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【書籍化】魔王を討伐した豪腕勇者、商人に転職す -アイテムボックスで行商はじめました-  作者: 柊遊馬


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第22話、メンバー面接


 冒険者ギルドの人材募集板の前で出会った冒険者らしき少年から、募集用紙、その募集人――つまりその少年の概要欄を見るソウヤ。


 本人から許可を得たので、さっそく目を通す。


 ――ふむふむ、ポーターなのか。


 いわゆる、荷物持ちだ。ダンジョンなどに挑む際、個人が携帯できる量は限られている。目的地へ向かうまでに荷物をたくさん持ち込みたい、とか、逆にダンジョンで手に入れたものを多く持ち帰りたいとか、そういう時に利用される。


 武器とか持たない分、物を運べるという考え方であるが、当然ながら戦闘力に関しては一部を除けば、一般人も同然で、連れて行く側がきちんと守ってやらないといけない。だから、難所へ挑む場合は足手まといになる可能性が高い。


 ――体が小柄なのは、閉所をいく場合は武器になるが、体力は筋力の面でマイナスだよなぁ。


 逆に体がガッチリしていれば、荷物の量も期待できる一方、閉所で進めない、跳躍力や身軽さが重要な場所では使いづらいという問題もある。一長一短。


 ――ま、アイテムボックスがあるオレとしたら、荷物持ちはいらないけど。


 ソウヤは肩をすくめつつ読み進める。


 薬草鑑定可能、パーティーの買い出しや戦利品の売買、解体、その他雑務が可能。


 ――パーティーの雑務っていうか、使いパシリみたいだな。


 率直な感想がそれである。実際、そうなのかもしれない。


「君、ポーター歴長いの?」

「三年くらいですね」


 三年……結構長い。しかしその割に、冒険者ランクはE。


「ずっとソロで活動を?」

「いえ……その、先日までパーティーを組んでいたんですが……」


 何とも歯切れが悪く、すっと視線を逸らしてしまう少年。その表情から、ソウヤは察する。


「……クビになったか」

「! ……はい」


 少年は俯いた。


「戦闘ではお荷物なので、追い出されました。皆の足を引っ張ってるからって――」

「荷物運びが仕事なんでしょ? お荷物って当たり前なのに?」


 ミストが意味をわかっていないのか、結構エグいことを言った。気にしていたのか少年がさらに落ち込む。


「あー、すまん、この娘、若干言葉に不自由なところがあるから」

「何ですって!?」


 ちょっと黙っていなさい――ソウヤはミストに合図すると、視線を少年に戻した。


「君……ええーと、セイジ君?」


 紙に書いてあったから名前で呼ぶことにする。


「戦闘に関してのアピールがないから聞くが、戦闘はできる?」

「スライムとか単独のゴブリンくらいなら……」


 ぶっちゃけ雑魚モンスターだ。冒険者ならこれくらい倒せて当然に見えなくもない。


「スライムの対処できる?」

「はい、スライムは火に弱いので、たいまつや燃えるものさえあれば」


 きちんと知識はあるようだ。


 はてさて――ソウヤは大体のところを理解した。


 よくある話だ。パーティーの裏方だった少年は、強い魔物と戦えず、仲間の足を引っ張るから追放されたというやつ。


 これまで仲間を支え、戦えないなりに知識を蓄え、雑務をこなしていたのだろう。だが、戦闘での評価こそ一番だと考えているパーティーメンバーからは『役立たず』の烙印を押されて追い出された。


 ――まあ、パーティーにも事情があるんだろうし、裏方を軽視した連中を無能と断じることはできないが……。


 正直、俺は目の前の少年のことをほとんど知らない。とんでもないドジっ子だったり、真面目そうに見えてサボりの常習とか、正当な追放理由があったのかもしれない。


 このあたりは、実際に組まないとわからないところだ。


「君はパーティーメンバーを募集していたな?」

「はい。……その、今の僕では、ソロはかなり厳しいので」

「オレたちもパーティーメンバーを募集している。物を見る目があって、物の値がわかる奴だ。戦闘力については二の次だ」

「それは、物資調達で、できるだけ安く、よい物を購入したりする、ということでしょうか?」


 セイジは真顔で聞いてきた。微妙に違うが、必要としているスキルとしてはほぼ同じだろう。物を見る目がないと難しいことだからだ。


「オレたちは冒険者だが、本業とするのは行商なんだ」

「行商……ですか」


 かすかな驚きと共に微妙な顔になるセイジ。無理もない。冒険者パーティーに入ろうとしているのに、商人のパーティーだった、なんて。


「冒険者でもある」


 組むのなら説明は必要だ。ただの冒険者パーティーではないことを最初に言っておかないと詐欺になる。


 ダンジョンで手に入れたものを各地で売ったり、危険場所に商品を持ち込んで、冒険者や旅人の探索支援をしたりする。


「で、君にはオレたちに足りない商品鑑定や値付けでサポートして欲しい」


 主な仕事を説明。役割がわからないと不安だろうから、という配慮である。しかし、セイジの表情は硬い。慎重にこちらの話を聞き、パーティーに加わっていいのか考えているのだろう。


「そういえば、プライベートなことを聞くけど、君、この町の出身?」

「たぶん……」

「たぶん?」

「両親は冒険者だったと聞いているんですけど、僕が物心ついた頃には……亡くなって」


 聞けば、両親を失った後、冒険者の子を引き取るこの町の孤児院に入って育ったらしい。いつ死ぬかわからない冒険者稼業だ。もし自分の身に何かあったら――ということで、冒険者たちで作った施設なのだそうだ。


 そこで、セイジは冒険者見習い兼運び屋となったのだと言う。そこで施設の年齢上限がきて独立。戦闘は苦手だが、運び屋として冒険者パーティーに加えられて活動したが……つい先日、そこをクビになったらしい。


「じゃあ、今は家は?」

「ありません。冒険者ギルド管轄の安宿にいるのですが、金銭の蓄えがもう尽きかけていて……」


 と、途方に暮れたように肩を落とすセイジ。パーティーを追放されたことで、持ち物もほとんどないらしい。支度金も出さないとか、何て奴らだ、とソウヤは思った。


「じゃ、オレたちと一緒に行動する分については、特に問題はないわけだ」

「そうなりますね……。お世話になるということは、ご迷惑をかけることになりますが」

「なに、大した持てなしはできないから、こっちこそごめん。でも食事代とかはオレが面倒みるから、そこは心配しなくていい」


 かくて、ソウヤとミストのコンビに、新しい仲間が加わることになった。


「そういえば、ソウヤさん」


 早速、セイジが言った。


「このパーティー、名前はあるんですか?」

「あ? 名前?」


 ――そういえば、なかったな。


 ソウヤは髪をかく。行商は固有の店がないが、商売をするにしても何か名前があったほうがいいだろう。冒険者パーティーも然り。


「そうだな……このパーティーの名前は――」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] セイジ君を使い捨てにしてた元パーティーメンバーは全く登場してない処を見ると最悪… 登場してもテンプレ馬鹿になる不快な輩になる事が容易に想像できますよ
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