究家。
「ダル、これ呪われてねえよな?」
「呪いの類いはなさそうです。……お宝ですね」
中身は多数の金貨。ザックザックあるとは、このことか。
「すげぇ……」
「でも、集めた金の重さで島が沈んだというクレイマンの遺跡の伝説にしては、ちっぽけな量ですね」
ダルは皮肉った。ライヤーは目を見開いた。
「まだまだ、こんなもんじゃねえほどお宝があるってことか!」
「伝説の通りなら」
――まあ、確かにお宝なんだろうけどさ……。
ソウヤは頭をかいた。
――そういうのじゃなくて、レーラを助けられる秘薬とかが欲しいんだよな、今は。
あるだろうか? そう考えながら、ソウヤと仲間たちは、探索を続けた。
・ ・ ・
「この馬鹿でかい部屋。そしてそこらにある黄金の山」
ライヤーがそこで絶句する。
金塊が積み上げられた高さ十メートルくらいの山が十以上。向こう側の壁が暗くて見にくいほど広い部屋に、金の山がいくつもあって、文字通りソウヤたちは固まった。
「――スケールが違い過ぎるだろ!」
「こいつは、夢か? それとも幻か?」
ライヤーがフラフラと山に近づく。
「夢でも幻でもない」
「ついでに、幻覚でもないようですね」
ソウヤ、そしてダルがコメントした。
「すげぇ……、すげぇーっ!!!」
ライヤーが金貨の山に両手を突っ込み、それをすくい上げた。
「これはクレイマンの遺跡だ! 伝説の通り、宝の山だ、ハッハー!」
テンションがおかしなことになっている。はしゃいでいるのは彼だけかと、ソウヤが仲間たちを見渡せば、別の山に、ソフィアとリアハが近づいていた。
「金よ!」
「金ですね!」
ライヤーほどではないにしろ、テンション高め。
ミストは興味深げに、金の山を観察しながら歩いている。ガルは行動こそしなかったが、驚いてはいるようで、目が見開かれていた。
「そりゃ、これだけの金なんて見たことないよな」
「なんだよ、旦那。やけに落ち着いてるじゃねえの」
ライヤーが笑った。
「これだけあれば、もうおれら働かなくてもいいぞ!」
「皆で分配しても、一生遊んでくらせるだろうな」
ソウヤは苦笑した。
「お前も、自由に飛空艇を買えるな」
「そうか……。そうだな」
そこでライヤーは押し黙った。
「自分の飛空艇が買えるか……」
神妙な顔になって、ライヤーは首を横に振った。
「まるで考えてなかった、そんなこと――」
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