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【書籍化】魔王を討伐した豪腕勇者、商人に転職す -アイテムボックスで行商はじめました-  作者: 柊遊馬


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第187話、ルガードークに関係する雑談


 ボートを飛ばしていたジンに、ソウヤは説明を求めた。


 曰く、浮遊の魔法で浮かせて、あとは推進力を与えれば、それで一応、空を飛ぶ代物ができるという。


「ただし、浮遊魔法は全体的に高度が低めだ。上級の浮遊魔法でなければ、飛行する乗り物のレベルには達しないだろう」

「つい先日、浮遊バイクの量産うんぬん言っていたばかりだぞ……」


 ソウヤは唸った。


 人工飛行石を見たせいで、ジンは変に刺激を受けてしまったらしい。


 ――まあ、いいか。


 浮遊する船、いや大きい飛空艇が入手困難なら、小さなもので出来ないかと余所で話したのはソウヤ自身である。


 ジンがその気になって勝手に始めてしまっても、邪魔にはならない。銀の翼商会内で、自発的に色々やってくれるのは悪くない。


 ライヤーがかかっている飛空艇の修理は、ブルーアの工房に注文した部品が完成してからが本番だ。


 それまで時間があるので、ソウヤは情報収集をすることにした。せっかく新しい町にいるので商人・冒険者の基本に立ち帰るのだ。


 手始めに冒険者ギルドを目指そう。しかしルガードークは、ソウヤは勇者時代に訪れていないので、土地勘がまったくなかった。


 のんびり歩き回るのも悪くない。そう思ったソウヤだが、ガルがやってきた。


「地図を作っておいた」


 ガルは、ここ二日でルガードークの主な施設の場所を記録に残していた。暗殺者は下見が肝心ということか。


 偵察員として、実に優秀だ。


「よければ案内するが?」

「頼む」


 周囲の観察にも定評のあるガルである。初見の道でも、彼がいれば安心だろう。


 仲間たちに、冒険者ギルドへ行くと告げたら、ミストもついてきた。


 ドワーフと人間が行き交う町ルガードーク。峡谷の間にあるだけあって、昼間にも拘わらず、影が覆っていて、案外薄暗い。店先などには、ぼんやりとした明かりが灯っている。


 人間とドワーフの交流の町だけあって、ドワーフ職人の作った武器や防具、鉄製品を求めて人間たちがやってくる。中には、ミスリルや魔法金属製のものを求めてやってくる金持ちや、名うての戦士などが訪れることもある。


 そんな街中を、ガルの案内で、ソウヤとミストは続いた。暗殺者の彼は、ここ二日間で仕入れた情報を教えてくれた。


「ドワーフと言えば坑道」


 ドワーフたちは、地下暮らしが基本だ。人間と交流する場でもあるルガードークでさえ、外であっても直射日光が届かない位置にある。


 彼らは地下で生活し、坑道を掘り、鉱山などから金属や宝石などを掘りまくるのだ。


「この町の地下にはダンジョンがあるらしい。この町の冒険者は、そこで出没するモンスターがドワーフの主要坑道に入らないようにするのが主な仕事のようだ」

「ドワーフは戦わないのか?」

「戦う者もいるが、掘るほうが好きな連中が多いそうだ」


 ガルの答えに、ソウヤは「なるほど」と頷いた。


「ダンジョンがあるなら、銀の翼商会のダンジョン内販売とかできそうかな……」

「それなんだが、食事に関しては難しそうだ」

「というと……?」

「この町には、いやドワーフにはベントー文化があるらしい」

「ベントー文化?」


 ひょっとしてお弁当か?――ソウヤが首を捻る。ガルは言った。


「ドワーフはダンジョンや坑道で、保存食とは違う調理した料理を持ち込む。だからダンジョン内販売は、あまり向いていないかもしれない」

「長時間こもりっぱなしってのが、当たり前ってことだな」


 ドワーフは粘り強く、腰を据えて仕事に励む。あまり妥協することがなく、真面目な仕事ぶりに定評がある種族だ。休憩の食事なども、職場近くで済ませて仕事にかかれるように持ち込んでいるのだろう。


 ――そう言えば、飛空艇でもあったな。ヴァーアが機関室でメシを食べながらエンジンを眺めていた。


 それはともかくとして。


「銀の翼商会としては駄目でも、白銀の翼としては、ダンジョン探索はありだよな」


 視線をミストに向ければ、彼女はニンマリとした。


「もちろん!」


 ダンジョンからの鉱物やモンスター素材、レアな掘り出し物などなど。……かつての文明の魔道具とか、生命の水とか聖石のような復活アイテムなどがあるかもしれない。


 そうこう話しているうちに、ルガードーク冒険者ギルドへ到着した。


 がっちりした岩造りの建物がそびえているが、隣接している建物のほうが若干大きい。


「隣は、ドワーフの採掘組合だ」


 ガルが顎で指し示す。要するにドワーフたちのギルドである。


 バッサンの町では冒険者ギルドと商業ギルドがセットになっていたが、ここもそういうものなのだろうか。


 気を取り直して、ソウヤたちは冒険者ギルドの門をくぐった。角張った無骨な内装、色調は暗めで、石を加工したものが多く置かれていた。ドワーフの家具職人が製作したものだろう。


「ギルドのフロアって、結構似たり寄ったりね」


 ミストが一階フロアを眺めながら言った。ソウヤは入って左手の掲示板へと歩を向ける。


「わかりやすくていいじゃないか」


 ルガードークに関係する冒険者へのクエストが貼り出されているのを、ソウヤたちは見やる。


 ダンジョン開拓、採掘の護衛、探索などなど――八割方、地下での依頼だった。


「何か面白そうな依頼はあるかしら-?」


 ミストがクエストの貼り紙に視線を走らせている。吟味しているように見えるが――


「ミスト、お前字が読めないだろ?」

「だから、聞いているんでしょうが、ソウヤ」


 ミストは後ろに手をまわし、からかうような目を向けてきた。


「楽しい依頼がいいわ」

「お前のいう楽しいって、どういう基準なんだ……?」


 ソウヤは、ガルに相談しようと顔を向けた。元暗殺者は、カウンターのほうを見つめていた。


 何やら人が集まって、少々ざわついている。


 ――またぞろ、事件かな?


「何かあったのかしらね」


 ミストもまたそちらを見やる。


「また何か厄介事かな? 行ってみるか」


 ソウヤは踵を返す。


 普通なら、この手の面倒そうな場所は避けるに限るのだろうが、元勇者にそのような考えはない。見て見ぬフリをせず、余計なことに首を突っ込むのは勇者の本分だ。


 何より、冒険者というのは、騒ぎがあることこそ出番だと思うのだ。


「何かあったのかい?」


 騒ぎの元へ行くと、冒険者と職員が難しい顔をしていた。


「行方不明者だよ」


 近くにいた髭を生やした中年冒険者が言った。


「ダンジョンの、とあるエリアに入った奴らが、今のところ誰も帰ってきてないとさ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 見て見ぬフリをせず、余計なことに首を突っ込むのは勇者の本分だ。 逆に考えてます そういう風に生きてなお死なず心身を損なわず言動を改めない者を勇者と呼ぶんでしょうね
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